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ジャン負け村人転生しようぜ  作者: リア
最終章・神話の決戦
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魔神の最期

〜アビスブルク郊外〜



「はっ!」


「せやっ!」


岩石槍(ストーンランス)!」


電撃球体(サンダーボール)



 四人がかりで魔神を追い詰める。


 ときどき周囲爆散をしてロキやシャルルを遠ざけるものの、フランとアイリスの魔法には差し支えない。


 むしろそれで隙を作り、魔法の被弾を増やしている。


 とはいえ、ロキとシャルルの攻撃は、一撃一撃が必殺。当たった瞬間に、衝撃を破壊しなくてはならない。


 その場合でも、魔法の被弾は増える。


 どちらにせよ、浅い傷は増える一方。回復も、隙を作るため多用できない。



「ちぃっ」



 魔神は舌打ちをし、地面に手をついた。


 諦めた、というわけではない。


 魔神の目に諦念はなかった。それどころか、ロキにも負けない炎が、目の奥で燃えている。



「破壊っ!」



 地面が崩落した。飛行さえ可能なロキとシャルルを、生き埋めに出来るなどとは思っていない。


 戦いの場を狭めることで、安地からの魔法攻撃を防ごうというのだ。


 だがしかし。四人の中には地属性魔法のエキスパートがいる。



地動割(クラック)、逆バージョン!」



 地面の裂け目を、逆に閉じた。いささか無理やりな魔法である。が、おかげで魔神に隙が出来た。



「これもダメかっ」


「しゃらっ!」


「貫通!」



 致命傷の衝撃こそ消したものの、魔神は深い傷を負った。一旦周囲を爆散し、回復を試みるが。



「ロキ君! リリちゃんが来たわ!」


「っしゃ!」


「ぐっ?!」



 周囲を爆散することは成功したものの、遠ざかったのはシャルルのみ。


 ロキは黄金の炎である程度は身を守りつつ、捨て身のような攻撃を続けていた。皮膚がボロボロになるのにも関わらず。



「シャル!」


「はいはいっ!」



 爆散が終わったと同時に、ロキとシャルルがスイッチ。


 ロキはリリの元で回復を受ける。



「回復なんてさせないよ」


「おのれっ!」



 魔神は歯噛みし、シャルルの刺突を躱す。



「血の効果は切れたはずっ」



 自身の周囲を爆散。これでようやく回復が出来ると思いきや。



「もう! 最後の切り札を簡単に使わせてくれて!」


「なっ! 霧化は使えないはずではなかったのかい?!」



 シャルルはペンダントを口に含んでいた。


 小さなガラス瓶のペンダント。その中の血により、数秒ではあるが霧化が可能になったのである。


 そしてシャルルは、今度こそ回復しようとしていた魔神の横っ腹に風穴を開ける。



「がぁっ!」


液状化(リキューファクション)!」



 フランの魔法が、よろめく魔神の足を取った。


 普段なら、地面を破壊してどうとでもするような状況である。


 が、それより早く次の一撃が迫っていた。



雷光放電(ライトニングボルト)!」



 魔神はその電撃を破壊することで精一杯。動くためには、地面を破壊するだけの時間が必要である。



「はぁぁぁっ!」



 その時間をロキが与えるはずもない。


 リリにより完全回復したロキは、黄金の炎を纏った拳を連打した。


 神速かつ不可避の連撃。衝撃の破壊こそ出来ても、反撃などできようはずもない。



「貫通!」



 身動きさえ取れない魔神へ、無慈悲な一撃。


 シャルルのスキルが、魔神の頭蓋骨を穿つ。



「ぐぉああああっ!」



 魔神の断末魔が響く。


 即死ではなく、死に至るまでに一瞬の間があった。


 なりふり構っていられない魔神はその間、ロキの殴打を無視して再生を行使した。



「燃え尽きろっ」



 しかし、再生したそばから、ロキの炎によって瀕死に追い込まれる。



「がああああっ! ああああっ!」



 地獄のような体験であろう。瀕死状態がいつまでも続くのである。



「ロキっ!」


「っ、ああ!」



