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【第4話】ぼーいずびーあんびばれんす⑬


-----------------------------


4時限目の授業が終わって昼休みになった。

と、ここで西園さんから緊急連絡が入る。


「諸君、朗報だ。時間をずらして防犯カメラの映像を漁っていたら…映ったぞ」

西園さんに事前に立華さんとその取り巻き二人の特徴を伝えておいた。

だいたい3人一緒に行動するため特定は容易だったらしい。


「城戸氏が映った30分後くらいに部活棟の同様の方向に例の3人組が映っていた。城戸氏と同時に映っている映像があればそこでチェックメイトだったんだがな、もしかしたら先に呼び出されていたのかもしれん」


そもそも防犯カメラの映像自体が個人で確認していいものではないため、証拠として有用性を持たない。

だが関連性を示す唯一の手掛かりだ。

時間もないためそれぞれがバラバラに行動するタイミングを待っている余裕はない。

インカム越しに作戦を練る。


「素直に話してくれるとは到底思えないけど…誰かが聞くことで揺さぶりはかけられるかもしれないな」

僕や絵入さんだと適当にあしらわれておしまいだろう。

候補としては寧斗、次点で先日インパクトを与えた御手洗さんあたりだが…。


一応提案してみたところ、

「それがみなしゃんのためになるなら…!」と意気込む御手洗さんだったが、目視ではっきりと分かるくらい全身が超振動を起していたため却下となった。


「そしたら俺だな」

寧斗が何の躊躇いもなく立華さんたちの群れに向かおうとしたところでインカムから別指示が入った。


「いや、寧斗ちゃん。あたしが行くわ」


その一声とともに教室の扉が開け放たれた。


教室の全員の視線が花ちゃんに集中する。

「失礼する」

そんな視線に臆することもなく立華さんの姿を確認してまっすぐ向かっていく。



「せ、生徒会長さんが何の様かしら?」

その勢いに一瞬怯んだものの憮然といつものように相手を見下した態度で話す立華さん。


「城戸彰という私の友人に心当たりはないだろうか?」


「きどぉ? 誰のことかしら? 知らないし、なんであたしがそんなこと聞かれなきゃなんないの?」

予想通り白を切る立華さん。


「お連れの二人はそうでもないみたいだが?」

だが、取り巻き二人が明らかに動揺していたのを花ちゃんは見逃さなかった。


「……!!」

ちっ!と舌打ちをして立華さんが鳥牧さんと下辺さんの手を引いて強引に立ち去ろうとする。

「知らないっていってんでしょ!? 生徒会長だからっていい気になってんじゃないわよ!」

半ば強引に二人を連れ去って教室から出て行ってしまった。


「む…逃げられてしまったか」

ふぅ、と一息ついて肩を落とす花ちゃんに歩み寄る。


「もう犯人ですって言ってるようなもんじゃんね」


「でも城戸君の所在が分からない状況は変わらないのよねぇ…」

周囲の生徒に聞こえない声量で花ちゃんが言う。

手詰まり感でいっぱいの中、インカムから西園さんの声が届いた。


「ちょっと提案なんだがいいか?」

全員が西園さんに応答する。


「今の状況から察するに、城戸氏拉致の容疑はあの3人でほぼ固まったと思う。問題は当人たちが認めないことには状況が打開できないことにある。……そこでだ、立華女子を何とかしてあのグループから離脱させる状況さえ作ることができれば交渉の余地も生まれるかもしれないな」


「あいつら別々に行動してるとこ見たことないけどな」

絵入さんが僕らも薄々気づいていた絶望的な情報を提供する。

「とりあえず昼休みが始まったばかりだけど策を練るしかない。…なんかある?」

「あ、いけない。そういえばあたし講堂で選挙演説の準備しなくちゃいけないのよ」

そういって花ちゃんが早々に離脱した。

僕と絵入さん、寧斗と御手洗さんで立華グループを離解させるための作戦会議が始まった。


「名案を思い付いた」

そういって絵入さんが果たし状と書かれた封筒を懐から取り出す。


「いつから持ってたのそれ?」


「こんなこともあろうかと忍ばせといた」

良くわからない用意周到さをお披露目する絵入さん。


スッと立ち上がると小走りで立華さんの机へと向かう。

丁度花ちゃんとの一件で教室から離れていたので難なく忍ばせることに成功する。


「中の手紙になんて書いたんですか…?」

恐る恐る御手洗さんが尋ねる。


「頭隠して尻隠さずって書いた」


「呼び出しすらまともにできてないじゃん!」

果たし状の意味を今一つ理解していない絵入さんにつっこむ。


「そもそもいつ戻ってくるかもわかんねえしな……ってあれ?」

寧斗がつぶやいている最中に聞きなれた甲高い声が廊下から聞こえてくる。


「どどどどうするんですか!? 戻ってきちゃいましたよ!?」


「ふっ、作戦通り」

動揺する御手洗さんに謎のサムズアップを見せつける絵入さん。

教室の入り口が開かれて立華さんと取り巻き二人が戻ってきた。


「美歩も雛子も動揺しすぎ! こっちがひやひやしたわよぉ!」

先ほどの一件のことを咎めているのだろう。当たり散らすかのように二人に文句を言っている。

美歩さんのほうは怯えたようにただただペコペコ平謝りをしていたが、雛子さんのほうは返事はしているもののどこか不満そうにも見える表情で明後日の方向に目を逸らしていた。


