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ジャン負け村人転生しようぜ  作者: リア
第六章・目覚める闇
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王の遊戯と復讐鬼

〜数日後〜



 無事、里帰りを完遂したロキたちであったが、この数日は雨に降られ、帰るに帰れない様子であった。



「狩ってきたお肉のおかげで飢えには程遠いけれど、こう何日も雨が続くと憂鬱になるわ」


「そうやね。いつまでもお世話になりっぱなしっちゅうのも悪いし」



 ロキたちが一日かけて解体していた魔物は当然注目を集めた。


 そんな野次たちにお裾分けをしても余ってしまうほどの肉塊たちによって、ロキたちの生活は安定していた。



「ですが、魔物に目立った動きがない以上、戻ることも得策とは言えません」


「濡れたくもないしね」


「そう気にしないで、いつまでいてくれても良いんだよ」



 ロキの母親は優しい笑顔で言う。その言葉にロキも同調した。



「魔物に動きがあるまではここにいれば良い。父さんも喜ぶ」


「あら。あなた、見透かされていますね」


「息子とその友達がいて、喜ばない親はいないさ」


「けれどあなた、あまり若い子たちの邪魔をしてはいけませんよ」


「わかっているとも。隙あらば盗み見るくらいにとどめておこう」


「盗み見るなよ」



 ロキの父親は、息子からツッコミを受けて嬉しそうであった。



〜昼〜



 昨日二人が寝ていた、元ロキの部屋で、五人は集まっていた。



「暇ね」


「そうですね」


「まあ雨だからな。朝は止んでいたはずなんだが」


「この雨続き、室内で出来ることはだいたいやり尽くしたよね」


「こうなったら遊ぶしかないで!」


「何かあるのかしら?」


「また嫌な予感がしますが」


「なぁ、フランは放っておいてトランプでもしないか? 家にあったはずなんだが」


「良いんじゃない? ありふれてるけど、フランちゃんが提案するものよりマシだと思う」


「その名も王様ゲームや!」


「聞く気ゼロね」


「何がなんでも押し通すつもりのようです」


「はぁ。また地雷臭のするゲームだな」


「どこからそんなゲーム仕入れてきたの? 聞いたことないけど」


「こないだ神獣について調べるために図書館に篭っとったやろ? そんときに」


「真面目に調べろよ」



 ロキの苦言を飄々と受け流し、フランは続ける。



「ここに人数分の棒があって、その先端には赤い印がついとるやつと、番号がついとるやつがあんねん。そんで、赤印の王様は番号を使って命令出来るんや」



 要は、一般的な王様ゲームである。



「やってみればわかるわ。ほな、みんな引いて。あ、王様だけ宣言してな」


「はぁ。ろくなことにならんだろう」


「そうかしら? 命令出来るなんて面白そうじゃない」


「ですが、とても実行出来ないような内容を命令した場合はどうするのですか?」


「ランサー、自害しろ。とか?」


「シャルちゃんの言うことはようわからんけど、まあそのへんはみんなのモラルにかかっとるわ。なんなら、命令を王様以外で審議したらええんちゃう?」


「そうね。リリちゃんが公開オ〇ニーなんていうことになったら可哀想だもの」


「ア、アレク様っ! いけませんですっ!」


「アイリス、リリを弄る時に限ってはド下ネタを発するよな」


「ロキ様もっ! 弄るだなんてっ!」


「え、それもだめなの?」


「あかん、リリちゃんが下ネタ過剰反応マンになってもうた」


「女の子やぞ」


「そこ? ってかロキ、フランちゃんの口調を真似るのが流行りなの?」


「混沌としてきたわ。早くゲームを始めましょう」


「誰のせいやと思っとるん。まあええわ。始めよか。王様だーれだっ!」



 第一回王様ゲームが開催された。



「お、うちや。幸先ええなぁ」


「うわ」


「露骨に嫌がりすぎよ、シャルちゃん」


「ですが、一番引いて欲しくない人というのも事実です」


「リリにまで言われてはおしまいだな」


「おほんっ。最初やから軽めにしとこか。三番は好きな人を告白っちゅうことで」


「どこが軽いのですか!」


「三番は誰かしら?」


「あ、私だ」


「なんだ、なら良いじゃないか」


「シャルル様でしたら構いません」


「わかりきっているものね」


「さすがにこれはおもろないわ。嫌いな人に変更で」


「我ながら、皆知ってるこの状況って如何なものかと思うよ。で、嫌いな人? んー」



 人当たりの良いシャルルである。嫌いな人と呼べるような人はなかなか見つからないようで、少し唸っている。



「ああそうだ。ガラナさん」


「あー、わかるわ。うち、専らの被害者やもん」


「そんなに酷いお方なのですか?」


「そうでもないはずよ。けれど、前に二人といざこざがあったみたいね」


「嫌いと言っても、個人的な意見だ。シャルのあれは、フランを傷つけられてキレたんだな」



