【第4話】ぼーいずびーあんびばれんす⑨
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花ちゃんに付き添う形で僕たちは生徒会室の前まで来ていた。
ちなみにあまり大勢で押しかけるのもあれなので女性陣には先に帰ってもらった。
「で、どうすんの?」
遠巻きに生徒会室の様子をうかがう花ちゃんの後ろから寧斗が尋ねる。
「もうこの際正直にぶっちゃけるしかないと思ってるわ」
そうは言う花ちゃんだが若干顔が引きつっている。
生徒会室の扉に手をかけたところで花ちゃんが動かなくなる。
「……い、行かないの?」
相当な葛藤がなされているのだろう……。僕が声をかけたものの沈黙し小刻みに震えている。
「僕たちも一緒に行こうか?」
僕の一言に震えが若干おさまった…気がする。
「……いいの?」
「ま、まぁ見守ることぐらいしかできないけど」
ふぅ…と一息ついてから、「いてくれるだけで心強いわよ」と何かを決心した花ちゃん。
がらりと生徒会室の入り口を開けて僕たちは中に入った。
「会長。お疲れ様です。なんだか大変ですね……いろいろと……」
鋭い切れ長の目つきにきっちりと分けた七三の男子生徒がこちらに気づいて声をかけてきた。
僕や寧斗と同じ2年生で学園の中で何度か見かけたことがあったので知ってはいた。
この人がたしか次期生徒会長候補の城戸さんだったはず。
城戸さん以外にも真面目そうな雰囲気の生徒が数名。生徒会室で放課後の業務を行っていたようだ。
「あ、ああ……そうだな」
緊張からか、いつもの態度で接しようとしてしまう花ちゃん。
けれどすぐに我に返ったように両手でバチンと頬を叩いて背筋を伸ばす。
「そのことで皆に話しておきたいことがあるの」
「会長……?」
僕たちはただ聞いていた。ゴシップの内容に一部偽りはあるが花ちゃんの学園での姿は本来の性格を隠していたという告発を。
生徒会のメンバーはただただ驚いている様子だった。
花ちゃんの告発が終わると少しの間生徒会室が沈黙に包まれたが書記と思われる眼鏡の女の子が口を開いた。
「正直かなり驚きましたが私は今まで通り会長についていきます」
きっと打ち明けるのにも相当勇気が必要だったと思いますし、と会長の気持ちを汲んでか混乱の中にあるが受け止めてくれたようだ。
「まぁ、結構衝撃でしたけど別にそれで会長のことを敬遠するような付き合いの長さじゃないですし」
城戸くんがクイっと眼鏡を正しながら胸を張ってそう言った。
「まぁ慣れるまでは少し時間を要しそうですけどね」
少し照れながら話す城戸君とその他の生徒会メンバー。
「あ、あなた達……」
そう言うとクルリと背を向けて花ちゃんが肩を震わせ出した。
「だ、大丈夫? 花ちゃん」
心配になって声をかける。
「見ないで頂戴ね、今とてもじゃないけど人に見せられない顔してるから……!!」
寧斗と顔を見合わせて和解が得られたことに一安心する。
花ちゃんが泣き止みそうにもなかったので生徒会メンバーに挨拶してから僕たちは硬直して動かなくなった花ちゃんの手を引きながら下校した。
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商店街まで連れてきたところで徐々にこちらの世界に帰って来た花ちゃんとお肉屋さんの前のベンチで休憩をすることに。
先ほどより口数は増えてきたが時折涙を堪えているのかプルプルと若干震えたかと思うと下唇を突き出して上を向いている……。
「ううう……。あたしは果報者だわ」
広い商店街でやや野太い花ちゃんの嗚咽が木霊する。
「ま、まあ唐揚げでも食べて落ち着こうよ」
肉屋さんで買ったワンパック唐揚げを花ちゃんに差し出す。
「……あら、美味しいじゃない」
驚いたように唐揚げを頬張りながらもう一つ催促してきた。
「でもよかったな。悩みの種がひとつ消えたじゃねえか」
寧斗がそんなことを言いながら最後の一つの唐揚げをひょいっと奪い去り口に放り込んだ。
「あっ! 僕の唐揚げ!」
最後の一つを楽しみにとっておいたのに……
