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【第6話】バッドラックジハード⑧

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やはりというか、キョウについての話だった。

素性も何もわからないままだがこのロボット、フレイヴはキョウが幽霊に至るまでの経緯を知る人物なのかもしれない。


「いきなりこんなコンタクトになってしまって申し訳ないが、一身上の都合で私の素性は明かせない」

僕が警戒しているのを察知してかそんな前置きをするフレイヴ。


「…あんたはキョウにとっての味方なのか?」


色々聞きたいことはあるが、今はそれさえ分かればいい。

むしろここで情報を引き出さなければ僕に打開策はないのだ。


「まあ味方だと思ってもらって差し支えない」

とりあえずは味方だと言うこのロボットを信用して話を聞くしかなさそうだ。


「単刀直入に言おう。キョウを幽霊にしたのは今の生徒会役員だ」


「生徒会?」


「ああそうだ。その中でも生徒会長である全堂王我ぜんどうおうが、名前くらいは知ってるだろ?」


フレイヴから伝えられた人物の名前はもちろん知っていた。

この帝麗学院の現生徒会長。

…つまりこの帝麗学園のルールを決められる人物。


「知ってるけど、そいつがなんでキョウにこんな嫌がらせをするんだ?」


「詳細は私も分からないのだが…恐らく私怨だ」


私怨…。

キョウが全堂に何かをしたというのだろうか。


「君がこの学園に来る前の話だが、キョウは入学試験で全教科満点を取って成績トップで入学したんだ」


「ええっ!!?」

帝麗学園自体が進学校であるため入試難易度はとてつもなく高いことで有名だ。

その高校にノーミスで合格するってどんだけ頭がいいんだろう。


「ちなみに学園史上初の快挙だったそうだ」


話のスケールが大きくていまひとつ想像できない。

そんな成績で合格したもんだからキョウに新入生代表の挨拶の依頼が来たらしい。

けれど彼はその依頼を「そういうの苦手だから」という理由で蹴った。


「そうして繰り上げで代表挨拶に選ばれたのが入試順位2位の全堂だった」


「そんなことが…」


「ちなみに全堂の帝麗に対しての気の入れようが異常でね」

悔しさのあまり代表挨拶の最中終始号泣していたらしい。


「よほどの屈辱だったんだろう。全教科満点ではなかったにせよ彼も学園の史上入試記録を余裕で更新するほどの点数ではあったらしいからね」


「……」


入学後はその悔しさをバネにしたのもあり、学業だけでなく元々運動神経も良かった全堂が帝麗ランキングで堂々のトップになり2年に進学した際に生徒会長になったらしい。

2年になってからの急な幽霊の取り決め…。

まさにキョウが言っていた存在を消された時期と一致している。


「でもそれってただの八つ当たりじゃないか…」


「まぁ言ってしまえばそうだな…」

帝麗の学園のシステムを利用しただけの復習に他ならない。


「無茶苦茶な状況じゃないか! 学校の生徒全員に無視されてるんだぞ?」


「それが容認されてしまうんだ、この学園ではね」


「じゃあ生徒会長が死ねって言ったら死ぬっていうのか!?」

自分が冷静じゃなくなっていることには気づいていたが止まらなかった。

極論になるがそれすらも容認されることになってしまうじゃないか。


「いや…それはない」

「生徒会長の発令においては審査があるんだ」


「審査?」


フレイヴが言うには、生徒会役員は会長、副会長、書記、会計からなる。

会長には学園の規律も変えられる規則の変更が可能だがこれには副会長の同意が必要になるらしい。

書記と会計はあくまで意見交換はできるが決定権はないとのことだった。

つまりこの幽霊の取り決めに関しては少なくとも副会長の同意があったということになるのだ。


「生徒会ってイカれたやつしかいないのか…」


「む…、そこに関しては否定し難いところだが…」

苦い表情でそう答えるフレイヴ。


「まあなんにせよ私もこの状況を看過したくないし、君も同じだと思ってね」


「当たり前だろ! 聞いてる限りただの八つ当たりじゃないか…!」

あまりにも理不尽すぎるキョウのへの処遇に憤りを隠せない。


「この状況をどうにか打開したくて君に声をかけた」


「…でもどうして転校して日の浅い僕に?」

気になる点はまずそこだった。

あの空き教室でキョウと話していた時も誰かに目撃された気配はなかった。

フレイヴが僕に話しかけてきたということは僕とキョウに接点があることを知ったからなのだろう。


「私はこの学園のコンシェルジュであると同時にセキュリティでもある」

「実は学園敷地内のいたるところに防犯を目的とした音声傍受の機器が設置されている。それらの管理も任されていてね」

