【第4話】ぼーいずびーあんびばれんす⑪
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翌日、花ちゃんから招集があった。
普段の登校時間より30分ほど早く仮設科学実験室にいつものメンバーが集う。
「時間がないから簡潔にシンプルに伝えるわね。立華学園救済作戦を決行するわ!」
昨日の自宅に城戸君が不在だった流れを全員に話した。
「まずその城戸君だけど、この学園内のどこかに監禁されている可能性が非常に高いわね」
「なんでそんな自信持って言えるんだ?」
力強く断言する花ちゃんに寧斗が尋ねる。
「実は昨日学園に戻ってきて色々と調べ物をさせてもらったんだけど、この学園には防犯のために敷地外につながる場所にはもれなくカメラが設置してあるんだけど知ってた?」
「そのカメラに失踪当日の該当生徒が映っていなかったと……」
「話が早くて助かるわ、ふうちゃん」
「ふ、ふうちゃん?」
「風美だからふうちゃんよ。たった今思いついたわ」
「授業の兼ね合いもあるから本来休み時間以外に探している暇はない…。けれど今日は
午前中いっぱい自習に変更になる予定よ」
「え、なんでですか?」
御手洗さんが尋ねる。
「立華美咲の単独出馬よ。このままでは不戦勝で彼女が生徒会長になってしまう。そうなったら生徒はおろか教師も数えきれないほどのトラブルや悩みの種がてんこ盛りなのは考えなくても想像に容易いわよね。今緊急で職員会議が開かれているわ。一向に打開策が見つからないから会議も長引くみたいで、朝のHRで自習が言い渡される予定よ」
教師にさえも悪影響を及ぼすとは、クイーン恐るべし…。
「午前中いっぱい探しても見つからなかったらどうするんですか?」
美多さんが恐る恐る花ちゃんに尋ねる。
「痛いところをついてきたわねみいちゃん」
「み、みいちゃん?」
「美多だからみいちゃんよ。これもたった今思いついたわ」
余裕のなさの裏返しなのだろうか、ちょいちょい花ちゃんが変なテンションになっている気がする。
「午前中でけりが付かなかった場合は……苦肉の策なんだけど私の方で選挙対抗馬を準備させていただいたわ! あんちゃん! あなたの出番よ……!」
そういってビシっ!と絵入さんを指さす。
もちゃもちゃもちゃ……
「こんな大事な局面でマーラーカオ食ってんじゃねーよ!」
「もご…」
おそらく朝ごはんであろうマーラーカオを美味しそうに頬張る絵入さん。
緊張感のなさに思わずつっこみをいれてしまう。
「お、おい! 対抗馬って、こいつに立候補してもらうつもりかよ!?」
絵入さんを指さして困惑する寧斗。
「ふっ、見てごらんなさいよ。この状況でも中華風蒸しパンを頬張れる図太さ……。あたしはそれに賭けてみたくなったの……」
既に現生徒会の力を使って立候補者として申請済みよ、と希望に光る眼で絵入さんを見据える花ちゃん。
「……!!」
一気に詰め込みすぎたのか若干窒息しかけている絵入さんに御手洗さんと美多さんがイチゴオレを渡す。
「だ、だいじょうぶかなぁ??」
「……。(正直なところ消去法だったんだけど言い出せる雰囲気じゃなくなったわね)」
花ちゃんが何かを言いかけつつ渋い表情で絵入さんを流し見していた。
「だ、だいじょうぶよ。目的は生徒会長当選じゃないから。時間を稼いでくれればそれでいいのよ」
「そして楽ちゃん、あなたには城戸君を見つけだしてもらうわよ」
「ええっ!? 僕!?」
「大丈夫、あなた一人じゃないわよ。情報処理およびブレーンとしてふうちゃんに同行してもらうわ。」
更にバックアップでみいちゃん、破壊工作として寧斗ちゃんが同行よ!と意気込む花ちゃん。
「考えるのは苦手だが体力関係は任せとけ!」と寧斗が頼もしいことを言う。
「あ、そしたら途中で博士をおぶってくれませんか? 基本インドアなんで多分途中で力尽きると思うんです」
「お、おい! さすがにそこまで軟弱ではないぞ!……多分」
