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ジャン負け村人転生しようぜ  作者: リア
第五章・天使の降臨
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ガルダでの最後の一日(後編)

〜数時間前・ガルダ・街頭〜



 ロキの死亡と復活に精神を乱されたシャルルが、正気を取り戻した後。せっかくだからとロキ達も街を見て回ることにした。



「完全ノープランで出てきちゃったけど、どこか行きたいとこある?」


「ない。ついでに言えば、時間も大して無い。誰かさんが俺をずっと抱き枕にしていたせいでな」


「ごめんって。あ、あれ可愛い」


「はぁ。勝手なやつだ」



 シャルルはある店のショーウィンドウを覗き込んだ。



「気になるなら入れよ。開いてるだろ?」


「そこまでじゃないよ。まさかこれを買うわけじゃないし」



 シャルルが見ているのはインテリア。ショーウィンドウに飾られた、シックな振り子時計を注視している。


 たしかに、旅の者としては全く縁のない代物である。



「そう言うな。どうせ遊びに行く宛もない。入るぞ」


「あ、うん。じゃあ入る」



〜インテリアショップ〜



「素敵だね」


「ああ。良い趣味をしている」



 店内はさほど広くない。しかし、どこか気品のある家具たちが、そこにあるべくしてあるかのように一つの空間を彩っている。


 店員と思しき老紳士がシャルルとロキの元へ歩み寄った。



「いらっしゃいませ、お客様。どのような家具をお探しでしょうか」


「ああいえ、見に来ただけなんです。ここの家具、素敵ですね」


「ありがとうございます。どうぞごゆっくり」


「これは手を触れて構わないか?」


「はい。どうぞご自由に」



 老紳士はそのまま、姿勢よく店の隅で佇む。


 ロキは早速、ソファに腰掛けた。



「ふむ。作りもしっかりしているな」


「横からでも、体重をかけたくらいじゃビクともしないよ」


「ああ。それにこの椅子は肌触りも良い。柔らかく包み込むようなクッションも最適だ」



 ソファは二人がけ。ロキの隣にシャルルも腰掛けた。


 肘掛や骨組みは黒っぽい木でできており、光沢もある。


 クッションカバーは同系統の黒。シックで大人っぽい家具である。



「落ち着く空間だな」


「うん。こういう家って憧れるよね」



 店内は黒っぽい色の家具で満たされていた。所々に散りばめられた白い部品が、落ち着いた様相にアクセントを加えている。


 そのどれもが気品に溢れ、堂々と胸を張っているようにも見えるほどである。



「ただいま、トータルコーディネートで金群十個、輸送料込みとさせて頂いております」


「あ、いや。私たちほんとに買う気は無くって」


「置くような家も無いからな」


「左様でございますか。では、お二人が愛の巣を手に入れられた際には、是非当店をご贔屓に」


「あ、愛の巣っ」


「ああ。考えておこう」


「ちょっ?! ロキ?!」


「行くぞシャル。買う気もないのに長居するわけにいかんだろう」


「ちょ、ちょっと待って! 発言の真意だけ教えてよ!」



 店を出るロキを、慌ただしく追いかけるシャルル。


 そんな二人の様子を、老紳士は微笑ましく眺めていた。



「若いですな」



〜ガルダ・宿屋〜



 結局何も買わぬまま、ウィンドウショッピングだけをして帰ってきたロキとシャルル。


 外は既に夕焼け。空には上弦の月が浮かんでいる。



「はぁあ。なんだ。遠回しのプロポーズじゃなかったのか」


「当たり前だろう。お前が将来良い男を捕まえて、同棲する気になったらという話をしていたんだ」


「ロキも私の事好きって言ってくれたのに」


「嫌いじゃないと言っただけだ。勘違いするな」


「私じゃだめなの? 他に好きな人がいるとか?」


「好きなやつなんていねえよ。なんだお前。今日はグイグイ来るな」


「だってロキってば、度々プロポーズみたいなこと言うじゃん。勘違いもするって」


「はぁ。いくらお前が俺の事を好きだからって、自意識過剰じゃないか?」


「ロキのその言葉こそ自意識過剰だと思うんだけど」


「なんだ、シャルは俺のことが嫌いか。そうかそうか。それは結構」


「そうじゃないけどぉ。でもさー、これだけしつこく迫ってるんだから、その気になっても良くない?」


「しつこい自覚があったのなら止めろよ。はぁ。昔はもっと慎みのある奴だったんだがな」


「あー、たしかに慎みは無くなったかも。フランちゃんがロキと結婚するとか言い出したあたりから」


「それで誘発されるように結婚がどうのと自爆。その上、今じゃフランは俺に見向きもしないからな」


「ほんとだよ。フランちゃんって飽きっぽいっていうかさ。その点私は一途にロキを想い続けてるよ。お嫁さんにどう?」


「はぁ。積極的にも程があるぞ。フランに対抗心を燃やしていたとき以来じゃないか」


「なんでだろうね。そういう気分なんだ。思いっきり愛を伝えたいっていうか」


「勝手にしろ。俺は受け取らん」


「もう、釣れないなぁ」



 さすがは幼馴染。愛情を向けるのも、それをスルーするのも、慣れたものである。



「釣れないロキはこうだ」


「ふぐっ」



 シャルルはロキに軽くラリアット。


 ロキは呻き声を上げ、シャルルはそれを聞いて笑いながら、共にベッドへ倒れ込んだ。


 仰向けになったロキと、うつ伏せのシャルル。


 突如シャルルはガバッと体を起こし、ロキの顔を真剣な目で見つめた。



「ロキが瓦礫に埋もれてるのを見た時さ、全身が冷たくなったんだ。自然と目から涙が零れてきて、それで、無闇に叫んで。ロキともう会えないって現実から逃げたくなったんだと思う」



 シャルルは言いながら思い出したのか、紅の瞳が潤み始めた。



「その時にさ、思ったんだ。こんな仕事をしてる身だから、私もロキも、いつ死んだっておかしくない。なのにどうして私は、ロキに気持ちを伝えるのを躊躇ってたのかなって」



 胸の内を吐露するシャルルの姿を、ベッドに倒れたままのロキは真摯に見つめ返していた。



「ロキが私の気持ちに靡かないことは知ってるし、実際に経験もしてるのにね。なのになんで、もっと素直にならなかったんだろうって。すごく後悔した。だからかな。今、ロキに愛を伝えたいし、甘えたいって思うの」