 勝利へ執着する魔神は、生きている限りはロキたちを打倒しようとするだろう。


 このままでは埒が明かない。



「これで最後だ!」



 ロキが魔神の顔面に拳を打つ。顔が半分ほど凹み、残り数ミリで死に至るという瞬間、魔神は再生した。


 その硬直時間の間に、シャルルが動く。


 魔神の脳天を、シャルルの剣が貫いた。



「これで終わりだよっ! 凍結(フローズン)!」



 差し込んだ剣から冷気が漏れ出す。


 その冷気は魔神の脳を凍てつかせ、再生の判断を下させなかった。



「はぁ。はぁ」



 ロキとシャルルの荒い息がやけに響く。



「神を害するなんざ百年早い」



 魔神は息絶えていた。



「さすがね」


「うちら要らんかったな」


「そんなことはありません。皆様、素晴らしいご活躍でした」



 ロキとシャルルも魔神の死体から手を離した。



「ああ。ようやくこれで終わりだ」


「リリちゃん疲れたよー。癒してー」


「うちも頼むわ」


「うふふ。お姉さんもお願いね?」


「はい。任せてください」



 張り詰めていた空気が弛緩する。



「はぁ。まったく、しぶといにも程があるだろう」


「ほんまやわ。どんだけ勝ちたいねんって」


「しかもこの戦いが趣味みたいなものって、ふざけるのも大概にしてよって感じだよね」


「趣味と言うよりは生きがいね。どちらも迷惑なことに変わりはないけれど」


「はい。魔神によって亡くなった方の数は数え切れません」



 リリは顔を俯けた。


 周りを見渡せば、建物が連立していたはずの大都市。それが今となっては、砂漠と見間違えるばかりの更地と化していた。


 モンテブルクとオルタブルクの住人こそ無事だが、あとは散々な結果である。



「この状況、これからどうすればいいんだ?」


「確かに、詰んでるよねこれ。荷物も王城と一緒に吹っ飛んじゃったし」


「キャンプ用品もないんかぁ。辛いなぁ」


「野宿もままならないわ」


「私たちはロキ様やシャルル様のご実家でお世話になることが出来ますが、他の方々が心配です」


「家も家財道具も一切無しだからな。命あっての物種とは言うが、命だけで放り出されても困る」


「可哀想だよね。大都市二つ分の人が路頭に迷うなんて」


「魔物の数が少ないのが、せめてもの救いかしら」


「正真正銘大災害やね、魔神って」


「本当です」



 皆が揃って頷いた。



「皆様、先にロキ様方のご実家へ向かわれてはどうでしょうか」


「先にって、リリちゃんはどうするの?」


「私はこの災害で怪我をされた方の治療へ向かいます」


「なるほどね。リリちゃんらしいわ」


「お姉さんも付き合うわ。リリちゃんだけでは、大都市間の移動に何時間かかるか分からないもの」


「あ、ほなうちも手伝うで。仮住居くらいは作れるし。リリちゃんに回復してもろたおかげで魔力もばっちしや」


「じゃあ私も。氷は溶けたら水になるし。飲み水の確保は重要だもんね」


「仕方ない。俺も行ってやろう。氷を溶かす必要があるからな」



 なんだかんだと理由立てしつつ、五人は仮設住宅の設営に赴くこととなった。



「それより、まずは着替えたいなぁ。ボロボロやで」


「そうね。シャルちゃんのドレスもすっかりミニになって」


「風が吹いたら見えてしまいますよ」


「ぅえっ?!」


「はぁ。お前らも人のことは言えない格好だろうが。俺もだが」



 魔神の死体を放置したまま。



〜翌日・モンテブルク〜



 五人は、薄汚れてしまったドレスをクルス村から持ってきた動きやすい服装に着替えていた。


 額に滲んだ汗を拭う。



「はー。やっと終わったで」


「丸一日かかるとは思わなかったわ」


「リリちゃんがいなかったら倒れてたよ」


「まったくだ。これだけの人数の世話をするくらいなら、魔神にもっと間引いてもらえばよかったか」


「ロキ様、冗談だとしても良くない発言です」


「はいはい」



 丸一日かかって、一定の生活を与えるくらいのことは出来た。


 土で出来た家に飲み水さえあれば、しぶとい人間のことである。またすぐに上手く生活を営むであろう。



「ん? なんやあれ」