美多さんの提案に食い気味な反論を見せた西園さんだったが、後半自信がなくなったのかだいぶ声が小さくなった。
「俺は構わねぇぞ。普段から遊び先で疲れて力尽きた健斗のおんぶで足腰鍛えられてるからな」
「ふっ、万が一にもそんな状況にはならんから安心するんだな」
西園さんが色んなフラグを立てながら息巻いていた。
「と、いうわけで班分けね。城戸君捜索班は楽ちゃん、寧斗ちゃん、ふうちゃん、みいちゃんよ。んでもって選挙遅延班があたしとあんちゃん、かこちゃんのかしまし三姉妹よ!」
応援演説はあたしが務めるからそこは大船に乗ったつもりで任せなさいと胸をたたく。
「あ、あの…私も遅延班ですが何をすればいいでしょうか?」
全校生徒の前に立つことを恐れてか御手洗さんが若干怯えながら花ちゃんに聞いた。
「かこちゃんは主にあんちゃんの抑止剤ね。あまりにも頓珍漢なこと言い出したら幕裏からブレーキをかけてほしいの」
「わ、わかりました。頑張ります」
「大丈夫だ。わたしはサメとシャチの違いを話すだけだ」
「いや、選挙演説をしろよ」
さっそく目的を見失ってる絵入さんに西園さんがつっこむ。
「比喩でそういった話を出す分には時間稼ぎとして辛うじてアリよ。会場が混乱して先生とかが止めに来るレベルにわけわかんないこと言ってたらアウトだけど」
そこはうまい感じに応援演説でカバーするわとバックアップの態勢を示す花ちゃん。
「捜索班はどういった動きをすればいい?」
西園さんが花ちゃんに確認を取る。
「主に班全員で捜索を行えるのは休み時間になるわね。ラストチャンスは昼休みになると思うけど、自習時間のブランクが手痛いところね…」
「それならば私たちが丁度うってつけだな」
西園さんが美多さんと自分を示して言う。
「そうですね。私たちは授業に出ていないので楽さん達の自習時間も自由に動けますね」
「ああ。昼休みに向けて城戸氏がとらわれていると思わしき場所の絞り込みをしておこう」
そう言いながら西園さんが近くのテーブルまでよたよたと歩いていきテーブルの一部を手でひっくり返すとキーボードとモニターが出てきた。
「この端末から学園内の防犯カメラにハッキングができる。城戸氏失踪当日の足跡を洗っておくよ」
「助かるわ。セキュリティ関連のものになると開示に色々申請が必要で見せてもらえなかったのよ」
「それとこれを渡しておこう。今日一日はリアルタイムで連携が取れたほうがいいだろうからな」
そういって西園さんが超小型のインカムを人数分渡してきた。
「すごいですよこれ! 装着してもぱっと見全然わかりません」
御手洗さんがあまりの小ささに驚いている。
耳に張り付けるタイプのインカムなのだが、超小型過ぎて辛うじてホクロに見えるような大きさだ。
「あれ、どこいった?」
絵入さんが受け取る際に落としたのか周囲の床をキョロキョロ見渡している。
「なんだ、さっそく失くしたのか…」
呆れた面持ちで西園さんが白衣のポケットからスマホを取り出す。
「そんな大きさだがGPS搭載でな。こちらから操作すれば音を出して位置を知らせることもできるぞ」
そういってスマホを操作すると絵入さんの足元からピヨロロロローというなんとも気の抜ける甲高い音が鳴り響いた。
「ん?」
ミシッ……ペキッ……
直下にあると思って一歩後退した絵入さんが何かを踏み潰した音とともに甲高い音が鳴りやんだ。
「あっ」
その場にいた絵入さん以外の全員が何かを察したような声を出す。
「今の音ってもしかして…」
ぷるぷると震える西園さんの持つスマホの画面を覗き見ると絵入さんが使用する予定だったインカムの稼働状況に赤文字で大破と表記されているのが見えた。
「…ちなみに製作費用は一台500万はくだらないと思ってくれるとありがたい」
学校負担の経費で製作されていたため幸い弁償は免れたが、スペアを受け取る絵入さんが珍しく変な汗をかいていた。