 ロキが悟ったように、ガラナへの文句を語り合う二人へ目を向けた。


 そんな視線に気がついたフランは咳払いをひとつ。司会に戻った。



「ルールはわかったやんな? 次行こか。王様だーれだっ!」


「その掛け声、毎回やるのか?」


「語呂は良いけど、センスは感じないね」



 第二回が始まった。



「あ、私だ。んーっと、じゃあ、二番と三番は、今までお母さんとお父さんに、私の事で何を聞いたか教えて」


「二番はお姉さんね。構わないわ」


「うち三番やけど、ここで暴露してええの? 恥ずかしい話いっぱい聞いたで?」


「うぐっ。じゃあお姉さんだけでいいや」


「わかったわ。うふふ。そうね。ロキ君が知らない話の方が良いかしら」


「えっ。そんなのあるの?」


「うふふふっ。シャルちゃんが十二歳のときにね? 村に隠された伝説の魔剣カーペットを手に入れたぞって、木の枝を振り回していたらしいのよ」


「ぶふっ。魔剣絨毯っ。くふははっ」


「お母さんなんでそんなこと覚えてるの?! ロキは笑いすぎっ!」


「出たな魔王ロキ! 喰らえ! てやあああ!」


「ガキン! ガキン! グサッ! ドーン!」


「わあああっ! やめてぇ! セルフ効果音とかめちゃくちゃ恥ずかしいから! リリちゃんもフランちゃんも悪ノリしないで!」


「うふふふふっ。面白いわ、このゲーム」


「王様ゲームが、というよりは、シャルの黒歴史が面白いな」


「うぅ。やだ、このゲーム」


「王様が不幸になるんですね」


「ほんまは得するゲームやねんけど。シャルちゃんはおもろいなぁ」



 ひとしきり笑って、第三回戦。



「私です。そうですね、これは対象が王様でも良いんですか?」


「うん、ええで」


「わかりました。では、四番は王様の頭を撫でてください」


「あら可愛らしい」


「ほのぼのするお願いやなぁ」


「四番ってロキ?」


「ああ。頭を撫でるくらいお安い御用だ」



 ロキの手が、リリのふわふわした髪に触れる。


 リリは目を細めて、ロキになされるがままになっていた。



「可愛ええなぁ」


「家猫みたいね」


「羨ましいなぁ」


「俺が手を動かさなくとも、自ら頭を擦り付けてくるぞ」


「はっ。つい。昔よくお兄様にして頂いていたんです」


「お兄さんも幸せやったやろなぁ」


「可愛いものね。せっかくだから、次の命令までそのままにしましょうか」


「はい。そうしましょう」



 ニコニコと頷いたリリ。第四回戦。



「あら、お姉さんね。うふふ」


「なんかすごく不安になるんだけど。私だけ?」


「奇遇やな、うちもやで」


「普段の態度からして、リリを狙い撃ちに来るだろうな」


「怖いですね」



 リリはくじの先をぎゅっと握って隠した。



「下着を脱いで、王様に献上よ」


「い、いけませんそんなの!」


「うちは別にええと思うで。こういうのが王様ゲームやし」


「どっちでも構わん。好きにしろ」


「私はやだよ。ロキはまだしも、お姉さんにあげるのなんて恥ずかしいし」


「反対派が多いので、この命令は無効ですね」


「待った!」


「アレク様、どう足掻いても、ナシはナシです」


「シャルちゃん、お姉さんの番号がロキ君に当たれば、ロキ君のパンツが見放題よ。何なら、王様権限でシャルちゃんにあげても良いわ」


「むむっ。でも、ロキの裸はこの間」


「ん? シャルちゃん、ロキ君の裸見たん? 夜這い?」


「フラン様っ!」


「なんでもないっ。私が当たるリスクが怖いかな」


「そうねえ。もしシャルちゃんに当たったら、ロキ君に押し付けるわ。それでどうかしら?」


「あ、それなら」


「それで良いんですか?!」


「さあ、どうかしら。賛成二だけれど」


「むむむっ。はぁ。好きにしてください。どうせ当たる確率は四分の一ですから」


「リリちゃん、それフラグや」


「決定ね。お姉さんが選ぶ番号は、一番よ」



 リリの表情が青ざめた。



「聞くまでもないね」


「よく当たったな、アイリス」


「助かったわ。さすがお姉さんやな」


「そ、そんな」


「リリちゃん、王様の命令は絶対よ?」


「う、うぅ」



 リリは立ち上がり、スカートの中に手を差し込んだ。そして、前屈。足首のあたりまで、真っ白の下着をずり下ろした。



「ど、どうぞ」


「うふふ。ありがとう」



 耳まで真っ赤になったリリはその下着をアイリスに渡し、座ってスカートを押さえた。


 その間、ロキはシャルルに目を塞がれていた。



「さて、五回戦ね」


「あの、アイリス様っ、下着を返してください」


「ダメよ?」


「はい?」


「次のゲームが始まるまでという約束でしょう?」


「まさか、そのためにっ?!」


「さ、ロキ君、目を開けてもいいわ。じゃないとゲームが出来ないでしょう?」



 シャルルはロキの目隠しを外した。



「わああっ! いけませんっ!」



 リリは慌てて立ち上がり、アイリスの片手を押さえにかかった。



