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【第2話】たーみねーしょん 余談


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 寧斗の廃工場暴走モード突入事件から数日後の放課後・・・


絵入さん、寧斗と学校帰りに商店街に立ち寄っていた。


「ちょっとおつかいしてもいいか?」


絵入さんが木屋取町のきらめき商店街にある激安マニアックスーパー「じゃんぐる」を指さし言う。


「なんか買うのか?」


「夕飯の材料」


寧斗の問いかけに無表情で答える。


「絵入さん料理とかするんだね」


「いや、今日が初だ」


「えっ」


何気なく聞いてみたのだが予想もしない返答がきた。


「どういう心境の変化だよ? 花嫁修業か?」


「ち、ちがう。昨日道代に言われた。自炊の方が節約になるって」


音糸の問いかけになぜか少し慌てたように答える絵入さん。


「道代ぉ?」


明らかに妹かなんかだと思ってる寧斗。

そういえば寧斗は道代さんのことを知らないんだった。

なんて説明すればいいんだろう。自称アンドロイドではあったが。


「んー、細かいことを言えばきりがないが・・・お手伝いのアンドロイドってところかな」


「アンドロイドの割りにはずいぶんと和風な名前なんだな・・・」


きっと正式名称があるんだろうけど絵入さんのことだ。その独特なセンスで勝手に命名したに違いない。


「なんか製品名の自己紹介はされたが覚えられなさそうだったから私が命名した」


・・・違いなかった。


「暇ならうちで食べてけば?」


先ほどの本人の初めてクッキング発言が気になる。・・・怖いもの見たさ的な意味合いで。

寧斗も僕も特に用事もなかったのでせっかくだからご馳走してもらうことになった。




 絵入さんが何を作るつもりか知らないが、僕は思う。

買い物の段階で大方の成功か否かが決まってくるということを・・・!

あまり見たことのない珍しいフルーツが立ち並ぶ店頭で買い物かごを手に取り店内に進む。

今日はお肉セールの日みたいで店内のあちこちに肉祭!と黄色い用紙に赤字で書かれた張り紙や垂れ幕が設置されていた。


「肉祭だってさ、絵入さん」


「ステーキにしようぜ! ステーキ!」

寧斗が食べ盛りの男子っぽい発言をする。

・・・でもいいなぁステーキ。美味しいし、基本焼くだけだから訳の分からん失敗もないだろうし。


「メニューはもう決めてるから」


 そういって青果売り場に置いてあるバナナを手に取りかごに入れる。

え・・・?バナナってそのまま食うものじゃないの?

バナナを使った料理って日本食で思い浮かばないんだけど、いったい何を作るつもりでいるんだろうか・・・。


「そのバナナ料理すんの?」


僕が考えを巡らせていると単刀直入に疑問に思った寧斗が絵入さんに尋ねた。


「違う、これは私のおやつだ」


なんだ、おやつか・・・。


 いざ自分たちが食べるとなると食材選びには慎重になってしまう。

シェフが絵入さんという時点で危険な予感しかしないのも仕方ないと思う。

変な食材を買おうとしてたら止めなければ最終的に被害を受けるのは僕と寧斗なのだから。


 そして何を作るのかは一向に教えてくれないのも不安を助長させた。

「内緒、秘密」の二点張りである。


材料から推測するしかない・・・。そう思った矢先に絵入さんはカレールーを手に取ってかごにぶち込んだ。


「カレーだな・・・。」

「カレーだね・・・。」


寧斗と僕で絵入さんに気付かれないように少し後方に下がった場所で耳打ちをしあった。


 人参、ジャガイモ、玉ねぎ、豚肉と時々カレールーの裏面を確認しながら順不同に材料をそろえていく絵入さん。


 一度あったトラブルといえばスパイスコーナーで(カレーの隠し味に!)と書いてあるものをホール単位で絵入さんがかたっぱしから買い物かごにぶち込もうとしたことくらいだ。

 市販のカレールー自体にスパイスは調合されているので極悪改変されてはまずいとおもった僕らは全力でこれを阻止。

 絵入さんのことだから分量を考えずにぶち込んで悲惨な結末を辿るであろうことは目に見えて予測できる。

 最初は「気が散る、あっち行って」と単独行動に出ようとした絵入さんだったが、スパイス系は入れすぎると死ぬこともあると脅かしたら不満そうではあったが僕たちを邪険には扱わなくなった。

 脅かしではあったが実際に絵入さんがかごにぶち込んでいたナツメグなんかは過剰摂取すると重大な毒性を発揮することがあるため間違ってはいない。


・・・・まぁ生で摂取した場合だが。


 話が脱線したが、レジに並ぼうとしたときに絵入さんが急に何かを思い出したようで買い物かごを寧斗に託して「ちょっと行ってくる」といって足早に鮮魚コーナーに向かいだした。