「そうね。とりあえず今日のところは帰りましょう、我らがマイホームへ」
「いやいや僕んちだし、なんならショートステイだし」
「そういえば私居候だったわね、居心地がいいからつい」
花ちゃんが冗談かホントかわからないようなことを言って茶化す。
「はぁ……楽しかったな。桃鉄に明け暮れたあの日々は」
寧斗が懐かしむように言う。
「私もショートステイは今日までにして、そろそろ実家に帰ってみようかしらね。えっちゃんに聞いたんだけど父さんが最近私の話ばっかりしてるらしいから」
花ちゃん曰く、その状態だと寂しさが勝っていて帰宅時にさほど怒らないから狙い目なのだという。
「狙い目……って、えっ!? 今回が初の家出じゃないの!?」
「しょっちゅうよ、しょっちゅう」
衝撃の事実にあっけらかんと答える花ちゃん。
「といってもまぁ、こんだけ長期に家出したのは初めてだけどね」
「これまでの家出ではどこで過ごしてたんだ?」
寧斗がふと僕も気になったことを聞いてくれた。
花ちゃんが言うには家の敷地内に離れがあるからそこに面白がった姉二人と引き籠るらしい。
「うらやましいことこの上ないね、それ」
つい本心が漏れてしまう。
「楽しいわよ。決起集会なんていって紅茶とか甘いお菓子とかひたすら食べるのよ」
それぞれお気に入りにパジャマでパーティーに洒落込むらしい。…正直混ざりたい。
そんな雑談をしているうちに分岐点についたため寧斗、花ちゃんと別れた。
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家に帰ってきて静まり返った空間で適当に夕食を済ます。
置き時計の秒針が進む音だけが浮き彫りとなって聞こえてくる。
「はぁ、いないならいないでなんとなく落ち着かないんだよなぁ」
翌日に起こる波乱をまだ知らない僕はそんなことをぼやくのだった。
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---翌日。
いつも通りのメンツ登校すると、なんだか学園全体が騒がしい。
「な、なんか皆そわそわしてますね」
学園の異変に気付いた御手洗さんが少しおびえたように話す。
「生徒会選挙前日だからかしら?」
例年話題にはなるらしいがそれにしても花ちゃん曰く今日の雰囲気は明らかに異常だという。
その異常の正体に気づくのにそこまで時間はかからなかった。
校門を通り過ぎて昇降口の見えるところでそれは嫌でも視界に飛び込んできた。
「ぶっ……!! お、おいなんだよあれ!」
缶ジュースを飲んでいた寧斗が思わず吹き出してしまう。
”次期生徒会長!! 立華美咲に清き一票を!!”
とても素通りはできないほどの巨大な文字で書かれた存在感のある垂れ幕がぶら下がっていた……。
「随分と思い切ったことするのね、あのこ」
ちょっと引いてる表情で花ちゃんがつぶやいた。
「さすがに花ちゃんも知ってるんだね。立華さんのこと」
「ええ、有名人ですもの彼女」とさも当然のように答える。
転校してきた僕たちがこの短期間でキャパ越えといっても過言でないほど味わった彼女との関りから容易に想像はつく。
「やたらと楽と寧斗につっかかってくるんだぞあいつ」
と一番突っかかられている絵入さんが言う。
納涼祭の一件以来少しおとなしかったと思った矢先にこれである。
「まためんどくさいことになりそうだな……」
寧斗が気怠そうにみんなが思ってるであろうことを言った。
「やっぱり理事長の娘というコネクションの力でどうにかされちゃうんでしょうか……」
御手洗さんが心底不安そうに花ちゃんに尋ねる。
「うーん、さすがに生徒会選挙だし全校生徒の投票によるものだからそういうことは難しいと思うわよ」
まぁ城戸ちゃんが辞退でもしない限り大丈夫よ!と、
よほど後輩に信頼を置いているのかエッヘンと胸を張って答える花ちゃん。
「でも垂れ幕の横に単独出馬って書いてあるぞ」
「「「「えっ?」」」」
絵入さんの恐ろしい一言にその場の他4人の思考が停止した。




