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【第4話】ぼーいずびーあんびばれんす⑱

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花ちゃんが講壇の前に立つ。


その第一声が皆気になるのだろう。先ほどまで騒めいていた講堂内が徐々に静かになる。


「みんな知っての通り私は先ほど絵入女子の応援演説をした。本来であればタブーだが二者の応援演説を務めさせてもらうことをどうか容赦願いたい」

二人とも同じくらい応援したい気持ちは本当だと花ちゃんが告げる。


そんな矢先だった。


「ちょっといいかしらぁ」

講堂内の清聴を壊すように立候補者席から声が上がった。

いつの間にマイクを持ってきたのか、立華さんが不敵な微笑を浮かべながら花ちゃんに噛み付いた。


「二者の応援演説とかぁそんなのどうでもいいんですけどぉ、もっと他にハッキリさせなきゃいけないことがあるんじゃないかしらぁ?」

立華さんが言っているのは言うまでもなく先日学園中で瞬く間に噂となった花ちゃんのオネェゴシップのことだろう。


「あいつ…! また面倒なこと持ちかけやがって…!!」

僕のすぐそばでしゃがみ込んでいた寧斗が苛立ちを隠せない様子でつぶやいた。

野次馬精神もあるだろうけど、講堂の生徒たちもこの件に関しては気になっているところも多かったのだろう。ただ黙って成り行きを静観している。


「……」

特に動揺を示すわけでもなく花ちゃんは真っすぐ立華さんを見据えていた。


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「か、会長…。気にすることないですよ。いままで学園のために活動してきたことが全てですから」

すぐ後ろにいる城戸君からフォローの言葉を投げかけられた。


「ふぅ…」

これは一種のけじめだ。学園の生徒の模範であるべき生徒会長が自分も正直に晒せないでどうするって話よね。


「------みんな聞いてちょうだい!」


「会長…!」

私の決心を悟ってか、城戸君が堪えきれずに涙を流した。

危うくもらい泣きしそうになったがぐっと踏みとどまる。

もう引っ込みはつかないわ。…あとは突っ走るのみよ。


「色々噂に聞いているとは思うけど、御覧のとおりよ! これが本来のあたしなの!」


「張り出されたゴシップにはちょっと脚色が付きすぎてるから重要なところだけ訂正させてもらうけど、一緒にパパラッチされてた男子生徒とは怪しい関係ではないわ」


「ちょっと父親と喧嘩して路頭に迷っていたんだけど、その時にたまたま出くわした彼に秘密にしてたこの素性がバレちゃってね」


「でも彼ったらそんなあきらかにワケアリのあたしを匿ってくれたのよ。ほとんど喋ったこともなかったっていうのにね」

講堂の後方でしゃがみこんでいる楽ちゃんをチラ見する。


……あれ楽ちゃんで合ってるわよね? なんであんなに顔面が腫れ上がってるのかしら…。

まぁ今はそれどころじゃないわね。気を取り直して話に戻る。


「だから彼や彼を取り巻く人たちに憶測やそう言ったことで追及や迷惑をかけないようにしてあげて頂戴ね。あたしの大事な友達だから」


「そして言い訳がましくなるからあんまり言いたくはないんだけど、あたしには二人の仲のいい姉がいるわ」


「この二人と小さい頃から寝ても覚めても一緒に遊んでいるうちにこんな感じに育っちゃったわけよ」

講堂の一部の女生徒が「そんな…花道様…!!」という声とともにその場に崩れ落ちた。


「ちょっと! なんで悲観してんのよ!? あんたたちが追いかけてくれてた花道は仮初、いわば偶像よ!」


崩れ落ちたファンクラブの女生徒の一人を指さして言い放つ。


「むしろ喜びなさいよ! あんな畏まった生徒会長よりこんな感じの方がもっと砕けていろいろおしゃべりできるじゃないの!」


「まぁこの学園にいられるのも今年で最後だし、今日をもって生徒会長ではなくなるんだけど…」


「後任に関してはあたしが手塩にかけて育てた城戸君が責任をもって引き継いでくれるはずだから大船に乗ったつもりでいなさい!」


「あ、もちろんあんちゃん…絵入さんでもいいわよ。彼女は彼女でぶっ飛んだ生徒会をやってくれそうで面白そうじゃない?」


「全然応援演説っぽいこと言ってないけど最後に…」そう前置きをして。


ぶちかましてやる。


「誰とは言わないけど、自分のことしか考えていないようなあほんだらに生徒会長なんてやらせちゃだめよぉ!」


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マイクをくるくると回しながら立華さんを見据えて花ちゃんが言い放った。

僕も含めた講堂のほぼ全員が立華さんの方を見る。

見る間に耳まで真っ赤になって激昂する人物が一人。


「はあぁ!? ふっざけんじゃないわよ!!」

注目されたことによる恥ずかしさの余り珍しく取り乱して涙目になっている。


「あたしに恥をかかせたこと全員後悔させてやるわ!! 覚えてなさい!!」

そんな捨て台詞を吐きながら足早に講堂から出て行ってしまった。


「…あたしがそんなことさせないわよ。学園はみんなのものなんだから」

ぴしっと背筋を伸ばして花ちゃんが応援演説を終えた。

最初は呆気に取られていた様子の生徒たちだったが、どこからか湧き出した拍手を皮切りに花ちゃんに拍手の雨が降り注いだ。


花ちゃんが講壇をおりると入れ替わるように城戸君が講壇に立つ。

散々泣いたことが遠目にもわかるように目が腫れている。


「生徒会長立候補の城戸彰です。よろしくお願いします」


「あんなパフォーマンスの後に演説なんて、僕には荷が重いので端的に切り上げようと思います」


「圧力に屈しない清き一票を」


講堂内が再び温かい拍手に包まれた。


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