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現代怪談短編集 霊話百物語  作者: ナハ子
【2章 物件・場所の怪異】
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第11話 格安事故物件のシミ

大学進学を機に、私は格安の事故物件に引っ越した。

前の住人が室内で孤独死したという事故物件だそうだが、綺麗にリフォームされており、家賃も格安だったので一も二もなくここに決めた。


ただ1つ、壁の隅に、薄暗い人間の頭ほどの大きさのシミが残っていた。

どれだけクリーニングしても落ちなかったらしい。

私は気にせず、そこにタンスを置いて隠すことにした。


引っ越して一週間ほど経った、ある日の深夜。

妙に視線を感じて目が覚めた。


明かりをつけ、部屋を見回すが、誰もいない。気のせいだろうか。

ただ、一箇所だけ、違和感がある。


タンスが元の位置から横に動き、隠してあったシミが露出している。

地震があったわけでもないのに、こんな大きなタンスが動くなんて。

不思議に思ったが、私はタンスを元の位置、シミを隠せる位置へ戻し、再び眠りについた。


翌日。

家に帰ると、またタンスがずれていた。


やはり、こんな重いタンスがひとりでに動くわけない。

そこで私はタンスの位置に違和感があることに気が付いた。


タンスが動いたのではない。

シミが動いたのだ。


その事実に気が付いたとき、全身をぞわりと悪寒が襲った。

よく見ると、シミの形も最初に見たときとは違っている気がする。

最初はもっと丸かったのに、今は妙にごつごつとして、まるで人間の横顔のようだった。


なんだ、このシミは。

明らかに普通ではない。


金縛りに遭ったように、急に身体が動かなくなった。


シミの表面から、ドロリとした黒い液体が滴り落ちる。

そして、壁から這い出るように漆黒の手が伸び、私の首へとゆっくり伸びてきた。


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