第20話 カチカチ鳴る電子レンジ
深夜に小腹が空いた私は、夜食を食べようと静まり返ったキッチンへ向かった。
キッチンの電気をつけようとしたとき、暗闇の中で突然、「カチカチカチ」、と不気味な音が響いた。
電子レンジの動く音だった。
ブーンという低い駆動音と共に、庫内にオレンジ色の明かりが灯る。
故障だろうか。
そう思い、電子レンジに近づいた。
すると、何か妙な臭いが鼻を衝いた。
まるで、肉が焦げているかのような厭な臭いだった。
電子レンジのガラス窓から中を覗き込んでみる。
べったりとこびりついた、黒ずんだ油汚れの向こう側で、オレンジ色の照明に照らされながら、黒い塊が回っている。
気持ちが悪い。
私は恐る恐る、さらに目を凝らしてガラス窓を凝視した。その中で、皿が一回転し、塊の「正面」がこちらに向いた。
それは、苦悶の表情を浮かべて息絶えている、私自身の生首だった。
「ひっ!」
悲鳴を漏らし、腰が抜けて座り込む。
焼けた肉の匂いに、濃い血の匂いが混ざって辺りに充満する。
理解できずにパニックになっていても、ガラスの向こうでは生首が回り続けている。
チーン。
やがて、間の抜けた音が響き、レンジが止まる。
多分、これは夢だ。
――覚めろ、覚めろ、覚めろ。
必死に自分に言い聞かせる。
だが、一向に夢は覚める気配がなく、生々しい感覚はなおも付きまとう。
そして、見知らぬ男が、私の首のない「胴体」をリビングから運んできた。
そこで気が付いた。
これは夢ではない。私は、もう殺されたのだ。
怒りが湧いてくるが、死んだ私には何もできない。
ただ、この男が私の死体を弄ぶ様を、無力に眺めるしかできなかった。




