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ジャン負け村人転生しようぜ  作者: リア
第五章・天使の降臨
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遺物

また投稿し忘れていた部分がありました。

本当に申し訳ございません。

〜砂漠〜



「ちっ」



 リリの元婚約者の彼がアリジゴクに飲み込まれた後で、ロキは舌打ちをする。



「そんなっ!」


「大丈夫だ、安心しろ。これは」



 言い切る前に、藻掻くことを止めたロキもアリジゴクへ飲み込まれた。



「ロキ様っ!」


「リリちゃん、話終わった?」


「あれ? ロキ君とあの人はどこ行ったん?」


「まさかとは思うけれど、これに巻き込まれたのかしら?」


「はい。ロキ様は大丈夫だとおっしゃっていましたが、あの方の慌てようからして、きっと厄介な魔物でしょう」


「まあ、ロキが大丈夫って言ってるんなら大丈夫でしょ」


「せやな」


「どうにかするでしょうね」


「皆様、ロキ様のことが心配ではないのですか?」


「全然。だって、ロキが冗談以外に嘘をついたことがないもん」


「神は約束を破らへんのやと」


「ロキ君は多分、人類最強よ。そんな人がこんなところで怪我でも負おうものなら、人は魔神に滅ぼされるわ」


「そう、なのですか」


「お姉さん、未来視に魔神とロキ君の戦いが映ったりするの?」


「そうやんか。お姉さんの未来視があれば、神獣の出現もすぐ分かるし」


「それがね、お姉さんの未来視には制限があるのよ。見たいものを何でも見られるわけじゃないわ」


「呑気すぎませんか。皆様の言う通り、ロキ様は心配無用かもしれません。ですが、あの人だって落ちているのですよ」



 リリが深刻な表情で訴えかける。


 すると、シャルルたちの表情にも曇が見え始めた。



「それは、そうだね」


「ロキ君がついとるにしても、ちょっと心配やな」


「けれど、助けに行くにしても、行く方法が無いわ」


「フラン様の魔法でどうにかなりませんか?」


「うちの魔法でも、砂の動きを止めるので精一杯やわ。お姉さんみたいに多重展開なんて出来ひんもん」


「お姉さんだって、同じ魔法でしか多重展開なんて出来ないわ。それも思考強化スキルのお陰だもの」


「そう思えば、育成教室で出会った校長の息子さんって凄いことしてたんだね。初めて気づいたよ」


「そういえばそうやったな。特別なスキルでも持ってるんやろか」


「それは置いておいて、どうしたものかしら」



 悩む四人の中で、リリが手を挙げた。



「私、一度降りてみようと思います」


「えっ?! それは危ないよ! やめといた方が良いって!」


「そうやで。この中で一番自衛能力低いやんか」


「もし、あの方やロキ様が危篤状態にあるならば、治せるのは私だけです。手遅れになる前に、行かせてください」


「そうね。お姉さんはリリちゃんの肩を持つわ」


「どうして? こんなちっちゃい子に危険なことさせられないよ」


「だって、ロキ君が大丈夫と言ったのよ。あのロキ君だもの。脅威があれば即座に排除するでしょう。可能性としては、元婚約者さんが危険な状態である方が高いわ」


「そっか、それもそうやな。リリちゃんを送り込んだ方がええわ」


「じゃあ、これ。ロープで降りよう。リリちゃんが婚約者さんを治したら、これでまた戻ってきてよ」


「はい。分かりました。よろしくお願いします」



 リリはロープの片側を持ち、流れ落ちる砂へ自ら身を投じた。



〜地下〜



 ロキたちが落ちた先。そこには魔物など潜んでいなかった。


 彼らの目の前には、砂漠の地下とは思えない広大な空間がある。



「っつつ」


「立てるか?」


「ロキ様も落ちてこられましたか。どうやら僕は打ちどころが悪かったようです。もう少しだけ休ませてください」


「ああ。そこでは砂がかかるだろう。壁まで連れて行ってやる」


「助かります」



 二人は壁際へ移動した。彼はどうやら腰を痛めたらしい。歩く度に顔を顰めている。



「っはぁ、はぁ。また、ご迷惑をお掛けしてしまいましたね」


「まあそうだな。迷惑と言えば迷惑だ」


「ははは。真っ直ぐな人ですね」


「そうでもない。俺の半生は語ったはずだ。そんなことよりも、どうやって抜け出すかだな」



