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ジャン負け村人転生しようぜ  作者: リア
第五章・天使の降臨
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想いは何度でも燃え上がる

〜数週間後・王都〜



 ロキたち五人は図書館から出てきた。ここ数週間、篭っていた場所である。



「貯金の大半は使い果たしたけど、おかげで良い情報を手に入れたね」


「まさかイラスト付きの本があるとはな」


「あの解説書は割と最近の本みたいだったけれど」


「それでも信じる他はありません。これだけの期間篭っていて、詳細な本はあれしか見つけられなかったのですから」


「信じて行ってみるしかないで。それに、あと行ってへん大都市は西のオルタブルクだけやし」


「フランちゃんのご両親、見つからないね」


「まったく、娘がこれだけ探しているのに音沙汰無しとは」


「私の伝手を使って調べてもみましたが、そこまで詳細な情報を記載している奴隷商人もおらず、尚且つ新しい法律が制定されたばかりですので、獣人界も混乱しています。この状況で見つけ出すのは難しいかと思います」


「どこかで安全に暮らしていると良いけれど」


「そう祈っとくしかあらへんな。よし、ほなオルタブルクに行こか」



 彼らが見つけた解説書には、神獣が現れる順番が書いてあった。


 その解説書が言うには、北から順番に反時計回り。しかし、実際は少し違っていた。


 まず、北を司るはずの亀の魔物が東から現れた。次は、西を司る虎の魔物が北から。とくれば、次に現れるのは南を司る鳥の魔物。それも西からであろう。


 そんな安直な思考で、ロキたちはオルタブルクに向かうことを決めた。



「なんだか最近寒くないかしら?」


「そうだね。肌寒いかも」


「お前ら、そんな薄着で良く言うな。何か羽織ったらどうだ」



 アイリスは、出会った時と同じく、水着と変わらない布面積の上下とマントだけ。シャルルも、ミニの赤いキュロットスカートと半袖の白いブラウス。袖口にフリルがあしらわれている。



「ロキ君は寒がりすぎやと思うで。暑いやろそれ」


「動きにくそうです」


「何かあればすぐに脱ぐ。寒いのは苦手なんだ」



 ロキは毛皮のロングコートを羽織っていた。気温で言えば、日本で言う十一月ぐらいのものなのだが、余程寒がりらしい。



「女の子が寒そうにしてるのは、何かに含まれないの?」


「含まれない。欲しけりゃ勝手に買え」


「わかってへんなぁロキ君。シャルちゃんはロキ君の温もりを感じたいんやで?」


「んなっ!」


「やはりお二人はそういう関係だったのですか」


「ち、違うから!」


「断る。俺の体温は俺のものだ。シャルなんぞにくれてやるものか」


「それ、女の子としては辛い返しね」



 というわけで、五人は旅立つより先に、服屋へと向かうことになった。



〜モンテブルク・服屋〜



「やっぱり品揃えはモンテブルクだよね」


「それに安いし」


「職人の街というだけあって、完成度も高いものね」


「お前ら、さっさと選べよ。今日はファッションショーなんてしないでくれ」


「わかっています。寒いですからね」



 ロキがそんな忠告をすると、フランがこそこそと近寄ってきた。



「ロキ君、一着だけ。一着だけ、あかん?」


「お前のその情熱はどうにかならんのか」


「ならへんから言いに来てんねん。頼むわ」


「はぁ。一着だけだぞ」


「よっしゃ!」



 フランはすぐさまシャルルの元へ行き、試着室へねじ込んだ。



「ねぇ、ダメって言われてたじゃんか」


「ええねん。一着だけ許可貰ったから。はよ着替えて。手伝おか?」


「いいよ。もう、ちょっとだけだからね?」



 試着室から出たシャルルの格好は、ミニスカートサンタクロース。スカートの裾や半袖シャツの袖口に白いフワフワがついているものの、布面積で言えば変わらない。そればかりか、臍がチラリと覗いている。



