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ジャン負け村人転生しようぜ  作者: リア
第六章・目覚める闇
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クルス村の一夜

〜クルス村〜



「着いたけど、真っ暗だね」


「夜だもの。月明かりがあるだけマシよ」


「この村って泊まるとことかあるん?」


「あるわけないだろ。こんなド田舎に。俺たちの親か、ご近所にでも頼んで泊めてもらうしかない」


「のどかな村ですね。ここまでこれだけ魔物と遭遇してきたのに、ここだけは別世界のように平和です」



 リリはちらりとロキの背後を見やった。


 まだほとんどは森の中に隠れて見えないが、散々なほど死体が積もっている。



「まずはお泊まり先確保だね。家まで行こっか」


「ああ。フランたちは少し待っていてくれ。この死体の中にまだ生きているものがあるとも限らん」


「動き出したら大変やもんな」


「それに、これを持って村に入るなんて不可能よね。大きさ的にも体裁的にも」


「道中でどうにか血抜きをして生臭さは抑えられているのがせめてもの救いですね。生臭いまま放置は出来ません」


「じゃ、よろしくね」



〜ロキの家〜



「はぁ。相変わらずボロい家だな」



 感慨もなく、ロキは久しぶりに我が家の戸をノックした。



「はーい。こんな時間にどちら様ですか?」


「母さん、俺だ」



 ロキがそう言った瞬間に、物凄い勢いでドアが開いた。


 それを認知した次の瞬間には、ロキは母親に抱きすくめられていた。



「ロキ! おかえりなさい! 無事で何よりだわ!」


「むぐぐっ」



 ロキは母親の腕をタップした。


 母親がロキを解放すると同時に、父親が奥からすっ飛んできた。



「ロキ! 帰ってきたか!」


「よう、父さん」


「あなた、心配していたのは知っているけれど、あまりにきつく抱きしめすぎじゃないですか」


「ロキ! よく帰ってきたな!」


「むぐぐっ」



 デジャブである。さすがは夫婦といったところか。


 ロキも母親にしたのと同じように、父親の腕をタップする。



「この人ったら、かっこいいことを言って送り出した割に、まだ帰ってこないのかまだ帰ってこないのかって、ずっと言っていたのよ」


「母さん、それは言わなくても良いじゃないか。恥ずかしい」


「それよりだ、母さんに父さん。頼みたいことがあるんだが」


「そうだわ! その前にロキ、シャルちゃんはどうしたの?」


「ああそうだ、一緒じゃないのか? まさかとは思うが」


「シャルなら家に行っている。また後で会う機会もあるだろう。だからまずは話を聞いてくれ」


「それは良かったわ。それで、話って何なのかしら?」


「この家に何人か泊めてやってくれないか。俺のパーティメンバーが来ているんだが」


「なんだそんなことか。構わないさ。なあ、母さん?」


「ええ。この数年間ロキがどんなことをしていたか、ぜひ聞かせて貰いたいわね」


「そうか。助かる。早速呼んでくることとしよう」


「ちゃんと全員紹介するんだぞ」


「みんなにお礼を言わなくてはね」


「はぁ。大袈裟だ」



 だが、そんな家族を懐かしく、そして愉快に思うロキであった。



〜数十分後〜



 まずはロキの家に五人が集合した。


 魔物の死体は、半分以上が村の外に放置してある。多少魔物に横取りされようと、なんら構わないという姿勢だ。



「こんなに可愛らしい娘たちが、ロキのパーティメンバー?」


「別嬪さんばかりじゃないか。羨ましいな」


「あなた?」


「なんでもありませんっ」



 本場の夫婦喧嘩の一端を垣間見たところで、ロキパーティと夫妻の懇親会が始まった。



「まずは手土産からだ。もっと大きな土産が道中手に入ったんだが、まあそれは良いだろう」


「まあ。気が利いているのね。シャルちゃんの案かしら?」


「そうですよー」


「ここでロキ君やとは微塵も思われへんあたり、さすがやと思うわ」


「お母様というだけあって、分かっていらっしゃいますね」


「ロキ君、親孝行はきちんとするべきよ」


「実家でもお前らは手厳しいな」



 ロキは母親に包を手渡した。菓子折りなどが入った、そこそこの高級品である。



「ロキ、早く友達を紹介してくれないか。こんな息子と仲良くしてくれているお礼が言いたいんだ」


「ああ。こんな、は余計だがな。そこの金髪の姫っぽいのがリリだ」


「よろしくお願い致します。それと、姫ではありません。今日たまたまそういう格好なだけです」



 白のブラウスにキュロットスカート。いずれもフリフリのついた可愛らしいデザインである。姫と形容されるのも無理はない。



「それで、こっちの変な訛りのピンクがフランだ」


「色で表現していくんやめへん? なんか、うん、特徴的な髪やとは思うけど。微妙な感じやわ」


