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ジャン負け村人転生しようぜ  作者: リア
最終章・神話の決戦
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大都市の争乱

〜モンテブルク〜



 ロキが魔神と戦い、優勢に進めていたとき。彼女らはモンテブルクへ逃げていた。



「ロキ、大丈夫かな」


「大丈夫やって。ロキ君やで?」


「心配よりも先に、私たちに出来ることをしましょう」


「そうね」



 シャルルらの視線の先には、王都での動乱を察知した住民達がパニックに陥っている。



「この人らを避難させな」


「生贄となるのは避けたいですね」


「大いなる瞳にさえいなければ、生贄としての力は持たないはずよ」


「どうしたらいいかな」


「そうやな。まずは、ゲート壊そか」


「物騒ですね」


「ゲートを壊して、かつ追い立てれば避難できるかしら」


「うわ、さらに物騒」


「直してるところで壊すんは申し訳ないけど、緊急事態やしな」


「はい。仕方ないとは思います」


「むしろ壊しやすくて助かるわ」


「いや、まあ、そうなんだけどさ。はぁ。じゃ、壊してくるよ」



 一番速度が出るシャルルがゲートに向かう。


 そこでは、市民が警備の兵士に詰め寄っていた。



「王都が爆破されてんだ! 出せよ!」


「いやしかし、身分調査が終わらないことには」


「使えねえマニュアル野郎だな!」


「いいから出せ! 命より大切なもんがあんのか!」



 シャルルはくれぐれも彼らに瓦礫が当たらないよう、スキルを発動した。



「貫通っ」



 大きな音を立てて、復旧中のゲートが崩落する。


 もちろん、ゲートの外へ向かってだが。


 その破壊工作と、王都の爆破事件との犯人が同一だと判断した民衆は叫び散らし、兵士を押しのけて、崩落したゲートを越えていく。



変拡声波(ラウドスピーカー)



 そこへ、アイリスの魔法が追いうちをかける。



「王都は完全に破壊した! 次はモンテブルクだ! 死にたくなけりゃ逃げ惑え! 俺様を楽しませろ!」



 ドスの効いた変声と、大都市全体に渡るほどの拡声。


 民衆は阿鼻叫喚。圧死する人が出るのではないかというほど、ゲートには人々が集まっている。



「よし、これでええわ。次行こ、っ?!」



 フランの言葉は途中で途切れた。


 モンテブルクへ向かってくる赤い光。ロキの姿を捉えた。ロキが来るということはすなわち。



岩雪崩(ロックアバランチ)!」


「どうしたのですか、フラン様。そちらは王都方面ですが」


「今すぐ撤収や! うちらまで消されてまう!」



 言ったそばから、フランが放った魔法の岩が消されていく。



「っ! 分かったわ。シャルちゃん!」



 人形越しにシャルルへ勧告するアイリス。



「うん、わかった!」



 四人は西へ進み始めた。他の大都市でも避難を進めるつもりである。


 数分遅れて、魔神がモンテブルクに到着した。



「くそっ、頑丈なやつだ」



 ロキは魔神が移動する間も、常に攻撃を浴びせ続けていた。


 が、スピードを緩めることはできても、決定打を与えることは出来ていない。



「くくっ。贄となってもらおうか」



 魔神はロキの攻撃を、少しだけ衝撃を破壊して受けたあと、その硬直時間のうちにモンテブルクを破壊し尽くした。


 ロキは抜かりなく、その視線には入っていない。


 魔神からしてみれば、殴打が常に視覚外から襲ってくるという状況であったのである。常人ならビクつきまくることであろう。



「あ?」



 その恐怖を背負ってでもモンテブルクを破壊した魔神であったが、首を傾げる結果となった。



「せいっ!」


「がっ!」



 あまりの動揺に、ロキの一発を食らってしまった。とはいえ魔神。すぐに衝撃を破壊し、体勢を立て直す。



「贄がいないだって?! ふざけるなっ! 従者の仕業か!」



 魔神は激怒した。


 元々の約束は、彼女らを安全地帯に置いておくというものであった。現に、彼女らは魔神の目が届かぬ場所にいる。



「神の御使い。僕は街の破壊を条件にしたはずだよ」


「ああ。好きに破壊しているじゃないか」



 ロキは攻撃の手を緩めることなく、魔神の確認に答える。



「少し、失望したよ。約束は守ってくれるものだと思っていた」


「守っているだろう」



 魔神は奥歯をギリッと噛んだ。お気に召さないらしい。



「わかったよ。そっちがその気なのなら、僕にも考えがある」



 魔神はロキの攻撃を、衝撃を破壊して受け止めつつ、口角を上げた。



限界破壊(リミットブレイク)


