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【第4話】ぼーいずびーあんびばれんす⑧


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「今日はニューフェイスがいるな」


 西園さんが眠たそうにコーヒーを啜りながらつぶやく。


「皆さんもコーヒーです。どおぞー♪」


美多さんがいつも通りマイペースな感じで淹れたてのコーヒーを僕たちに差し出す。


「ど、どうも」

今一つ反応に困っている様子の花ちゃん。


「君はたしか特待生枠の西園くんだったかな?」


「ん? 私を知ってるなんて珍しいな。この教室にしか出入りしてないから一般生徒は名前すら知らないのに」


全校生徒の名前を把握している花ちゃんにとって西園さんは逆に有名なのかもしれない。


「西園さん、美多さん。紹介が遅くなったけどこちら花道さん。立華学院の生徒会長ね」


「えっ、生徒会長さんだったんですか!?」

どんだけ普段ここにこもっているのだろうか。二人とも花ちゃんを知らなかった様子だった。


「……」


 それにしても花ちゃんが畏まりすぎていまいち相談事に踏み出せない。


「花ちゃんこの二人には多分ばれても大丈夫だよ」

耳打ちでそう伝える。


「えっ!? そうなの?」

というか花ちゃんとこれから相談事をするのに実態を知ってもらわないとここに逃げ込んだ意味がない。


「でもこういうのっていざ伝えると思うとなかなか勇気が要るから……」


「あっ、肩にカナブン」

「いやあああああああああ!!!(花)」

「のわあああああああああ!!!(西)」

「ひええええええええええ!!!(美)」


人の気のない仮設科学実験室に3人の乙女の絶叫が木霊した。


「ごめん、嘘だけども」

実際にカナブンはいないがこうすることが手っ取り早いと判断した。


「ちょっと! もう! ひどいじゃないのそんなタイムリーなフェイント!」

「いててて! だって埒が明かないんだもの!」

涙目の花ちゃんに強めにべしべしと肩をたたかれる。

すかさず実験室コンビに詳細を打ち明ける。


「まぁそういうことで俺たちの新メンバーだ。よろしくな」

すでに既知の寧斗がそういって花ちゃんを前面に押し出す。


「はあぁ、びっくりしてシャットダウンするかと思いましたよ……」

美多さんがアンドロイドジョークを交えながら話す。


「君たちの周りはホントに変わった人が多いな」

若干呆れた目で西園さんもぼやく。


「さっそくバレちゃったけど、いろいろ事情があってこんな感じなのよ。どうぞよろしくね」

ひとしきり大声を出したためかそれぞれの緊張感はだいぶ薄れてしまったようだ。


「そういえば美多さん……であってるわよね?」


「あ、はい! 美多です!」

美多さんが元気良く返事をする。


「あたし全校生徒のフルネームと顔を把握してるはずなんだけど美多さんのこと知らなかったのよ。最近転校してきたとかそういったことあるかしら?」

申し訳なさそうに花ちゃんが尋ねる。それもそのはず、美多さんは西園さん作りだしたアンドロイドだし。


「ア、アンドロイド……?」

同じ人間にしか見えないわね、と目を丸くする花ちゃん。


「美多は生徒として登録されてないからな。バレるとそれはそれで問題になりそうだからな」


「こないだ商店街で腕が取れた時は心臓が止まるかと思いましたよ」

まぁ私にあるの心臓じゃなくてコアなんですけど、と茶化す美多さん。


「危機感なさすぎだろ」

思わずつっこむ寧斗。


「手品だって言ったら総菜屋のおばさん喜んでたけどな」

ずずずっとコーヒーを啜りながら話すに西園さん。


 まあこんだけ生き生きと動く美多さんを見たらとてもじゃないがアンドロイドだとは誰も疑わないだろう。

仮設科学実験室のメンバーの紹介も終わったところで西園さんが辺りを見回して言った。


「そういえば今日はあの変なのはいないのか」

変なのとは言わずもがな絵入さんのことだろう。


「変なのはおっきいトンボに指を噛まれて御手洗さんと保健室に行ったよ」