「雑な方が喜ぶだろ、お前」


「紹介のときですら性癖出すって相当やでそれ」


「フランちゃん、言ってる言ってる」



 これにはロキの両親も苦笑い。



「最後がアイリスだ」


「本名でお願いして良いかしら?」


「本名?」


「いえ、だから本名で紹介してもらいたいのだけれど」


「アイリスはアイリスだろう。俺たちにはそう言ったじゃないか。本名と言われても覚えていないぞ」


「だいぶ傷つくのだけれど」


「冗談だ。アレク・ミルクだったか?」


「アレクサンドラ・ミルクよ。お姉さん悲しいわ」


「ロキ。さすがにそれはどうかと思うよ?」


「じ、冗談だ」


「詰まらないで貰えるかしら」


「正直すまんかった」



 珍しく、アイリスが笑顔を止め、鋭い目でロキを威嚇した。



「とまあ、こんな愉快な仲間だ」


「皆キャラが濃いのね。シャルちゃんが一番薄いなんて思ってなかったわよ」


「あはは。私でも村じゃ濃かったですもんね」



 シャルルは乾いた笑いを漏らした。



「さて、夜も遅い。まともな明かりもないこの村じゃ尚更な。シャルの家も泊まりの許可は出ただろ?」


「うん。私含めて三人いけるって」


「母さん、いけるか?」


「ええ。もちろん。こんな若い子と夜を一緒に過ごすなんて久しぶりだわ」


「母さん、その発言は夫としてどうかと思う」


「というわけだ。三人と二人に分かれるぞ。と言っても、俺とシャルは確定か」


「あ、ロキ。それなんだけど、私がロキの家で泊まってもいい?」



 シャルルはおずおずと手を挙げた。



「なんで? ロキ君の匂いを堪能したいから? 相変わらずむっつりさんやな」


「違うよ! 余計なこと言わないで良いの! だって、お母さんとお父さんが友達と喋ってるの見ると恥ずかしいんだもん」


「そうでしょうか? 私は気になりませんが」


「人には人の感じ方があるもの。お姉さんはあまり感じたことがないけれど」


「まあええやんか。本人がおらん分、ご両親に色々と聞き放題やで?」


「あら。それは面白いことになりそうね」


「ぜひ聞きたいです」


「やばっ。より恥ずかしいことになりそうかも」



 シャルルは、父母が余計なことを言わないよう、天に祈るのであった。



〜深夜・ロキの家〜



 シャルルの家でも懇親会が終わり、二組に分かれて就寝の運びとなった。


 当然、すぐに眠るはずもなく、滅多に会う機会もないロキやシャルルの両親と、それぞれの家で語り合うことになった。


 そして、深夜。この時間にもなれば、両家共に寝静まっている。


 ロキの家では、両親とロキシャルルペアで部屋を分けていた。


 というのも、ロキの母親がロキとシャルルの関係を揶揄したからである。残念ながら、シャルルの反応は初心と程遠いものであったが。


 父親は懲りず、それに乗っかり、夫婦それぞれで眠ろう、などと言い出した次第だ。


 とはいえ、幼馴染ということもあって、二人きりにも慣れている彼らに何か特別なことが起こることもなく。


 布団を二つ並べて敷いて、すやすやと眠っていた。



「んんぅ」



 シャルルが寝返りを打った。


 差し込んだ月の光が、彼女の白い肌、端正な顔立ちを照らす。



「ふふふっ。くっ、ふふふふっ」



 シャルルは起き上がった。赤い目をギラつかせ、口元を三日月型に歪ませて。



「ロキぃ、ロキぃ」



 甘ったるい猫なで声で、ロキの名を呼ぶ。


 ロキの眠る布団へ潜り込み、舌なめずりをした。



「大好きだよぉ」



 寝ているロキの寝巻きを脱がし始めた。


 鍛え上げられた筋肉質な上半身が顕になる。


 シャルルはそこへ躊躇いもなく舌を這わせた。



「んっ。ロキの味、好きぃ」



 まるで容器の蓋についたソースを舐め取るように、執拗に舐る。


 一度眠ればなかなか起きないロキは、この程度の刺激で起きたりなどしない。



「んふふっ。寝顔、可愛いなぁ」



 シャルルはロキの頬に口付けた。


 そして、自分の服も脱ぎ始める。



「ふふふふっ。ロキぃ」



 パジャマも下着も全て脱ぎ去り、掛け布団の外へ追いやってから、ロキに折り重なった。



「はぁ。ドキドキしてる。あったかくて気持ちいい」



 シャルルの唾液で湿ったロキの上半身と、シャルルの柔肌がピッタリ触れ合う。


 赤く光った目の焦点は、ロキの唇にあった。



「ここも欲しい。けど、それは起きてるときが良いな」



 そう言って、シャルルは自分の唇に人差し指の先を当て、ロキの唇にそれを当てた。


 間接キスで許すつもりらしい。



「ふふっ。これからもっと凄いことするのに、こんなことで躊躇っちゃうのかぁ」



 シャルルはどこか自虐的な様子である。


 全裸のシャルルは、一度ロキから肌を離した。


 そして、ゆっくりとロキの体をずり下がっていく。



「んふふっ。ご開帳っ」