「あら? そんなに激しく動いて良いのかしら? スカートが捲れているけれど?」


「っ!」



 リリの座っている位置は、ロキの隣。その場でスカートが暴れれば、当然ロキの視界に、リリの恥部が映るわけだ。


 リリは慌てて捲れ上がったスカートを押さえるが、時すでに遅し。



「ア、アレク様っ! 度が過ぎていますっ!」


「うふふ。焦らなくて良いのよ。ロキ君はずっと目を閉じていたもの。何も見られていないわ」


「ああ。ビンタは嫌だからな」


「焦るリリちゃん、やっぱり面白いね」


「うー! うー!」



 からかわれたのだと知ったリリは唸りだした。



「リリちゃんが羞恥に耐えかねてカリスマ的防御姿勢になってもうた」


「その姿勢でミニスカートなら良かったのだけれど」


「よくありませんっ!」



 アイリスが下着を返すことで、その場はどうにか収まった。


 が、リリの機嫌は未だ悪い。



「ごめんなさいね? あまりにリリちゃんが可愛かったものだから」


「知りませんっ」


「ほらリリちゃん、王様やで。何でも命令してええで」


「今ならアイリスお姉さんの番号教えるよ。復讐して良いから、機嫌直してよ」


「なら命令です。アレク様はゲームから抜けてください。ずっと見ているだけです」


「受け入れるわ。茶々は入れさせてもらうけれど」


「それでさえ嫌な予感がするのは俺だけか」



 アイリスが外野に移動し、第五回。



「俺か。そうだな」


「ロキ、私の番号なら教えてあげても良いよ? えっちな命令でも何でも従うよ?」


「もはやただのビッチやで、それ」


「二人とも不純です」


「よし、決めた。三番はとっておきの暴露話をしろ」


「私ですか。わかりました。では」


「スっと出てくるんやな。意外やわ」


「誰が的なんだろ? リリちゃんが自分のことを言うわけないし」


「少し復讐をしたいと思います」



 リリは黒い笑みを浮かべた。外野で口出しも出来ないアイリスは見守るばかり。



「ほんの一週間前のことです。いつものように昼食後の休息の時間、アレク様はお手洗いに席を立ちました。その後すぐ出発ということになって、アレク様に茂みの向こうから声をかけようとしたのですが」


「リリちゃん、その話は」


「そうすると、茂みの向こうからキャッという叫び声が聞こえたかと思えば、アレク様が下半身を出したまま飛びついて来たのです」


「え、そんなことあったん?」


「そして尿意を堪えきれず、私のそばで立ったまま粗相をしてしまいました。それはそれは長い時間勢いよく。一分くらいずっとでしょうか。よっぽど我慢していたのでしょうね。終わった後は水溜まりが出来ていましたよ。いえ、尿溜まりでしょうか」


「リリちゃん、そこまで詳細に言わなくとも良くないかしら」


「んふふ。お姉さん、なんで飛び出してきたの?」


「蛇が出てきて怖かったとか」


「ふふふふ。へぇ、意外やね」


「リリちゃん、見ないでぇ。ああぁ。なんて、泣きそうになりながら言っていました」


「うぅ。恥ずかしいわ。まさかリリちゃんにやり返されるとはね」



 アイリスは珍しく顔を赤くしていた。


 いつも好き勝手弄られている三人は、嘲笑いながらより詳細に話を聞き出していた。



「お姉さんにも可愛ええとこあるやんか」


「ほんとにね」


「うぅ」


「ふふふ。復讐完了です」



 リリはニッコリと微笑んだ。


 それは天使と言うより、小悪魔のようであった。



〜晩〜



「やっと雨があがりましたね」


「ほんまやな。ちょっと雲はあるけど、綺麗な空や」


「綺麗な満月ね」


「こんなに月が明るいのに、星も見えるんだね」


「さすがは田舎の空といったところか。空気が澄んでいるのだな」



 ロキの家でまったりと過ごした後。シャルルの家へと三人を送るため、ロキとシャルルも家を出た。



「田舎の夜道は暗いから、気をつけてね」


「そんなことを言われるような年じゃないわ」


「いざとなったら、リリちゃんの翼を光源にして歩くわ」


「ロマンも何も無いスキルの使い方だな」


「本当ですよ」


「ごめんやんか。頬を膨らましたリリちゃんも可愛いけど、機嫌直してぇな」


「知りません」


「フランちゃん、不敬罪で死刑ね」


「ちょっ、重すぎん?!」


「お前ら夜だぞ。もうちょっと周りを気遣え」


「あはは。楽しくて良いんだけどね。こう遮蔽物が無いと声がよく響くから」



 そんな注意を促したそのとき。


 その忠告を真っ向から否定するように、大音量の雄叫びが轟いた。



「やっとお出ましか!」



 ロキは叫んだ。



「魔物が動き出したのですね」



 リリが認識を共有しようとしたとき、フランが空を指さした。



「な、なんやあれ」



 そこには、天を翔ける龍がいた。

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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