「自分勝手だな」


「あはは。そうかも」


「俺が言えたことではないが」


「ほんとだよ。もう、いっつもロキのせいでどれだけ振り回されてることか」


「悪いと思っている。若干だが」


「若干かいっ」


「ぐふっ」



 ツッコミと同時に、シャルルは起こしていた体を落とした。ロキの胸の上に。


 シャルルの体重の半分ほどが乗ったそれをロキは無抵抗に受けた。



「お前、ちょっとは気遣えよ」


「やーだよ。にひひ」



 ロキの胸の上で、シャルルは蕩けるように笑った。


 まるで父親と幼子のように折り重なった二人へ、窓から月の光が差し込む。



「ふ、ふふっ。ふふふっ」


「ん? シャル? どうした?」



 シャルルは顔を伏せていた。ロキの胸に埋めていたとも言う。


 彼女の様子がおかしい。ロキはそう悟り、一度退かそうと手を出した。


 が、しかし。シャルルの手によってそれは遮られた。



「あ? おい」


「ふふふっ。ふふふふっ」


「どうした? 気持ち悪いぞ。さっさと手を離せ」



 ロキの手首を掴むシャルルの手。


 ロキはそれを振り払おうと動かすが、普段の彼女からは想像も出来ないほど力が強く、体勢のせいもあって、うまく動かすことが出来ない。



「本当にどうしたんだ?」


「くふふふふっ」



 シャルルの顔は、彼女自身の前髪によってロキから見えない。


 が、声からして笑っているのであろう。それも、先程とは違う、狂気じみた笑みで。



「いい加減っ、離せっ」



 ロキがグッと体に力を入れるが、軽いはずのシャルルの体は浮き上がらない。


 そればかりか、シャルルはロキの両手を一つに纏め、頭の上に置かせた。


 まるでロキが襲われているようである。


 現状、そうなのであるが。



「おい、シャル。どうしたんだ。いい加減にしろよ。怒るぞ」


「ふふふっ。ロキはそのままでいて。私が気持ちよくしてあげるから」



 シャルルは空いた手で自身のキュロットスカートを脱いだ。それからブラウスのボタンも外す。


 先程も見た、白いスポーツブラがロキの目の前で晒された。


 白く細い肢体と美しい白銀の髪が月明かりに照らされている。



「どういうつもりだ? 幼馴染に強姦の趣味があったと知って、軽くショックを受けているんだが」


「くふふっ。黙って、ロキ。じゃないと塞いじゃうよ?」



 赤い唇に人差し指を当て、何でロキの口を塞ぐのか示唆するシャルル。


 彼女の目は、心做しか普段より紅く、そして鋭く光っているように見える。



「いい子だね。それじゃあ、ロキも脱がすよ」


「おいっ」


「ほら、黙る」


「むぐっ」



 シャルルは胸をロキの顔に押し付けた。


 その間に、シャルルの手はロキの股間をまさぐり、ベルトを外しにかかる。



「ふふふっ。ロキは力を抜いて、待っていればいいの。天井のシミを数えている間に終わるから。天国みたいな心地にしてあげるよ」



 シャルルはロキの耳元で囁く。


 そうこうしている間に、ロキのベルトは外された。


 そのままシャルルはズボンのファスナーを下ろす。飾り気のないロキの下着がシャルルの目に晒された。



「ふぅん。普通だね」


「悪かったな」


「ふふふっ。でも、この方がロキっぽくて良いよ。それと、喋ったらダメ」



 シャルルはもう一度、ロキの顔面を胸で押さえる。



「さてと。じゃあ始めよっか。まずは私からね」



 シャルルは自分の下着に手をかけた。


 ブラジャーと合わせた、白い下着。リボンとフリルのついたそれは、湿り気を帯びている。



「おいっ、さすがにそれ以上はっ」


「ただいまー!」



 緊張を孕んだロキの声と、脳天気なフランの声が部屋に響いた。



「ロキ様、シャルル様。素晴らしい体験をっ」


「あらあら」



