第10話 スマートスピーカーの話し相手
一人暮らしの寂しさを紛らわせるために、スマートスピーカーを購入した。
「音楽をかけて」「明日の天気は?」と話しかければ、すぐに健気に応えてくれる。暇なときはとりとめもないことを話しかけても、ちゃんと相手をしてくれる。
まるで、小さな同居人ができたようで、気に入っていた。
ある日の深夜3時。
リビングから、電子音がピコンと鳴るのが聞こえた。
スマートスピーカーが、誰かの声を感知して起動した時の音だ。
私はベッドの中で、息をひそめて耳を澄ました。
「その質問にはお答えできません」
スピーカーの機械的な音声が、静まり返った部屋に響いた。
バグだろうか。それとも、何かの生活音を質問として拾ってしまったのだろうか。
そう考えていると、再びピコン、と音が鳴った。
スピーカーがまた起動した。今度は、誰かのつぶやき声も聞こえた気がした。
気味が悪くなり、私はスマホのアプリを開いた。
スマートスピーカーには、過去のやり取りを録音する機能がある。
私はその履歴を確認し、深夜3時の音声データを再生した。
『ザーッ、ザーッ、ザーッ……』
スピーカーから、激しい砂嵐のようなノイズが流れる。
やがて、そのノイズに混じり、声が聞こえてきた。
それは、私の声ではない。低く、地を這うような、おぞましい女の声だった。
『ねえ、この人、いつ殺すの?』
心臓が跳ね上がる。
やり取りはまだ続いている。
『その質問にはお答えできません』
スピーカーが答えた。
『じゃあ、今から殺していい?』
再びピコン、と音がして、女の声が響いた。
『はい。その操作を実行します』
直後、私はすぐに部屋から逃げ出そうとした。
しかし、スマートロックで施錠されたドアは、何をしても開かなかった。