消毒して絆創膏貼るくらいだしそろそろこちらに来そうな気もするが。


「相変わらずわけのわからんことをやってるんだな……」

まぁいつも通りそうでなによりだ、と西園さんが一人でうなずいていた。


噂をすればなんとやら…ガラリと実験室の扉が開いて絵入さんと御手洗さんが入って来た。


……トンボに噛まれた方の手が包帯でぐるぐる巻きになっている。


「ど、どうしたんですかその手!?」

普通に心配した美多さんがめちゃくちゃ驚いている。


「トンボに噛まれただけなのに大げさな……」

あまり過剰に反応すると彼女の思うつぼなので塩対応に徹する。しかもよく見ると包帯じゃなくてトイレットペーパーだ。


「トイレから出てきたらこんなことになってて……」

なぜか御手洗さんが申し訳なさそうにしている。目を離した隙にやられたという監督不足責任感でもあるのだろうか。


「おいおい備品の無駄遣いすんじゃねぇよ」

寧斗が呆れながら注意する。


「ボケたつもりだったんだが……」

ちゃんと最後まで使うから、と弁明をすると絵入さんは巻き付けたトイレットペーパーをきれいにたたんでポケットにしまった。


 おなじみのメンバーが揃ったところで御手洗さんにも事情を説明した。

最初は困ったような反応を見せていたが絵入さんを含め寧斗と僕があまりにも自然体でいたので頑張って受容しようと努めているようだった。

そんなこんなでちょっと乱暴だったがそれぞれの自己紹介が終わり、花ちゃんの相談の本題に入ることにした。


「相談っていうのは紛れもないあの過激なゴシップのことなんだけど……」


 何者かによって学園のいたるところに貼りだされたあの写真のことだ。

悪質ないたずらだが効果は抜群だったようで今日一日で学園全体を賑わす噂となってしまっている。


 張り紙自体は教師を主体に全校生徒で朝の清掃の時間にきれいさっぱり撤去されたが、携帯で写真を撮った生徒もたくさんいたため未だに噂でもちきりになっている。

朝のHRでそれぞれのクラスの担任から注意喚起がなされたが犯人はいまだにわかっていない。


「もちろん生徒会のメンバーにも情報がいっちゃってねぇ……気まずいったらないのよ」

そういって深いため息をつく花ちゃん。


「いっそのこと打ち明けちゃおうとも思ったけど勇気が出なくてね、いつも通りの会長キャラでごまかしちゃったわけ」

時期的によろしくないというのもあったらしい。

間もなく次期生徒会選挙もあるためあまり問題を起こしたくないとのことだ。


「そういえば生徒会長候補って誰だっけ?」

ふと疑問に思ったことを聞いてみる。


「城戸君よ。特徴でわかると思うけどきっちり七三で眼鏡の……」

特徴を聞いてみんながその人物にピンと来たようだ……絵入さん以外。


「まあそうはいってもここまで噂になっちゃうと応援演説する身としてはバレようがバレまいが信用が崩れてしまったというところかしらね」

先ほどからため息を頻発する花ちゃん。心なしかどんどん小さくなっていっていくようにすら見える。


「かといってこのまま気まずい環境で生徒会進行するのも……ねぇ」

「そ、そうなのよぉ~」


一度ごまかしちゃってる手前打ち明けづらさは相当なものだと思うけど……。


「えーい! 迷っててもしょうがないわ! いままで一緒に苦楽を共にしてきたメンバーだもの! あたし行くわ!!」

そういって勢いに任せて花ちゃんが仮設科学実験室を飛び出していった。


「だ、大丈夫ですかね? 一人で行っちゃいましたけど」

御手洗さんが心配そうに花ちゃんが出て行った入り口の方を見て言った。


「まあ悩んでいるよりは行動に移せたから良かったんじゃないかなぁ」

僕たちにできることは結果を待つことくらいだ。


……そう思った矢先に仮設科学実験室の扉が勢いよく開かれた。


「ああああぁん! やっぱり一人じゃ怖くてだめぇ~!!」


「……」

なんとなく想像はついた展開だったが、先行きが暗そうで僕たちはため息をつくしかなかった……。





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