【第6話】バッドラックジハード⑪
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翌日。
指示通り放課後にいつもの教室へと向かう。
「おお…来たか」
こちらに気づいたフレイヴがやや疲れたような声根を発しながら近づいてくる。
「どうしたの? なんか疲れてないか?」
「ちょっと別件でな…」
くたびれた様子で応答するも詳細については触れなかった。
「その後裏掲示板はみたか?」
「昨日帰ってから見たよ。すごいことになってるね」
「そうなってもらわなくては困る」
呆れたように力のない笑いをこぼすフレイヴ。
「さて、それでは本日の活動に移ろうか」
そういってフレイヴが僕から受け取った携帯端末を操作し新たなコメントを書き込む。
「昨日裏掲示板の匿名性を話したのは覚えているな?」
「ん? ああ…追跡ができないって言ってたやつだよね」
「そうだ。管理者である私でさえも解読出来ないように利用者の情報が暗号化されるんだ」
フレイヴの中の人による謎のハイテク技術でその安全性を確保できている裏掲示板。
「それはあくまで無記名だった場合の話だがな」
そう言ってフレイヴがカタカタと何かを打ち込む。
打ち込み終わるとすぐさま裏掲示板にそれを投稿した。
僕もすぐに自分の端末で裏掲示板にログインする。
ほとんどのコメントがAny-oneで表示される中、Rebellion-oneというハンドルネームのコメントがあった。
《さあ 反逆の時間だ》
裏掲示板では基本的に個人を特定するIDが表示されない。
だが任意でID表示することは可能だ。端末情報をもとに作成されるためこればかりは変更できないが、なによりの本人証明となる。
過去のコメントからこの人物が昨日宣戦布告を行った人物だとすぐに他の利用者も気づき出した。
《ほんとに本人じゃん!》
《待ってました!》
《うおおおおおおおお!》
ものすごい勢いでコメントへの返信がついていく。
「すごい盛り上がりようだ…」
「ああ。この勢いを総会まで維持して、ぶちかます」
機械ゆえに仕様なのだが、目が笑っていないフレイヴにうっすら恐怖する。
「この様子だと数日もあればほとんどの生徒にこの状況が波及するだろうな」
「あ、ああ…」
分かってはいたがフレイヴの発言に思わず臆する。
そんな僕の様子を察知してかフレイヴがふぅ…と一息をついてから声を掛けてきた。
「すまん、私もつい熱くなってしまった。本番で実行に移すのは君だもんな」
そういって端末を手放すとこちらに向き直って僕の目を見た。
「転校してきて間もないのにこんなことに巻き込んで申し訳ないと思っている」
「でも、どうしてもあいつを救ってやりたいんだ」
決意を秘めたような表情を液晶に表示しこちらを見据えるフレイヴ。
「君とキョウがどういった関係性なのかも僕にはわからない」
「だけど僕は何もしないままここで過ごしたら一生後悔しそうな気がするから…」
やるよ。
まるで自分に言い聞かせるようにそう告げた。
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裏掲示板で一週間後に総会要求をする旨を布告して数日後の昼休み。
いつもの空き教室でキョウが来るのを待ちながら焼きそばパンを頬張っていた。
「なんか最近あんまり食欲ないな…」
それもそのはず、これから数も姿も分からない味方を信じて生徒会長に牙を剥こうとしているのだ。
失敗すれば停学…だけで済むとは思えない。
そのリスクの重さに平然としていられる方が難しい。
悶々と悩みながらもパンを咀嚼していると、見慣れた顔が教室に入ってきた。
「よお」
「よ…よお」
相変わらず顔の半分を隠している前髪のせいで表情の読めない幽霊が入ってきた。
勇気を出して返してみたのか、ぎこちない動作に思わず気が緩む。
「な、なにか悩みごと?」
「え、なんで…?」
不意にそんなことを聞かれて思わず焦る。
「なんか頭抱えて貧乏ゆすりしてたから」
…忘れていた。
こいつが教室に入る前に他の人がいないか確認することを。
「いや、なんでもない。昨日ゲームやりすぎてちょっと寝不足なんだ」
変に心配かけるのも良くないと思い咄嗟に思いついた嘘をつく。
「そうなんだ…」
何か言いたそうにしていたキョウだったが適切な声掛けが思いつかなかったのだろう。
その視線は宙を行ったり来たりした後に自分の持ってきたお弁当に落ち着いた。
そしてしばしの沈黙。
まあ、普段からこの教室でのキョウとのコミュニケーションと言えばこんな感じだ。
「…ん?」
特に何も考えずに教室の後方を眺めながら再びパンに噛り付こうとしたら右足に何かひんやりしたものが当たった。
自販機で買ってきたものだろうか、乳酸菌飲料がそっと置いてあった。
隣の人物を見ると同じものをちびちび飲んでいたので差出人が誰だかすぐに気づく。
「くれるのか?」
「うん」
元気づけのつもりなんだろうか。
予め僕の分も買って来てくれていたようだ。
「ふっ…ありがとう」
慣れない行動だったのだろう。どこか気まずそうにそわそわしている。
微かに炭酸の効いた乳酸菌飲料が喉に心地よい。
キョウにとっては何気ない気遣いだったのかもしれないが、なぜか僕の心の迷いはそのおかげで吹っ切れた気がした。




