【第2話】たーみねーしょん①
さて、インベーダーガール。続編です。
部活動設立のために部員を求めて試行錯誤する楽と杏。
案の定トラブルに巻き込まれますがどうぞお楽しみください。
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「この辺りのはずなんだけど・・・」
絵入さんとともに寧斗さんなる人物の家を探し歩いていた。
位置的には市街地から少し離れた郊外になるのだろう。
開発中のビルなども見られ、その他にも工場や資材置き場などが先ほどからあちこちにみうけられる。
やや入り組んだ通路が多く目的の多網家を見つけられない。
そもそも藤崎の書いた地図も若干どころかかなり曖昧で、住所を教えてもらった方がスマホで調べてたどり着きやすかったんじゃないかと後悔してしまう。
藤崎マップによると目的地の近くに銭湯があるみたいなんだけど・・・。
「あれ、もしかしてあれか?」
そう遠くない位置に思い描いていたイメージほど高くない煙突が見える。
「あ、三毛猫」
きょろきょろとよそ見をしながら少し後ろを歩いていた絵入さんが急に猫に反応し駆け寄って行った。
三毛猫は絵入さんに気付くとびくっと警戒したのちに小走りで少し先の角を曲がって行った。
「ちょっとちょっと、この状況ではぐれてもらっちゃ困るよ」
自由気ままに駆け出した絵入さんを呼び止めるが返事が返ってこない。
しかたなく絵入さんの駆けていったほうへ行ってみると、曲がり角を曲がった先で絵入さんが両手を挙げて静止していた。
・・・そして武装した少年に銃を突きつけられていた。
「あやしいやつめ!なをなのれ!」
物騒な武器を持った小さなソルジャーは新聞紙のマントを風にたなびかせ、黄金色の大きな兜(に見せかけた鍋)を頭にのせて絵入さんを威嚇する。
と、ここで気づいたのだが銃を構える少年の後方の民家に多見の表札が見える。
どうやら僕たちは目的地に到達できたようだ。
ということは、この少年は寧斗さんなる人物の兄弟かなにかだろうか。
「ま、まて。落ち着いて話し合おう」
演技だか本気だかわからない少し青ざめた表情で絵入さんがソルジャーに対話的解決を求めた。
「うるさい!なをなのれ!」
「え、絵入さん。取り合えず自己紹介した方がいいんじゃ・・・」
ソルジャーの持ってるものが水鉄砲ならまだいいが、エアガンだったりしたら万が一発砲した際に絵入さんに危険が及ぶ。
こくんとアイコンタクトとともにうなずく絵入さん。
「よく聞け少年。わたしは・・・・おっぱい星人だ」
「お、おっぱ・・・?」
ソルジャーは予想もしなかった絵入さんの回答にたじろいでいる。
「おいアホ!刺激してどうすんだよ」・・・そして僕も。
「も、もくてきはなんだ!」
戸惑いが強かったのか、やや涙目になったソルジャーは震えた声で自称おっぱい星人に銃を構えたまま追及を続けた。
「もくてき?ふふふ・・・、この町をおっぱいで埋め尽くすことだ!」
両手を広げて自分より一回りも二回りも小さな少年を威嚇する。
「ふぇ・・・・」
あ、いけない。
ソルジャーの精神がもう限界のようだ。
絵入さんにストップをかけようとしたがちょっと遅かった。
「うわあああああああああん!!!」
小さなソルジャーは構えた銃をがむしゃらに連射した。
「のわーーーー!濡れる!」
構えていた銃は水鉄砲だったようで、顔面を中心にびしょ濡れになりながら逃げ切れずその場にうずくまるおっぱい星人。
ひとしきりハチの巣にされたのを見計らってから絵入さんに歩み寄った。
「平気ですかな?」
「か、顔が濡れて力が出ない・・・」
どこぞのアンパンのヒーローみたいな負け台詞をつぶやく絵入さん。
一応持っていたハンカチを渡しておく。
「どうだ!参ったか!わるい宇宙人め!」
水鉄砲を乱射した少年は半泣きになりながらも絵入さんを煽った。
その直後に少年の後方から「こらーーーーーーー!!」という大きな声とともに少年より一回り大きな小学生ぐらいの少女が飛んできた。
「健斗!また知らない人にちょっかいだしてたでしょ!」
「違うよ、恵斗ねぇ!おっぱい星人がせめてきたんだよ!」
「おっぱ・・・!?えっ、なんですって!?」
む・・・話がややこしいことに。
「わけわかんないこと言ってないでちゃんと謝りなさい」
左手に魚の図鑑を抱えた恵斗という女の子が続ける。
「そうだ少年、土下座だ土下座」
「これ以上話をややこしくするな」
悪ふざけか本気かわからない絵入さんの野次を一蹴し恵斗ちゃんの誤解を解くことにする。
「・・・というわけで寧斗さんという人を知ってるかな?」
「なあんだお客さんだったんですね。せっかくですが寧斗にぃは今いません。ばっちゃの迎えに行ってます」
「そうだったのか・・・、ん?ねいと・・・兄ちゃん?」
え?男の人?