「っ?!」



 魔神のスピードが格段に上がった。ロキをも凌ぐほどである。


 が、魔神はロキに反撃するということもなく、西方、シャルルたちが向かった方向へ向かった。


 ロキは彼女らの居場所など知らないわけであるが、嫌な予感がして、全速力で魔神を追いかけた。



〜オルタブルク〜



「よし、ええ感じや。次の街行こか」


「はい。アレク様、シャルル様を」


「ええ。シャルちゃん、次に行くわ」



 まだ襲来には時間があるだろうと踏み、急ぎつつも焦ることはなく避難を押し進めている四人。


 アイリスたちの元へシャルルも戻ってきた。そして、シャルルは彼女らの背後のものに気づく。



「嘘っ?!」


「どうかしたのですか、シャルル様」


「あ、ヤバっ。お姉さん、一旦建物の影や。路上やと目立ちすぎるわ」


「っ。ええ。わかったわ」



 アイリスも察したらしい。


 彼女の予想より随分早い。



「このまま建物に沿って、次の街まで行こう」


「魔神のスピードが格段に上がっています。急ぎましょう」


「そうやな」


「ちらっと見たけれど、お姉さんには捉えられない速さよ。お姉さんとリリちゃんの目は頼りにならないわ。シャルちゃん、フランちゃん、先導を頼めるかしら」


「うん。任せて」



 あくまで隠密に、かつ速度を上げてすすんで行く。


 この時点で気づくべきであったのだ。


 いつまで経っても街が破壊されないことに。



「よし、もうちょっとで次のま、ちっ!」


「やあ、従者たち」


「お前ら何してる! さっさと逃げる手筈だろうが!」


岩雪崩(ロックアバランチ)!」



 時間稼ぎ程度に、フランが岩を生成。視界だけは遮断する。


 一瞬目があったはずであるが、ちょうどロキが攻撃していたおかげで、瞬殺ということにはならなかった。



「いいから逃げろ! 死にたいのか!」


「仕方ないわ。リリちゃん!」


「はいっ」



 アイリスは魔法で加速し、リリを拾う。



「シャルちゃん! 逃げるで!」


「う、うん!」


「させないよっ」



 ロキからの攻撃を防ぐ合間に、フランを目で追う魔神。


 フランがシャルルほどの速度で動くことが出来れば別だが、このままでは、魔神がロキの攻撃を受け切った瞬間、フランは赤い粒子と化す。



「シャルっ!」


「間に合って!」


岩雪崩(ロックアバランチ)!」


「もう遅いよ! まず一人だ!」



 ロキの殴打を受け切ったあと、次の殴打が襲うまでの間でフランに杖を向ける。



「ここだ!」


「ぐっ?!」



 その魔神を、強襲する者が一人。今まで姿を消していたガラナである。


 下着姿であるが。



「ガラナ! 生きていたのか!」


「どうにかな。城が壊れる瞬間に存在を消していなければ死んでいただろう」



 ともあれ、ようやく魔神に届いた、まともな一撃。


 ガラナの剣は、魔神の腕を切り取った。


 魔神は傷口を押さえ、跪く。



「ぐぅぅ」


「胴を狙ったつもりだったが、躱されたか」


「いいや。大健闘だ。魔神は殺せなかったにしろ、フランは生きている」


「あの獣人、礼くらい言わんのか」


「そう言うな。この魔神はフランにとって、とことん相手が悪い。逃げられるときに逃げておくべきだ」



 フランのスタイルは、短剣で敵の攻撃を流し、魔法で反撃をするというものだ。


 目が合えば終わりの対魔神戦において、相性は最悪と言ってもいい。魔法で視界を防ぐのがせいぜいだろう。


 その点、ガラナは魔神に対して有利だ。姿を消している間は、少なくとも直接的に殺されることはない。魔神が適当に放ったものに当たりさえしなければ。



「あの白い娘はどうした。あの娘ならば奴の裏を取り続けるくらいわけないだろう」


「それは、そうなんだが」



 ロキは言い淀んだ。



「それよりも、奴にとどめを刺すぞ。多少なりとも動きは鈍るはずだ」



 そう言ってロキは誤魔化し、魔神に向かって攻撃を再開する。


 ガラナも再び姿を消した。


 が、魔神の雰囲気が変わったことで、ロキは躊躇った。



「人間。やはり君たちは信ずるに値しない。せっかく純粋な勝負を楽しもうと、この僕がお膳立てしたというのに」



 這いつくばっていた魔神が立ち上がる。


 ロキが見た魔神の顔は、両目の結膜が黒く染まっていた。



