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【第4話】ぼーいずびーあんびばれんす⑰

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隠し地下室から出た僕たちとちょうど後から追ってきた実験室コンビが合流できた。


「あ、いたいた! 博士! こっちにいましたよ~!」

美多さんの元気な声に呼び寄せられるように西園さんもこちらに来た。


「その眼鏡君は…そうか無事発見できたのだな」

城戸君を確認した西園さんがとりあえずの目標の達成にホッと安堵の息を漏らす。


「合流して早々申し訳ないんだけど急いで講堂まで行かなきゃならないんだ」

…現在地から講堂まで走って10分弱といったところか。


「ギリギリ間に合うかどうかって感じだな…」

あとは城戸君の体力がどんな感じかによるが。今はとりあえず走るしかない。


「花ちゃん、城戸君を発見した。これからそちらに連行する」

インカム越しに花ちゃんに城戸君の無事を知らせる。


「無事だったのね! …でも急いだほうがいいわ。今まさにあんちゃんが一曲目を歌い出したところよ」

冗談かと思ったのにまじでリサイタルやってるのか絵入さん…。


「みんな衝撃的過ぎて混乱してる感じだからまだ大丈夫だけど、教師陣が色々話しだしているからそう長くは持たなさそうよ!」

花ちゃんの見立てを聞いて僕たちは急いで講堂に向かって走り出した。


「私たちの役目は終わったな…。健闘を祈るぞ諸君…!」

そう言って静かにその場から離脱しようとした者が約一名。


「ほら博士! 走りますよ!」

しかし良くわからない勢いに乗じた美多さんに発破をかけられ半ば無理やり走らせられた。


「い、いや…。私たちは会場に行く必要なくないか?」


「何言ってるんですか!? この学園の…引いては私たちの未来が掛かってるんですよ!!」

気のせいか美多さんの目が燃えている気がする…。


「え、えええぇ……」

心底しんどそうに走り出す西園さん。

城戸君の散策開始直後の様子を知っているからこそ西園さんの体力のなさを知ってはいたが果たして大丈夫だろうか?


