第12話 午前三時の自動販売機
深夜3時。酷い喉の渇きで目が覚めた。
冷蔵庫を開けてみるも、中は空っぽだった。
仕方なく私は上着を羽織り、近くの細い路地にある古い自動販売機へと向かった。
街灯もまばらな暗闇の中、自動販売機の青白い光だけが不気味に辺りを照らしている。
妙に古びた自動販売機だった。塗装は剥げ、長年の雨風に晒された鉄は赤黒く腐食して錆びだらけだ。
ダミーの缶が並ぶディスプレイには蜘蛛の巣が張り、並んでいる商品はどれも見たこともないメーカーのものばかりだった。
小銭を入れ、冷たいお茶のボタンを押すと、ガシャリと重い音が響いた。
取り出し口に手を入れ、缶を掴む。
その瞬間、手のひらにねっとりとした、冷たい油を掴んだような厭な感覚が走った。
出てきたものを自販機の光にかざして、息を呑む。
それは、お茶の缶ではなかった。全体が真っ黒に塗られた、ラベルのない不気味な缶。
中も液体ではない。振ると、からからと固形物の音がする。
ぞくりと鳥肌が立つ。
よく見ると、手にした缶には鋭利な刃物で削ったような歪な文字が刻まれていた。
「命日:今日」
そして、その横には私の名前も。
心臓が厭な音を立てて脈打ち始める。
おかしいと思い、ふと視線を上げた。
自動販売機にディスプレイされているダミーが、いつの間にか全てあの黒い缶に変わっている。
それぞれ、「手の指」、「目玉」、「舌」、「心臓」など、体の部位や臓器の名前が刻まれている。
私はいよいよ、恐怖のあまりそこから逃げ出したくなった。
しかし、自動販売機の取り出し口から、パキパキと骨の折れるような音が聞こえ始め、何かが伸びてくる。
それは、人間のものとは思えないくらい白く細長い腕だった。
その手は私の足首をしっかりと掴んだ。
バキバキと恐ろしい音を立てながら、私の身体は、あの狭い取り出し口の奥へと引きずり込まれていった。