 シャルルはいつぞやのように、ロキのズボンを脱がした。寝巻きにはベルトもなく、簡単に脱がすことが出来てしまう。



「ふふふっ。いただきまーす」



〜翌朝〜



「ん、んぅ? ここは?」



 シャルルは目を開こうとする。が、うつ伏せ状態のため、上手く開けない。


 体を起こすため、いきもうと鼻から空気を吸うと、嗅ぎ覚えのある匂いが彼女の鼻腔を通った。



「ロキの匂い? すごく濃い。って、変態か! あ、そうだ。思い出した。ロキの家に来てたんだっけ」



 シャルルはうつ伏せの状態から、体を起こした。


 が、シャルルはそこで愕然とする。



「うるさいぞシャル。耳元で騒ぐな」



 さらに悪いことに、このタイミングでロキが起きてしまった。



「ど、どうなってるの」



 シャルルはロキを跨いで四つん這い。そして、全裸である。シャルルだけではなく、ロキも。



「お前、文明人なら服を着てからものを言えよ」


「ブーメランだよ、それ」


「あ? 俺はちゃんと服を着て寝たはずだ。ってほんまや」



 ロキが視線を下に向けると、シャルルの薄い胸板の下に、自分の裸があることに気がついた。



「フランちゃんの口調が移ってるよ」


「お前それより、これはどういう状況だよ。説明しろ痴女」


「痴女じゃない。私もよくわかってないんだよ。目が覚めたらこの状態で。ロキの方こそ何か知らない?」


「ふむ。途中で一度起きたような気がしないではないな」


「そのときの記憶とか、ヒントにならないかな?」


「一瞬しか記憶に残っていないが。確か、肌色の何かが俺の上で跳ねていたな」


「何それ。って言っても、その肌色って多分私だよね。状況的に」


「そうだろうな。すぐに寝たから真偽のほどはわからんが」


「それ夢じゃないのって、言い切れない現状なんだよね。はぁあ。とりあえず、服着よっか」


「そういえば、全裸のくせに、今日はやけに落ち着いているな。前はビンタされたはずだが」


「いつまで引きずってるの、それ。今回はロキも寝てたし、私も朝だからぼやっとしてるのかも」


「後でビンタされなければ良いが」


「しないよ。それに、もしロキに娶られたら見せないといけないものだし。今日は前みたいに皆もいないから。初夜だと思えばなんとか」


「仮定でも娶らんぞ」


「プロポーズは何度もしてくれてるのに?」


「してねぇよ。過大解釈すんな」


「ちぇー」



 シャルルはロキの上から退いた。そのときに、ロキのうっすらと赤い下腹部をちらりと覗いて。



「わ、おっきい」


「あ? こっち見んな」


「ごめんごめん。謝るからチンピラみたいな目付きで見ないで。でも嬉しいなぁ。私の裸に反応してくれたの?」


「しねえよ。ただの生理現象だ」


「そこは嘘でもそうって言ってくれないと、私泣くよ?」


「泣いてろ変態」


「厳しいなぁ」



 シャルルは笑いながら、ロキと背を向けあって着替えた。


 下着を履きながら、ふと気がついた。彼女の下腹部を血が滴っていることに。



「あれ? まだ月ものには早いはずだけど。いつもより痛いし。生活習慣悪かったかな?」


「何か言ったか?」


「ううん。ロキには関係ないよ」


「含みのある言い方だな」


「知りたい? なら教えてあげよっか?」


「いや、いい。嫌な予感がする」


「あはは。正解。女の子の事だから、ロキが気にすることはないよ。もし教えて欲しいって言ってたら、私の体を使ってみっちり教えてあげようと思ってたけど。未来の夫への性教育として」


「やめろ。地獄だ」


「それは酷くない?」



 シャルルは苦笑しつつ、着替えた。



〜約一時間後〜



 ロキとシャルルは何食わぬ顔で朝食を食べ、シャルルの家で泊まっていた三人とも合流した。



「お二人さん、昨夜はお楽しみやったね?」


「普通に寝ただけだよ」


「寝たっていうのは、どっちの意味かしら?」


「アレク様っ、お下品でしゅっ」


「そこで噛むなよ」


「あらあら。やっぱり可愛らしいわね。こんな子たちに囲まれて、ロキが羨ましいわ」



 いつもの五人に加え、ロキの母親も同行していた。


 というのも、道中に狩った魔物の解体が必要なのである。いつまでも野ざらしというわけにはいかない。


 やがて、村の入口に着いた。


 そして、リリに対して微笑みを浮かべていたロキの母親の表情が凍りつくこととなる。



「さて、始めるか」


「シャルちゃん、これ全部、死んでいるのよね?」


「はい。そうですよー」


「持ち切れる分しか運んでへんけど、大丈夫やんな?」


「はい。きっと残りは自然が浄化してくれると思います」


「魔物の餌ね」



 のほほんと解体用の刀を構え、死体の山へ向かう五人に、ロキの母親は絶句するのであった。

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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