「やっぱ冬といえばこれやんな!」


「こんなものどこから引っ張り出してきたんだ」


「もう満足? 着替えるよ?」


「ん、ええよ。というかシャルちゃん、おへその横にホクロあるねんな」


「そういえばそうだったな。昔よりも場所が離れた気がするが」


「ちょっ、ロキ。何で知ってるの?」


「ロキ君とシャルちゃん、ちっちゃい頃からそういうことする間柄やったん?」


「違うよ! 今もしてないよ! ほんとになんで知ってるの?!」


「昔一緒に風呂へ入れられただろう。そのときに見た」


「昔っていつの話? 覚えてないよ?」


「十数年前だ。あの時は三歳だったか?」


「ようそんなん覚えとったな。それだけシャルちゃんの裸は鮮烈やった?」


「三歳児に鮮烈も何もないでしょ。そんなことよりほら、私は着替えるからフランちゃんは選んできなよ」


「新しいコスプレ?」


「冬服!」



〜一時間後・王都〜



 女性の買い物は長いものだ。ロキはそれを、散々身をもって体験している。


 むしろ、今回は短く済んだと思っている程である。



「これで完全に貯金ゼロね」


「オルタブルクに着いたらまた依頼こなさなあかんな」


「本当、ごめんね。こんなはずじゃなかったんだけど」


「別に責めているわけではないわ。ただ面倒というだけよ」


「楽にお金を稼ぐ方法があれば、苦労はしないのですが」



 買い物を終えた彼女らの服装を紹介するとしよう。


 まずはアイリス。アイリスに関しては、着るもの全てを一新した。白の長袖ブラウスに、黒に近い紺色のサスペンダースカート。それから黒タイツ。そしてお馴染みの黒マントである。


 フランの衣装は、普段と変わらずロリータファッション。それに加えて、今は手袋や耳あて、マフラーを巻いて防寒としている。防寒においてはりりも同様である。


 シャルルの防寒対策は、いつもの赤いキュロットスカートにプラスした、厚手の黒ニーソ。ワンポイントとして、そのニーソックスの太もも付近には白い刺繍が入っている。ブラウスも長袖のものに変更した。



