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【第2話】たーみねーしょん⑦


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(以下、ヤンキーその1の回想)


 自分たちより一回り小さい男が出てきて訳の分からないことを言い出した。


俺たちが手も足も出ないというのにいったい何を考えているのか。


何か格闘技でもしているのかと思ったが恐怖で足を震わせているところを見るとどうもそうではなさそうだ。


ただ友達だってだけで特に策があるわけでもない。


「おいバカ!無茶だ!!怪我だけじゃすまねーぞ!!」


仲間たちも必死になって止めるが震えながらも歩みを止める気配はなかった。


先ほどから呼びかけているが肝心の多見の方に反応も見られない。


・・・それどころか迎撃が始まった。


一撃目はギリギリのところで避けたようだが、容赦のない追撃が無残にも男の横腹に直撃した。


声にならない声で呻く。


 後ろで心配そうに見守っていたもう一人の女も歩み寄りそうになったが二の舞になるだけだと思って手で制した。


このままぶっ倒れて状況は変わらないのかと悲観したが・・・信じられないことが起きた。


友達と名乗った男は最後の気力を振り絞り多見の顔面にパンチを入れやがった。


もちろんパンチ自体はフラフラの状態で繰り出したため威力は無いに等しい。


ほぼ同時にクロスカウンターのような形で多見のパンチも男に当たり、男はその場に倒れた。


「・・・抜戸?」


衝撃を受けて一瞬我に返ったのか、多見が倒れた抜戸という男を見おろし声を出した。


「楽!」


もう一人の女がぶっ倒れた抜戸という男のもとに駆け寄る。


「うっ、白目向いてる」

指で突っついて反応を確かめているようだ。


「絵入、なんでお前らがここに・・・?」


「建物が崩れる、こっから出ないと」


 今一つ状況が呑み込めていない多見だったが周囲を見渡し崩れそうになっていることに気付く。

俺たちから妹を引き取ると抜戸とともに両脇に抱え込み外に出た。

 すぐ後を追うように俺たちも気絶した仲間を連れて避難する。


 避難が終わったタイミングくらいで廃工場は音を立てて崩れた。

・・・もう少し遅かったら生き埋めになっていたかもしれない。

人が集まってくる前に俺たちは工場から離れた路地裏で多見たちに謝罪しその場は解散となった。

多見は激高するわけでもなく自分の暴走を抑えられず友達を傷つけたことに放心した様子で立ち尽くしていた・・・。(回想終了)


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 遠くの方で音が聞こえる。


 パンの耳がどうのこうの、窒息がどうのこうの。


 そして徐々に強くなる左わき腹と額の痛み。


「気失ってんだからそんな乾いたもん詰め込んだら死んじまうって!」


「大丈夫、ドラゴンボールの仙豆と一緒」


口に次々とパサパサした何かを詰め込まれていく。


「・・・・・ぅぐぇっ」


次第に呼吸まで苦しくなりむせる。


「ぶほっ!!げほっ!!」


「ほらな生き返った」


「・・・苦しくてむせてるだけだろ」

ぼやけた視界で心配そうに顔を覗き込む人物が二人。


「よく無事だったな」

心なしか安堵したような表情を見せる絵入さん。


「いま危うく君によって無事じゃなくなるところだったけどね・・・」


体のそこかしこが痛むまま、少女の顔を見て少しずつ状況を思い出してきた。


「あ! そういえば恵斗ちゃんは!?」


辺りを見渡して恵斗ちゃんがいないことに気付いた僕の問いに音糸が答える。


「一足先に家に連れて帰ったんだ。帰る途中で目は覚ましていたから無事だ」


いいながらも寧斗は涙目になりながら申し訳なさそうに顔を伏せている。

いろいろ言いたいことはあったけど、小さくため息をついた後に音糸に思ったままのことを伝える。


「音糸、ちょっと沸点低すぎ」


「抜戸、絵入も・・・本当にすまん!!」

俯いて話す声は変わらず震えている。


「こんな乱暴なやつが友達なんて迷惑だよな・・・。勝手で申し訳ないがお前らには今後関わらないようにすっからさ・・・」

おなじクラスだから顔を合わすことにはなっちまうけど、と今にも土下座をしそうな体勢でそんなことを言い出した。


「・・・・・」


毎度毎度この調子でブチ切れられるたびに体を張って止めていたら、僕は卒業前に他界してしまう。

でもうまく言い表せないがここで寧斗と疎遠になるのはなんか違う気がした。

あんまり当たった試しはないが、僕の直感はそう言っている。


「ほんとに勝手なやつだな。自分一人でどんどん話を進めんなよ」


絵入さんが体育座りでこちらを見つめている。


「僕たち友達になってまだ数日しか経ってないんだぞ?お互いのこともまだそんなに理解できてない」

倒れた時に口の中を切ったのか一言二言話すたびに痛みが走りほんのり血の味がする。


「キレてあそこまで周りが見えなくなったのには正直驚いたけど、それだけ恵斗ちゃんが心配だったんだろ?」


 恵斗ちゃんが無事だったことをひとまず喜ぼう、と僕より一回りも二回りも大きな暴れん坊に伝えると嗚咽とともに彼の下の地面に大粒の水滴が落ちた。


「けど皆が危険に曝されたことは本当に反省してくれ。もう少し遅かったら僕たちだけじゃなく恵斗ちゃんも危なかったんだ」


鼻をすすりながら何度もうなずく寧斗。


「精進しろよ」

絵入さんがどの立場から言ってるのかわからない場違いな助言をしていた。


実を言うと僕は音糸に顔を殴られそうになった時に咄嗟にビビって顔を伏せてしまった。

それが幸いしてか顔面モロでなく堅い額でパンチを受けたのであった。

まぁ、それまでのダメージと軽い脳震盪もあって気は失ったけど・・・。


「とりあえずもうちょっと友達を続けてみようよ」

ぼろぼろの体でそんな提案をしてみた。


「・・・私も」

続けてやってもいい、とボソッと加わる絵入さん。


「・・・ははっ、変なやつらだなお前ら」


ぐしゃぐしゃの顔だったけどどこか嬉しそうな寧斗に言われ、僕は絵入さんを見て「変なやつって言われてるよ絵入さん」と伝えた。


「複数形だから楽もだぞ」とぐうの音も出ない反応が返ってきたのだった。



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