 続いて、リリとアイリスも入ってくる。



「どないなっとるんや」



 半裸のシャルルがロキを押し倒し、下着に手をかけている状況を見て、半ば呆然とする三人。



「お前ら良いところに来た! こいつを止めろ!」


「は、はい! 当然です! はしたないこと極まりないです! 結婚前の乙女がはしたない! はしたないっ!」


「あら。同意の上で愛を育んでいるのではないの?」


「この状況で同意があるように見えるかっ」


「う、うちのシャルちゃんの純潔がロキ君に奪われるっ!」



 フランがシャルルにすがり付いた。



「奪わねえよ! 奪われそうになってんだよ!」


「もう、うるさいなぁ。いい所なのに」



 シャルルは頬を膨らませ、不服そうにしている。


 そんな彼女に、リリは顔を真っ赤にして言う。



「な、何を言っちゃっちゃってるのですか! ダメです! 不純異性交遊! ダメ! 絶対!」


「リリちゃん、焦りすぎて言葉がおかしくなっているわ」


「そうやでシャルちゃん。さっきまではあれやったけど、シャルちゃんはもっと慎み深い子やったはずや。こんな逆レイ〇なんてする子とちゃう!」


「フ! ふふふフラン様っ! 言葉遣いには気をつけてくださいっ! じょっ、女性がレ〇プなどと言ってはいけませんっ!」


「リリちゃんも焦って口走っているけれど」



 状況は一気に混沌を極めた。


 どうにか下着を脱ごうとするシャルルと、それを止めるフラン。真っ赤になってあわあわしているリリに、ツッコミを入れるアイリス。そして、もがくロキ。



「とととにかくっ! ダメなのですっ!」


「あっ」



 運の悪いことに、リリの平手がフランの背中を叩いた。その拍子にフランの手は滑り、シャルルの下着をずり下げる。


 もはや、シャルルの下半身を包むものは何もない。


 そんな状態でシャルルは仰向けのロキに跨り、ロキのパンツまで脱がし始める。



「お前らなぁっ! いい加減にしろっ!」



 ロキが本気で力を入れた。


 その勢いでフランはシャルルの下着を持ったまま、ベッドの下へ転落。リリは咄嗟に翼を広げて部屋の上方向へ退避し、転がるフランを回避。


 シャルルの拘束は解けた。馬乗りになっていた彼女は、上体を無理やり起こしたロキに、逆に押し倒される体勢となる。



「あら、正常位ね」


「アレク様っ!」


「あたたた。ロキ君、せめてうちが落ちんように手加減してや」



 三人はいつも通りの調子だが、果たしてシャルルは。



「は、れ? 私、どうしてたんだっけ?」


「正気に戻ったか。まったく。フランたちが来なければ、危うくお前を天井に突き飛ばしていたところだ」


「え? あ、うん? ご迷惑をおかけしまし、た?」


「ほっ。シャルル様がその、変態様に、なってしまったのかと思いました」


「シャルちゃん、何も覚えてへんの?」


「う、うん。ロキに甘えてたまでは覚えてるんだけど」


「さて、どこまでが甘えるの範疇なのかしら? 今の状況も、場合によっては甘えるだけれど」


「へ?」



 シャルルは自分の状況を省みた。


 下半身は裸。上半身は、ボタンの外れたブラウスとスポーツブラジャー。オマケに体勢は、足を広げ、下腹部がロキの腰と密着しているときたものだ。


 途端、シャルルの顔が羞恥で真っ赤に染まる。



「ぴ、ぴにゃあああああああ!」



 そして、涙目になってロキの頬に平手を放つのであった。



「んな理不尽なっ!」



 シャルルの悲鳴とロキの叫びがこだまする。月もとっくに通り過ぎた深夜、部屋は大層賑わった。

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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