「抜戸、なんだか嫌な予感がするから尾行してくれないか?」


「奇遇だね僕も同じこと考えてたよ」


 絵入さんの奇行を阻止するため本人の後についていくと鮮魚コーナーのイカをしばらく凝視していた。

5分ほどたってもその場から動く気配がなかったのでしびれを切らして近づいてみた。


「ねぇ・・・何してんの?」


「イカを見てる」


「なんでイカを見てんのさ・・・」


「アニサキスがいるか確認してた」


 さも魔王に立ち向かう勇者並みに決意を秘めたような面持ちで向かった先がこれか・・・。


「いたとして どうするつもり アニサキス」


「五七五だ」

今日一感動したような表情を浮かべる絵入さん。うん。今日も変な人だ。


「ほらいくよ、寧斗が退屈で死んじゃう」


「ま、まってくれ。買いたいものがあったんだ」


そういって今度手にしたのは釜ゆでしらすのパックだった。


「しらすぅ? 何に使うの?」


まさかカレーに入れるつもりなのだろうか・・・。


「いや、これは普通に食べる。なんだか急に豊富なカルシュームを取りたくなって」


そんな急に体がカルシウムを欲することってあるんだろうか・・・。


「まぁ・・・おいしいよね、しらす」


たまに無性に食べたくなる気持ちは少しわかるので特に言及はしなかった。

いくつかのしらすのパックを揺さぶって品定めしている絵入さん。


「・・・カニだ」


「えっ」


ボソッとしたつぶやきに思わず聞き返した。

心なしか口角が上がってにやけているようにも見える。


「見ろ楽、カニが混じってる」


「ああ、ほんとだ。釜ゆでするときに他の魚とか甲殻類も混じっちゃうんだよね、確か」


僕も別のしらすのパックを手に取り揺さぶってみる。


「あ、アジだ」


「残念、星レート1」


「え、やめてくれる? 僕がハズレ引いたみたいになるじゃない」


私のカニの方がレアリティは上だと絵入さん基準の勝手なレートをつけられてむきになっている自分がいた。


しばらくその場でしらすのパックを揺さぶる男女の図。とても健全な高校生とは思えない。


我を忘れてレアしらすを探しているとふと背後からドスの効いた怒りの声が聞こえてきた。


「おおぉい、どんだけ待たせるつもりなんだおまえら・・・!」


「あ、寧斗。一緒にタツノオトシゴを探そうよ」


完全にレアしらす探しに洗脳された僕は寧斗の勧誘を始めていた。


「探そうよじゃねえよ! 日が暮れちまうじゃねーか!」


これ以上寧斗を怒らせるわけにはいかない。

絵入さんを引き連れ会計を済ませ「じゃんぐる」を後にした。

もちろん釜茹でしらすも1パック買って。


「あ、失敗した。喉乾いてたんだった」


買い物の後に寧斗がジュースを買い忘れたのを嘆いていた。


「あそこに自販機あるけど寄ってく?」


「いや、我慢するわ。スーパーだと自販機より安いから買ってもいいかなと思ってたんだけど」


無駄遣いをしない方針の寧斗はそういって自販機の誘惑には負けずに再び歩き出した。


「飴みたいなのはあるぞ」


そういっておもむろに絵入さんがポッケから白い個装の飴のようなものを取り出して僕と寧斗にあげた。


「これ何の飴?」


僕ものどが渇いていたので特に確認もせずに寧斗より先に個装を破って口に放り込む。


「ん・・・。なんだこれぇ・・・。変な脂っこさがあるんだけどちょっと甘い気も・・・」


寧斗が一緒にもらっていた飴のような物体を確認する。


「絵入・・・これ牛脂じゃねえか!」


「ぶーーーーーっ!!!」


吐き出された牛脂は商店街の路地に叩きつけられぶるんっ、と脈打った。


「とんでもないもの舐めさせてくれたなぁ!?」


「私は飴なんて一言も言ってないぞ」


確かに飴みたいなものとは言っていたが、確認せずに口に放り込んだ僕にも非があるのだろうか。


「人に牛脂を食わすやつがあるか!」


寧斗が僕の吐き出した牛脂をポケットティッシュで包んで近くのくずかごに捨ててくれた。


「絵入、この牛脂何に使うんだ?」


「食材を炒めるときに使うと味に深みが出るって道代が教えてくれたんだ」


道代さんのアドバイスを受けて何個かもらってきてたらしい。


「道代さんに君の悪行を告げ口してやるからな」


僕はいまだに濃厚な牛の旨味が残る口で絵入さんに悪態をついた。


・・・シェフ絵入地獄のクッキング編へ続く?

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