さすがエリート育成高校、セキュリティ面もものすごい力の入れようだ。


「…でもなんかやってること盗聴っぽいよね」


「とっ…!? 聞こえが悪いな。悪事を未然に防ぐための対策と言ってくれないかな」

僕の指摘がなにか引っ掛かったらしい。


「ふう…。ま、そのセキュリティのおかげで君がキョウに接触していることを知ったんだ」


「なるほど…」

他の一般生徒は恐らくこのセキュリティシステムについて知らないんだろうな…。

普段の独り言などには気を付けようと心に誓った。


「話が逸れたが、現状打開のための方法がいくつかある。それを今から君に話そう」


これまでの話を聞いた感じだと打開は容易ではなさそうだ。

それでも方法があるなら試してみたいと、そう思った。


「まずはプランA。君が生徒会長になることだ」


「…いきなり絶望的なのが来たな」

案の一つで出てくるような気はしたが…。


「帝麗ランキングが決定するのは夏休み前と冬休み前の年に2回。そして休み明けにトップの変動があれば生徒会長が入れ替わる」

「まあ辞退することも可能だが、学園を思いのままにできるんだ。基本的に辞退する奴はいない」


「詳しく説明してもらってるところ悪いが僕の学力も運動神経も凡人並みだぞ」

自分で言ってて悲しくなるが、そもそもそんなに自頭がいいわけではないのだ。


「まあそうだろうな。はなからプランAには期待していないから安心してくれ」


「……」

変に期待されるよりは気が楽なはずなのだが、面と向かって才能を否定されるとそれはそれで心に刺さるものがある。


「それで? プランBはっ!?」


「ああプランBは…ってなんでちょっと怒り口調なんだ?」

冷静さを装っていたつもりだった自然と語気が強まってしまっていたらしい。

ちょっと驚いたような表情を浮かべるフレイヴ。


「プランBは現生徒会の解散要求だ」


「解散要求?」


「ああ。生徒会の設定した校則や人選などに不服がある場合、要求により総会が開催される」

「その総会において全校生徒の7割以上の賛成票があれば生徒会役員を辞任させることができるんだ」


「そんなルールがあったのか…」

それならばなぜ今までにこの幽霊に関する取り決めについて総会が開かれなかったのだろうか。

疑問に思い尋ねようとするや否やフレイヴが言う。


「じゃあなぜこの状況に対して誰も動かないのかって思ってるんだろ?」


「あ、ああ」


「みんな動かないんじゃなくて、動けないのさ。生徒会による処罰を恐れてるのさ」

そもそもがキョウを見えないものとして扱った取り決めがある以上、それに関しての議題を出すことはタブーとされている。


「見えてますって自己申告しているようなもんだからな…」


ふざけた校則だと改めて思う。


「だがルールはルールだ。総会で不服申し立てが可決されれば全堂とはいえルールに従うしかない」


「でももともとトップを取る様な奴だし半年もたったらまた生徒会長になっちゃうんじゃないのか?」

それでは意味がない。結局元通りの学園に戻ってしまうじゃないか。


「いや、それはない。一度解散要求で辞任した役員は基本的にもとには戻れないんだ」


「そうか…」

転校して日が浅い僕だが、キョウを救う方法があるとしたらこのプランBしかないようだ。


「ざっくりと話したがなにか質問ないか?」

フレイヴがふぅ、と一息つきながら聞いてきた。


「ちなみにあとはプランない感じ?」

一応聞いてみる。


「ん? Dまであるぞ」


「え? どんなの?」

自発的に出してこなかったあたりあんまり期待できないプランなのは予想がつくが…


「プランCはキョウを別の高校に転校させることだ。まあ手続きとかもろもろ考えると最終手段だが…」

そもそも他人がどうこう動ける作戦じゃないので実行が難しい。


「そしてプランDは…」


「Dは…?」


「物理的に生徒会長に辞任してもらう方法だな。ふっ…」


鼻で笑ったように話すフレイヴだが、ロボットだからということもあるがその目が笑っていない。


「物理的…っていうと?」


「知り合いに研究者がいてね。痕跡を残さずに二度と起きなくなる飲み薬の作り方を…」


「ちょっ…ちょっとまって、ストップ!! そこまで!!」

とんでもなく物騒なことを言い出したので慌てて遮る。


「軽いジョークだ」


「軽くないんだってば」

あまり冗談に感じないトーンで話すフレイヴが少し怖くなる。


「まあ、詳細は追って後日また話そう。あまり長居すると部活動の生徒が増えてきて怪しまれるからな」


「ああ、分かった」

廊下の方の喧騒が大きくなってきたので頃合いを見計らってフレイヴと別れた。




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