第16話 前の住人の忘れ物
新居に引っ越してから1ヶ月。天袋の奥に、1冊のアルバムがあるのを見つけた。
前の住人が忘れていったものだろうか。
どんな人が住んでいたのか気になった私は、少し悪いと思いつつも、そのアルバムを開いてみた。
中には、この部屋の中で楽しそうに笑う、若い女性の写真が何枚も収められていた。
友達と鍋を囲む姿、誕生日を祝う姿。
何の変哲もない、微笑ましい日常の風景ばかりだった。
だが、ページをめくるにつれて、写真に違和感が大きくなっていく。
女性の顔からは徐々に生気が消え、表情も暗くなっていく。
それどころか、写真自体もどんどん薄暗くなっていっているようだ。
さらに、黒い影のようなものが写り込み始める。
女性は怯えた顔でカメラを見つめている。
そんなに怖いのなら写真を撮らなければいいのに。そう思いながら、私自身もこのアルバムをめくるのを止められない。
強烈に厭な予感がする。
生気を失った女性は、やがて写真から消え、人の形をした黒い影だけが写るようになっていた。
黒い影はカメラのレンズを見て笑っているような気がする。
そして、私はついに最後のページをめくってしまった。
そこに写っていたのは、薄暗い部屋の中、まさに今、このアルバムを開きながら恐怖に凍り付いている「私自身の姿」だった。
「嘘……」
恐怖に声が震え、脳の理解が追いつくより早く、背筋を猛烈な悪寒が駆け抜けた。
――がさり。
すぐ後ろで音がした。
振り返る。そこには、写真に写っていたあの漆黒の影が、現実の空間に立っていた。
そこだけくり抜かれたかのような、白く濁った巨大な目が、大きく見開かれる。
逃げ出したいのに、身体は金縛りに遭ったように動かない。
黒い影の耳まで裂けた口が、三日月のように獰猛に歪んだ。
「次は、あなただよ」