「はい、多見寧斗は私たちの兄です」
「寧斗・・・くんだったのか」
名前のニュアンスで勝手に女子だと勘違いしていたためなんだか変な気分になる。
「まぁ立ち話もなんですからお茶でも飲んでいきませんか?」
さっきから恵斗ちゃんの礼儀正しさと丁寧さに感心させられてばかりだ。この子の爪の垢でもどっかの誰かさんに飲ませてやりたいほどに。
「麦茶か?それともほうじ茶か?」
当の本人はお茶の種類を気にしているが。
「あ、すみません・・・緑茶なんですけど」
「いや、いいんだ恵斗ちゃん。僕たちプリント届けに来ただけだから」
「この際緑茶でもいい」
「・・・・・」
冷ややかな目で絵入さんにプリント渡したし帰るぞ、と訴える。
なにやら危険を察知したような表情で絵入さんが肩をすくめる。
「まぁ、今日のところは帰ろうかな」
そういって踵を返した絵入さんが巨大な何かにぶつかった。
「ふぎっ」
子猫のような絵入さんの小さな悲鳴を聞いて僕も振り返ると、
「いてぇなこのやろう」
・・・そこにはおよそ高校生とは思えない強面の少年がいた。
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「気楽な人生を送れるように、そんな思いを込めてこの名前をつけたのよ」
「だめだよ!あぶないよ!」
「おっきくなったねぇ」
「うぬぼれもほどほどにしてくださいね」
「天誅じゃーーーーい!!!!」
「あ、ありがとう」
薄れゆく意識の中、過去にどこかで経験したような曖昧な記憶が目の前をただ流れ消えてゆく・・・。
あれ?これってもしかして噂に聞く走馬灯ってやつじゃないか?
ちょっとまて。僕はまだ死んでないぞ。
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「・・・・はっ!」
我に返って目を覚ますと自分が宙に浮いていることに気が付く。
「だれだおまえら?」
混乱する頭で状況を整理してみたところ、
どうやら僕は制服の首元をつかまれて持ち上げられているらしい。
「ぐ、ぐるぢい・・・」
「ちょっと寧斗にぃ!お客様だよ!怪しい人たちじゃないよ!」
慌てて止めに入る恵斗ちゃんの声が聞こえる。
「なにっ!?」
僕を持ち上げていた強面が慌てて至極優しく僕を地面におろす。
「わりい、早とちりしちまって。最近家にいたずらをしに来るやつがいるからそれかと思っちまって」
「げほっ、ごほっ!いや・・・いいんだ」
恵斗ちゃんが止めに入らなければ気絶していたかもしれない・・・。
「無事か、楽?」
多見家の塀の脇から顔だけ出してこちらを覗き込む絵入さん。
自身の安全を真っ先に確保したのがこれでもかと伝わってきた。
「・・・命に別状はないみたい」
少し震えた声で返事すると、「おおげさだなぁ」と健斗くんが茶々を入れた。
「てかその制服って立華のだよな?」
多見寧斗が僕たちの着ている制服を見て言う。
本来であれば彼ももう通ってるはずの高校の制服である。
「なんなら同じクラスだけど・・・」
出会い頭に襲撃を受けた手前、若干ひきつった表情で答えてしまう。
そんな僕の様子を見て咄嗟に恵斗ちゃんがフォローをしてくれた。
「寧斗にぃが謹慎中で溜まってたプリント類を持ってきてくれたんだよ」
「そうだったのか。ほんとにすまん!カッとなると周りが見えなくなっちまって・・・」
と、ここで寧斗の後方からピシっとした声が聞こえた。
「これ、寧斗!謝るだけじゃなくてちゃんとお礼をせんと!」
体格のいい寧斗に隠れて全然見えなかったが、彼が数歩横にずれると優しそうな顔立ちの老婦がそこにいた。
「わかってるよばあちゃん・・・」
「根はやさしい子なんだけど口下手だからすぐに怖がられちまってねぇ」
よかったら仲良くしてやってくれと、そういわれた。
「寧斗にぃには僕たちがいるから平気だよ」
「人を孤独みたいにいうんじゃねーよ!」
健斗君のフォローに反発しつつも少し気恥ずかしそうにする寧斗。