「神の御使い。君は後回しだ。先に人間を滅ぼしてから、君と相見えよう。限りある生贄の力だが、もう惜しまないよ。もう後のことは良い。本気の本気だ」



 ロキは悪寒がして、その場を飛び退いた。


 次の瞬間。


 爆炎が魔神の周囲数メートルを包む。


 魔神はその爆発エネルギーを利用し、高速で南の大都市アビスブルクへ向かった。



「おいガラナ! しっかりしろ!」


「ぐ、あ」



 ガラナは気を失っていた。


 ロキが駆け寄った彼の体には、下半身が存在していなかったのである。気を失っていない方がおかしい。



「ちっ。リリはどこだ!」



 言いながらも、ロキは分かっていた。彼女らが逃げろと言って素直に逃げる玉ではないということを。


 彼女らが向かったのもまた、南の大都市アビスブルクである。



「くそっ。馬鹿共が」



 ロキはガラナを背負い、自らの魔法で生み出した炎さえ利用し、最高速で南へ向かった。



〜アビスブルク〜



「誘導なんてしてる場合じゃないよ。私たちもすぐ逃げなきゃ」


「そうね」


「ですが、大いなる瞳の範疇から出てしまえばこちらのものです。あれ以上魔神が強くなることはありません」


「そうやな。って嘘やろ?! 早すぎるわ!」



 逃げ惑う市民たちと共に街の外へ向かっていた四人。


 そして、フランは捉えた。街の北部から、建物が更地になって行く光景を。



「人間!」



 魔神は凄まじい速度で迫ってくる。



「あかんって! もうすぐ射程圏内や!」


「ごめんみんな。私は迎撃に行くから。あとは頼むよ」


「何を言っているの! ダメよシャルちゃん!」


「大丈夫だよ。速さなら負けないから」


「たとえ魔神より速くとも、視界に入れば終わりなのですよ!」


「入らなきゃいいんでしょ。ロキの弟子だもん。それくらい出来るよ」



 シャルルは今にも、魔神に向かって飛び出しそうである。三人の怒鳴るような心配も、柳に風といった様子。



「シャルちゃんっ!」



 しかし、フランが翼を掴んだことで、シャルルは振り向いた。



「ロキ君がやめとけって言うたんやで?! ってことはシャルちゃんが今行ったら死ぬっちゅうことや! それがわからん訳ちゃうやろ!」


「うん。わかってるよ。ロキが私のことを心配してくれてるんだって」


「せやったら!」


「でも、ごめんね。ロキだけに任せていたくないの」



 シャルルは強い瞳で言い放った。



「最後の神獣のとき、ロキは私を好きだって言った。この間だって、結婚しても良いって。私の事、大事に思ってくれてるのはわかるんだよ。でも、それじゃ私は納得しない」



 シャルルは剣を抜き、ドレスの裾を膝上で破り捨てた。



「ロキに守られてるだけじゃ、神の嫁は名乗れないんだよ」



 近づいてくる魔神へ、剣を構える。



「それにね、これはチャンスなんだよ」



 シャルルはフッと微笑んだ。


 その表情に見とれて、フランは手を離した。


 その目が、あまりに輝いていて。負ける気など、死ぬ気など、微塵もない。自信たっぷりの目。



「ロキとした約束。私は世界で一番強くなる。じゃあ、それはどうやって証明すれば良いの?」



 そして、シャルルの微笑みは、見慣れたロキの黒い笑みへと変わっていく。



「魔神を倒せば、文句なしで私は世界最強だよね!」



 シャルルは風を切って飛び出した。


 疾風となった彼女は、もはや誰の目にも追えない。



「あははっ」



 フランは笑った。



「ええで! シャルちゃんがその気なんやったら、うちも死に物狂いで戦ったるわ!」


「うふふ。そうね。シャルちゃんの恋路を邪魔する魔神は、みんなで倒してしまいましょう」


「微力ながら、お手伝いします」



 三人も、揃って不敵な笑みを浮かべた。



「はぁ。馬鹿な奴らだ。死も恐れないなんて、そんな狂戦士に育てた覚えはないんだが」



 魔神に向かう黒い翼を見て、言葉とは裏腹に頬を緩めたロキ。



「だが、いいだろう。魔神に俺たちの実力を見せてやる」



 こうして、五人による魔神討伐が始まった。

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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