 天井の一箇所に穴が開いている。ロキたちはそこから落ちてきたのだが、そこには砂山が出来ていた。



「戻ろうにも、砂が落ちてくる限りは同じことだな」


「砂が止まるまで待ちましょう。ここは横に広いですが、そこまで深いわけでもありません。直に止まります」


「ああ。そうだな」



 ロキも壁にもたれかかった。そのとき、元婚約者の彼が声を上げる。



「別の部屋があるようですね。そこに入口がありますよ」


「みたいだな。行ってみるか」


「怪我人を置いて行かないでくださいよ」


「わかっている。冗談だ。一度上がって、リリに治してもらえ」



 言った途端に、天井の穴から砂と一緒に降りてくる人影。リリである。



「リリ様! どうして降りてきたのですか!」


「貴方を心配して来たのです。取り返しがつかなくなっては遅いですから」


「俺のことは心配しなかったのか」


「ロキ様は大丈夫だとおっしゃいましたから」


「正しい判断だ。残念ながら危篤状態とはいかなかったが、こいつを治してやってくれ」


「はい。もちろんです。そのためにここへ来たのですから。回復(ヒーリング)



 リリは元婚約者の彼に駆け寄った。



「不思議だったのですが。怪我をして、体が痛みを訴えているはずなのですが、この時ばかりは幸せな気分です。回復魔法の効果でしょうか?」


「いいえ。今まで沢山の人を治療してきましたが、そんな効果はありませんでした」


「そうなのですか。ではきっと、リリ様のお心遣いが骨身に染みているのでしょう」


「上手く言いますね。そうやって女性を手にかけてきたのですか?」


「そんなことはございません。今まで僕がずっと貴女一筋だったことはご存知でしょう?」


「冗談です。はい、終わりましたよ」


「ありがとうございます」



 地下に広がる空間からは、いつの間にかロキが消えていた。


 怪我が治った彼は、思い切り立ち上がって言った。



「リリ様、今なら二人きりです。お答えをいただけませんか。と言っても、分かりきっていますが。どんな答えでも、僕は諦めません。ですがどうか、どうすれば認めていただけるのか、お聞かせください」


「わかりました。貴方の気概を踏みにじるようで悪いのですが」


「おーい! ちょっと来てくれ!」



 二人きりにしておきながら、なんとも間の悪いロキである。



「はぁ。わかりました! 向かいます! リリ様、お返事はまた後で伺います」


「いや、あのっ」



 しかし、気勢が削がれたのは彼だけではない。リリもである。


 何を言おうとしたのか、彼にとって知る由もないが。



〜地下・奥地〜



「これは」


「古代文字、ですか?」


「お前なら何かわかるかと思ってな」



 広間の奥には、一回り小さい部屋があった。右側の壁にはビッシリと文字が刻まれている。左側の壁には更なる奥地があるらしい。


 また、そこには八つの柱が二本ずつ並んで築かれ、その全てには謎の絵が彫られている。


 そして、その柱が並んだ先には十字の彫刻があった。





「ここは、古代の教会でしょうか。聖職者の身としては興味深いですね」


「ガルダの街とはえらい違いだがな。古代は古代でも、文化レベルは低いらしい」


「これ、もしかしたら読めるかもしれません」


「本当か?」


「古代の言葉ですよ?」


「文法は今の言葉と変わりません。あとは単語さえ繋がれば」



 彼はすらすらと読み進めていく。



「白い、神、獣? の持ち出した「カガク?」によって、世界は荒れ果てた。緑豊かだった大地は痩せ、人間はさらに生存が難しくなった。神よ、どうか我らをお救いください」


「ロキ様、もしかして」


「ああ。予想はついていたが、あの遺産は魔物のものだったらしいな」


「これであの伝説の信憑性も増しましたね」


「これでこの文章は終わりです。次の文は、どれどれ。また食われた。白神獣は際限なく強くなる。奴らの技術が進化すれば、ここがバレるのも時間の問題かもしれない。ああ神よ」


「大変だったようですね」


「次で最後のようです。遂に見つかった。奴は人間に懸賞金のようなものをかけているらしい。白神獣を除き、魔物に高度な知能はない。同情は見込めないだろう。ここはおしまいだ。神は我らを見放した。もし誰かがこれを読むことがあるならば、この奥には絶対に近づくな。死にたくなければ」