 そして机に戻ると割と早めに果たし状に気づいた。


「ん? 何よこれ……? はたしじょお~?」

馬鹿じゃないの、と吐き捨てて中身も確認せずにびりびりと破り捨てられてしまった。


「万策尽きたか……」


「いや、一策しか講じてないけど……」

心なしか悔しそうに俯く絵入さんに追い打ちをかける。


そのガードの硬さに三位一体という言葉が頭に浮かぶ。

なんならトイレとかも3人一緒に行ってるんじゃないだろうか。

僕たち4人はなぜか立華さん達を監視しつつお弁当を頬張るという謎の状況で打開策が出ないまま時間だけが過ぎていくもどかしさを感じていた。


その時だった。


教室の前方と後方の扉が急に開け放たれて多数の女生徒が教室になだれ込んできた。


「抜戸楽! 花道様を誑かした罰だ! 精々悔いて死ぬがいい! かかれぇぇええええ!!!」


「えっ!!? なになにっ!?」

花道命とかかれた鉢巻と特攻服を身にまとった花ちゃんファンクラブのメンバーが僕の討ち入りに攻めた来たらしい。

どこから持ってきたのだろう、トゲのついたさすまたや木刀がそれぞれの手に構えられている。


「ぎゃああああああああああ!!!」

「逃げろおおおおおおおおお!!!」


逃げ場のない僕たちは人で溢れかえる教室の中で身動きが取れなくなった。

そもそも討ち入りの人数が多すぎて、人混みに紛れた僕を見失ってしまっているようだ。

しゃがんで机の下に避難して教室から抜け出すタイミングを見計らう。

……他の皆は無事だろうか。


「ちょっとおおお!! なんだっていうのよおおおお!」

少し離れたところから立華さんの激昂と混乱の混じった怒声が聞こえてくる。


「いてっ!」

安全地帯だと思っていたがそうでもないようだ。時折鋭い膝蹴りや肘うちが飛んでくる。

幸い見つかったわけではなさそうだがもしかしたらほとぼりが冷めるまでこのままなのかもしれない。

僕は出来るだけ息を潜め自分は物言わぬ貝だと言い聞かせた……。


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 教室にめちゃくちゃな多さの人が突撃してきて、押されるままに教卓の後方へと逃げ込んだ。

咄嗟に手を引いたので華子も一緒だ。

「あ、ありがとうございます。助かりました絵入さん……」

楽と寧斗の無事は確認できないが……まぁあいつらならなんとかなるだろう。

最近見た時代劇の合戦を彷彿とさせる怒声や掛け声が教室内に鳴り響く。

集団パニックに近い状況が起きているのだろう。

下手に動くよりは、ほとぼりが冷めるまで待つしかなさそうだ。


と、ここで大群の中から押し出された一人が私の隣に逃げ込んだ。

「うう…死ぬかと思った」

知ってる顔だ。水かけばばあと一緒にいた……確か雛子とかいうやつだ。


「だ、大丈夫ですか?」

相手は誰だかわかった上で、華子が心配の一声をかけた。


「あなたたちは……!」

相手も話しかけられて初めて私たちだと気づいたようだ。ひどく気まずそうな表情を浮かべる。

ふと、ここで何かが閃いた。

恐らくこれは千載一遇のチャンスなのではないだろうか。


「なぁ、ちょっと聞きたいんだが……」

色々聞きたいことはあったが怒号の飛び交うこの合戦場のような状況で時間をかける暇がないのは明白だったので単刀直入に聞くことにした。


「あいつが生徒会長になっちゃってほんとにいいと思うか?」


「……」


何か考え込んでる様子で俯いている。

うーん、聞き方を間違えただろうか……。

そんなことを思うや否や、教室の入り口の方から騒ぎを聞きつけて駆け付けた数名の教師が教室内の討ち入りを収めようと大声で仲裁に入ってきた。


「おまえらなにやってんだ!! 全員一旦教室から出なさい!!」


鬼気迫る教師の声に暴動は止まり全員が一旦教室を出るように指示された。

私たちも教卓から出て教室の外に向かおうとすると、

「相撲部……」と雛子というやつが小さく私につぶやいた。

今のは独り言だから。そう言った瞳には何らかの決意のようなものが見えた気がした。


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