「わたしが友達になってやってもいい」
そう上から目線で会話に入ってきたのはまさかの絵入さんだった。
「えっ!本当か!?」
ビー玉のようにキラキラした瞳で思ってた以上の反応を示した寧斗に絵入さんが少し面食らう。
「た、ただしバイオレンスなのはダメだ」
バイオレンスとは先ほど僕を空中コンボの一歩手前みたいな状態にしたあれを指しているのだろう。
「僕もバイオレンスなのがなければいいかな」
「・・・それに関してはほんとにすまん」
素直に反省した表情で頭を下げる寧斗。
「でもすげーうれしいよ。ちょっとわけあって転校直後に謹慎喰らっちまってな」
クラスに行ったとしても浮いてるだろうしな、と。
「それに関しては大丈夫だよ、僕たち二人も転校初日にやらかしていまだにクラスで浮いてるから」
「おい、楽の痴態に私を巻き込まないでくれ」
「いやいや、あなたが主役ですけどぉ!?」
自覚してない様子の絵入さんに思わず切り返す。
「まじかよ!お前たち二人も転校生だったのか!?」
驚愕の色を隠せない寧斗。
「同時転校の生徒が他に二人いるって担任の藤なんちゃらがいってたんだよ」
「藤崎な。そしてまさにその二人だよ」
「おおー、なんか運命的なものを感じるぜー!!」
運命的なものはあるかもしれないが、お互いに転校に至った理由は聞かない。
僕的には転校早々謹慎になった理由は気になったが、それこそ野次馬根性で聞くものでもない。
触れてはいけない一線を探りながら、こうして人は大人になっていくのだろう・・・。
「そういえばなんで謹慎になったんだ?」
・・・忘れていた。ここにデリカシーのデの字もないやつが一人いることを。
「学校に挨拶に行ったときに何故か校門で他校の生徒に絡まれてよ、返り討ちにした」
と、特に隠す素振りもなく寧斗が言った。
「でも寧斗にぃはせーとーぼーえーだったんだよ!相手は5人もいたんだ」
「一緒に健斗とばあちゃんがいたんだけど・・・、無視しても相手がしつこくてな」
まぁやりすぎちまったのはいけないな・・・と落ち込む寧斗。
「僕だったら人数がいようと寧斗にケンカを吹っ掛けようとは思わないけどな」
と、思ったことを口にした。
「まあ、なんにせよとりあえず今日で停学は解けるし明日から登校はするよ」
「わかった。じゃあまた明日」
そういって別れ、僕たちは多見家を後にした。
帰り道で絵入さんが寧斗について話していた。
「あいつを部員として引き入れるのもありだな」
絵入さんの提案は僕も考えていたことだった。ただ・・・、
「家のこと忙しそうだし部活とかやってくれるかな?」
先ほど訪れた多見家の印象からそんな疑問をもっていた。
「人員として入ってくれれば自由にしてもらっていい」
「それ部活動って言わないんじゃ・・・」
「・・・・」
まあそもそもが自分たちの避難所確保目的みたいなところがあったからそれでもいいっちゃいいんだが。
「それになんかスポーツやってたかもしんないじゃん、あのバイタリティだぞ?」
「仕留められた小動物みたいになってたからな、楽」
「ぶつかったのは絵入さんなのにね(怒)」
「わたしは命の危険を感じてすぐに隠れたからな」
「まるで僕の危機管理能力が低いみたいな言い草だね」
そんな会話をしているうちに家が近づいてきた。
「んじゃまた明日」
「ん」
絵入さんと別れ僕も家に帰った。
今日あったことを思い出しつつ安堵とともに疲れがいい感じに睡魔を誘う。
明日もまた教室で一悶着起こりそうな予感がする。・・・いや、直感か。
そんなハラハラだかワクワクだかよくわからない感情の波に揺られながら、
僕の意識は遠ざかっていった。
≪余談≫
小説家になろうの機能でアクセス数って言うんですか?閲覧統計みたいなのが見れる機能があることを最近知りました('_')
これめっちゃいいですね。誰かが立ち読み程度でもいいので目を止めてくれているっていうのがわかるだけでモチベーションがすげー上がります。
頑張って書いていこうという気持ちになれますね。