…そんなことを思った30秒後、


「かひゅっ…かひゅっ…」


明らかに大丈夫じゃない呼吸で歩く速度とほとんど変わらない速度で走る?西園さん。


「み、美多さん、西園さんが死にかけてる気がするんだけど…」

異変にいち早く気づいた僕はだいぶ後方でゾンビのようになっている西園さんを指さして美多さんに告げる。


「えっ? …あっ! は、博士!? 大丈夫ですか!?」


「絶対大丈夫じゃないぞあれ…」

西園さんのもとに駆け寄る美多さんを見ながら寧斗がつぶやく。

美多さんがたどり着くとほぼ同時に西園さんが足から崩れ落ちた。


「あっ…」

西園さんを抱きかかえた美多さんがこちらに向かって手を振る。


「み、皆さんだけでも講堂を目指してください! 悔しながら私たちはここで動けそうにもありませーん!!」

後からゆっくり追いかけますのでー、というなんとも情けないエールが届く。

そもそも城戸君がたどり着けば目的は達成なので、西園さんが最初にぼやいたとおり実験室メンバー二人は走る必要がなかったのだが……まぁ今となっては何も言うまい。


途中で脱落した二人を振り返ることなく講堂へ突っ走る。


「城戸君大丈夫?」

先ほどまで監禁されていた彼の体力を心配して声をかける。


「ああ…なんとか大丈夫だ。急に走ったから横腹が痛むが、会長があそこで待ってるんだ。…休んでなどいられないさ」

そう意気込む城戸君だったが明らかに顔色が悪く今にも倒れそうだった。

若干スピードは落ちるが演説中に倒れてしまっても困る。そう思った僕は城戸君と寧斗にある提案をした。

寧斗が城戸君を背負い、僕が後方から城戸君を支える。簡易版の騎馬戦みたいなスタイルで講堂を目指すことにした。


「楽ちゃん! あんちゃんが2曲目に移ったんだけど教師陣がだんだん落ち着かなくなっきたわよ!」


「もう間もなく講堂に向かう渡り廊下に入る!」

誰もいない校内を出来うる全速力で騎馬が駆ける。

……今更ながら異様な光景である。


「おえっ…」


「えっ?」


「不規則な揺れが思いのほかきつい…」

城戸君が急に体調の悪化を申し出た。結構我慢していたのか、豆腐のように顔が白い…。


「あともう少しの辛抱だよ!」


「乗せてもらってる分際で申し訳ないのだが、もう少し揺れないよう心がけてくれると助かるんだが…」

次第に白から青に変わってきている顔色で城戸君が弱弱しく懇願する。

寧斗と相談してなるべく揺れないように目前にある講堂まで駆けた。


「これは大分きついな…!」

揺れを抑えようとした影響もあり、足腰への負担が尋常じゃなく思わず寧斗も声を上げる。

息を切らしながら講堂にたどり着き渡り廊下からその鉄扉を開ける。

講堂の中に踏み入った途端に城戸君が騎馬から崩れ落ちてうずくまった。

たまたま持っていたのだろうか。死に物狂いの手つきでポケットからビニール袋を取り出すと嗚咽とともにたまらず城戸君がリバースした。


「おぼげええええええええええーい!!!」


「きゃあああああああああああ!!!??」


入り口付近にいた在校生が急にダイビングリバースをかます城戸君に驚いて悲鳴を上げる。

足に溜まった乳酸に苦しみ、そんな状況にリアクションをとれずに倒れこむ僕と寧斗。

酸欠も相まって脳の回転が追い付かない中、ふと壇上を見ると謎の覆面女子生徒が教師陣から今まさに降壇を余儀なくされようとしているのが見えた。


「ま、待ってくれ。あと一曲で終わりだから…」


マイク越しにそんな抵抗声明が聞こえてくる。

どこか聞き覚えのある曲も流れている…これは「蝋人形の館」だ。


…なんにせよカオスすぎる状況である。


「もう3曲も歌ったんだから十分でしょ!」

教師に促されるままに舞台袖へと絵入さんが引きずられていった…。


と、ここでこちらに気づいた花ちゃんが駆け寄ってきた。


「あなたたち! ギリギリセーフよ! ほんと良くやってくれたわ!」


「おまたせ…。なんとか間に合ったけど、城戸君機能してないかも…」

すぐそばで栽培マンの自爆を食らった後のヤ〇チャみたいに横たわってる城戸君を指さして伝える。


「生徒会仕込みの城戸君がこのくらいでへばる筈はないわよ…多分」

自分で言っておきながら今にも消えてしまいそうな城戸君の衰弱具合に後半明らかに自信を無くした様子の花ちゃん。

しかし花ちゃんの声に気づいてかぴくっと体を動かしだす城戸君。


「ふうふう…吐いたら少し楽になった」

先ほどまでよりは若干改善したが依然として顔色の悪い城戸君がハンカチで口元を拭きながらよろよろと立ち上がった。


「会長、ご迷惑と心配おかけしました。城戸彰、会長の後任を務めたく存じます」

ふらふらながらも片膝立ちの姿勢を取り花ちゃんに頭を下げる城戸君。


「城戸君、少し休んでなさい。…休みながらでいいから私の生徒会長最後の大仕事、その目に焼き付けるといいわ」

そう言って城戸君を背負うとゆっくりと通路わきから壇上に向けて進みだした。

なにか神聖なものでも見せられているかのように講堂内は静まり返った。

途中で教師のうちの一人に花ちゃんが何かを告げていた。

おそらくもう一人の候補者の演説を行う旨を伝えたのだろう。

告げられた教師がマイクを持って話しだす。


「えー、少し時間は押してしまいましたが最後の候補者の応援演説に移ります」


花ちゃんが城戸君を背負ったまま壇上に上がり、講壇わきのパイプ椅子にゆっくりと降ろして座らせた。

講堂内でのざわめきが次第に大きくなっていった。

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