「フランちゃん? どうかしたのかしら?」


「ちょっとやめてよ。また変なフラグ立てるの」


「これ以上は勘弁してくれ。精神的にヘトヘトだ」



 そんな抗議も虚しいだけ。発見してしまったものは仕方がない。



「空中に浮かぶあれ、ですよね。なんでしょうか?」


「黒い円? よくわかんないね」


「あれはっ」



 その未確認飛行物体を全員が認識したとき、ロキの顔色だけが変わった。



「何か知ってるの?」


「ああ。あれは神っ?!」



 言いかけたとき。


 ロキが赤い粒子と化した。



「へ?」



 間抜けな声は誰のものか。


 それは知れないが、空中の黒い円から出てきた人物には見覚えがある。



「魔神やて?!」


「嘘よ! 昨日殺したはずでしょう!」


「リリちゃん! ロキを早く!」


「は、はいっ! 蘇生(リザレクション)!」



 にわかに慌ただしくなる。


 が、魔神は落ち着いた様子で、円から飛び降り、ふわりと着地した。



「私が時間を稼ぐよ。本当は温存したいんだけどね」



 蘇生(リザレクション)の発動には時間がかかる。その時間は、シャルルが囮になるというのだ。


 魔神との戦いが終わったあと、真っ先に補充してもらったペンダントの赤い血液を飲み干す。



「フランちゃん! 援護を!」


「了解や! 岩雪崩(ロックアバランチ)!」



 魔神の周囲へ岩石が降り注ぐ。


 おかげで、魔神からの視線を切ることが容易になった。


 そしてここぞという瞬間、魔神の背後からシャルルが襲いかかった。



「はぁっ!」



 魔神は動かなかった。


 フランたちの目から見てそうだったのである。


 シャルルも、きちんと魔神の後ろ姿を捉えていた。



「えっ」



 だが。


 シャルルが気づいたときには、目の前に魔神の姿はなかった。


 フランの視点からすると、シャルルが一瞬にして、魔神の前に躍り出たように見えた。ともすれば、シャルルの体が魔神を貫通したようにも。


 実際は、シャルルが魔神に触れる寸前、魔神の前後に黒い円が出現し、シャルルがそこを通り抜けたというだけだが。



「悪いけど、君たちを相手取る気は無い」



 魔神はシャルルを無視した。


 シャルルだけではない。フランの魔法もアイリスの魔法も。



「ん、ぐ?」


「ロキ様っ!」



 粒子状に破壊されていたロキの体が元に戻った。



「発動してよかったです。お変わりありませんか?」


「ああ。大丈夫だ。それよりあいつは」



 ロキは起き上がった。それと同時に、魔神と目が合う。



「お前」



 ロキは声をかけた。


 ロキが続きを言うよりも先に、魔神が続ける。



「久しぶりだな、親友」



 ニカッと笑う魔神の結膜は白い。



「いや、ここじゃあロキだったか」



 完全に中身は別人。



「どういうつもりだ」



 それも、天上界にてロキの親友を自称していた彼であった。



「どういうつもりも何も、会いに来たんだ、親友」


「ロキ様、お知り合いですか?」


「ああ」


「もしかして、ロキが昔言ってた天上界の知り合いって」


「こいつだ。外見は違うがな」


「ほな、この人も神様なん?」


「そうだ」


「けれど、様子がおかしいわ」



 魔神の体を乗っ取った親友の彼は、ケタケタと笑い続けている。



「おい。どうしてお前がここにいる。天上界で待っている手筈ではなかったか」


「くくっ。そう睨むなよ。親友を訪ねて人間世界まで降りてきたんだぜ?」


「まったく。天上界にいた頃の俺の目はどれほど節穴だったんだ」



 ロキは彼をキッと睨みつけた。



「こんな害意丸出しのやつにホイホイついて行ったとは」


「勘違いするなよ。天上界の頃は隠していたんだ。くくっ。まさかここまで上手くことが運ぶとは思ってなかったけどな」



 親友の彼は口端を吊り上げて、言う。



「殺しに来たぜ、親友」

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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