「あっ」


「どうかしましたか、リリ様?」


「残念ながら、忠告は守られませんでした。飽きたロキ様が先に進んでしまって」


「大丈夫でしょうか」


「ロキ様のことですから、大丈夫かとは思いますが」



 そんなリリの楽観的な言葉の直後。ロキが入ったはずの部屋から断末魔が聞こえてきた。



「ロキ様っ?!」



 一瞬顔を見合わせた二人は、すぐにロキが入った部屋へ駆け入った。



「なんですか、これ」



 部屋は広大であった。最初の間よりもさらに広い。



「さしずめ古代人の居住区といったところでしょうか。こんなもの、見たことがありません。文献で語られた人間は地上で生活していたはずですが」


「かつては細かく区分けされていたようです。壁だった瓦礫や、横たわって白骨化した死体もあります。先程の声はいったいどこから?」


「リリ様、あちらです」



 彼が指さした方向には、ロキが立っていた。その視線は、壁に向かっている。



「来たか。さっきからずっと流れているんだが、これもカガクとやらの一種か?」


「わかりません。幼少期を王都の図書館で過ごした僕ですが、こんなもの、見たことも聞いたこともありません」


「おそらく、この地の人間が魔物から盗んだものでしょう。映像を記録するもののようです。この映像はおそらく、ここが滅んだときのものでしょう」


「よく動力が残っていたものだな」


「それはどこの遺産でも言えることです。ともかく、これは持ち帰りましょう」



 元婚約者の彼は、その小型の機械へ手をかけた。



「待ってください。嫌な予感がします。女の勘ですが」


「リリ様がそう言うのであれば、手を引きましょう。確かにこれは怪しいです。手を、引き、あれ?」


「どうかしたのか?」


「手が動かせません。手首を掴まれているような感覚です」


「引っ張ってやろうか?」


「えっ?!」


「リリ様? 今度はどうなさいました?」


「い、遺骨が掴んでいます。貴方の手首を」


「ぅえぇっ?!」



 見てみると、確かに手首を白く細いものが掴んでいる。



「ぴぎゃああ!」


「落ち着け。ただのスケルトンだ。白骨化した遺体は偶に魔物化するはずだったろう」


「そう、ですね。はぁ、ビックリしました」



 取り乱した彼であったが、魔物と知って安堵した様子。戦鎚を取り出し、手首を掴む骨を叩き潰した。



「容赦ないな」


「これで死んでは元も子もありませんから」


「ご冥福をお祈りいたしております」


「さて、戻るか。俺も嫌な予感がする」


「そうですね。そろそろ砂も落ち切ったことでしょう」



 婚約者の彼が立ち上がると同時に、ロキとリリの嫌な予感は的中した。


 大量のスケルトンが同時に立ち上がったのである。


 目など無いが、彼らの目は当然侵入者へ向くわけで。



「これは面倒なことになったぞ」


「いくらスケルトンとはいえ、この数を相手にするのは愚策です。逃げましょう」


「いいえ、不可能です。私たちを逃がさないつもりでしょうか。入口近くを重点的に塞いでいます」


「はぁ。脳みそなんてねえだろうに。仕方ない。全部吹っ飛ばすか」


「リリ様、お守り致します」



 ロキはコートを脱ぎ捨て、拳に炎を纏わせた。



「かかってこい、老害共」


「老害などという範疇を超えていると思いますが」



 ロキは拳を振るった。何度も何度も。迫り来る遺体の山へ向けて。


 戦鎚、拳、砕けた骨、炎が飛び交う戦場である。


 ロキは無双状態。次々とスケルトンの骨を砕き、弾き飛ばして後続にも打撃を与え、骨をカルシウムの塊へと変化させていく。



「はぁ。鬱陶しい。アイリスの範囲攻撃が羨ましいな」


「ははは。ロキ様なら、あっても無くても変わらないと思いますが」


「そうですね。今にもスケルトンを駆逐し終えようとしているのですから」



 まるで、寄ってくる虫を払うかのようにスケルトンを倒していったロキ。いつしか視界はすっきりしており、足元には骨がゴロゴロと転がっている。



「しかしこいつら、俺たちを攻撃する意思が薄くないか? 入口を塞いでばかりだぞ」


「私たちを殺害することではなく、逃げさせないことが目的ということでしょうか」


「いいえ。違います。おそらくですが、彼らは逃げているのです。全くもって、彼らに攻撃の意思が見られませんでしたから。それに、入口を塞ぐという知恵を持つなら、もう少しまともな攻撃手段があっても良いでしょう」



 ロキたちの戦闘において、スケルトンは武器という武器を使わなかった。その気になれば、包丁でも何でもあっただろうにもかかわらず。



「だから、逃げている?」


「何から逃げているというのですか?」


「そいつはきっと、もうすぐ姿を現すでしょう。死体になっても逃げ出そうとするほどの魔物が」



 彼の予想通り、その魔物は現れた。


 堅牢な甲殻、鋭い爪。その体躯は全長二十メートルほどだろうか。


 真っ赤なサソリの魔物である。

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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