「よし。さっさと行って、さっさと依頼をこなすぞ」


「リリ様!」



 オルタブルクまで向かうため歩いていた五人の前に、ある青年が立ち塞がった。ロキは当然彼に怪訝な目を向ける。



「リリ様。お久しぶりでございます。覚えていらっしゃいますでしょうか」


「ええ。覚えています。元、婚約者様」


「婚約者?」


「リリちゃん、婚約者おったん?」


「さすが貴族ね。フィアンセの一人くらいは当然なのかしら」


「その元婚約者が何の用だ?」


「婚約の件ははっきりとお断りさせていただいたはずです」


「はい。その通りです。ですが、もう一度だけチャンスをいただきたく貴女様を探していました」


「チャンス、ですか?」


「はい。貴女様に見合う男となれるよう、日々精進してまいりました。この通りでございます」



 リリの婚約者を名乗った男は、ある証書を差し出した。



「すごい。Aランクだ。私たちと同じだね」


「うちらは特例として異常な速さで上げてもらっただけやけどな」


「確か、ガラナさんはSランクだったかしら。って、今は関係なかったわ」


「リリ様のランクも同様とお伺いしております。どうでしょうか。もう一度だけ、チャンスをいただけませんか」


「もう一度貴方のことを見たからといって、婚約を戻すとは限りませんよ」


「承知の上です」



 婚約者の彼の真剣な眼差しに、リリは息を吐いた。そして、ロキたちを見る。



「申し訳ございません。同行を許可していただけますか?」


「お願い致します」


「はぁ。勝手にしろ。邪魔さえしなければ、俺は構わん」


「ええで。うちもその人の性格とか知りたいし」


「リリちゃんの婚約者として相応しいか、じっくり見させてもらうわ」


「リリちゃんが良いなら良いんじゃないかな」


「ありがとうございます」



〜オルタブルク〜



 リリの元婚約者を加えて六人。オルタブルクの街へと入った。


 オルタブルクの街は、他の大都市と比べればのどかである。露店で賑わうということもなく、工業が発展しているわけでもない。


 強いて言うのであれば、この街の特徴は牧畜である。市場には肉類が多く出回っており、それを使った料理を売りにして店を構える者もいる。



「さて、依頼をこなすぞ。まずは金銭面を解決する」


「はーい」


「なんかええ依頼あるかな?」


「難易度の高い討伐があると嬉しいわ」


「どんな依頼でも上手くこなしてご覧にいれましょう」



 意気揚々と掲示板を見回す。



「良いのがあったで」


「どれどれ? クレイスネークの討伐?」


「確か大型の魔物だったかしら」


「この周辺の農地で、家畜を餌にして繁殖しているそうです」


「岩石のような硬い鱗を持つ魔物です。農民では太刀打ち出来るはずもありません。刃が通りにくいため、厄介とされる魔物です。昼間は洞窟に潜んでいることが多いと聞きます」


「博識ですね、お兄さん」


「リリちゃんにええとこ見せようと頑張ってるんやね」


「微笑ましいわ。うふふ」


「からかってやるなよ。さっさと行くぞ。それに決まりだ」



 依頼に悩む時間さえ勿体ないと、ロキは即決。クレイスネークの討伐依頼を受けた。



〜オルタブルク郊外・洞窟〜



 ロキの魔法を光源に、洞窟内を進む六人。



「クレイスネークが潜む洞窟まで教えてくれてラッキーだったね」


「依頼主さんも相当困っとったみたいやな。住所特定するくらい」


「スパッと解決して、明日の分の宿代くらいまで稼ぎたいわ」


「皆様、クレイスネークは厄介な魔物です。気を引き締めてください」


「リリ、大丈夫だ。ヘマはしない。クレイスネークの動きはそこまで速くないんだろう?」


「はい。僕が読んだ本ではそう書いてありました」


「今更そんな魔物に遅れをとる私たちじゃないよね」


「姿を消して襲ってくるくらいせえへんと、うちらはやられへんで」



 それをフラグだと思ったのか、クレイスネークがフランのそばの壁を突き破って襲いかかってきた。



岩石槍(ストーンランス)



 しかし、クレイスネークがフランへ向かう間のわずかな時間で、フランは魔法を発動した。


 飛び出したクレイスネークの下から、岩石で出来た鋭い槍が伸びる。その槍はクレイスネークの鱗と一瞬せめぎ合ったが、すぐにクレイスネークの鱗を破砕した。



「なっ?!」



 驚く元婚約者の彼を他所に、今度は別のクレイスネークがシャルルへ飛び出した。



「貫通」



 結果は言わずもがな。シャルルのスキルはクレイスネークの頭部を貫通した。



「はぁ。雑魚だな」



 そして、無謀にもロキに向かったクレイスネークは、ただ一発の殴打でピクリとも動かなくなった。



「お姉さんは参加せえへんの?」


「こんな洞窟で魔法を使ったら、みんな感電するわ」


「うわぁ、それはやだなぁ」


「嫌だで済むのか? 最悪死ぬぞ」



 のほほんとした調子で会話をしながらも、次々と襲い来るクレイスネークを蹂躙するロキたち。



「凄いです。さすが、国王陛下に選ばれた方々」


「ぼ、僕にもあれくらいのことはっ」



 元婚約者の彼が前線に出る。しかし、壁を突き破って出てきたクレイスネークに虚をつかれ、傷を負った。


 しかし、彼もAランク冒険者の端くれ。傷は最小限の切り傷。かつ即座に反撃。彼の戦鎚はクレイスネークの胴にヒビを入れた。が、それだけ。狙ったのが頭でもなければ、それでは倒せない。



「くっ」


回復(ヒーリング)


「ありがとうございます、リリ様」


「いえ。ご健闘を」



 元婚約者の彼は、照れたように笑んだ。ただ、その笑みには少しだけ陰が差していた。



「ふぅ。粗方終わったね」


「重そうな魔物やな。持って帰るの大変やわ」


「はぁ、はぁ、凄まじい方々ですね」


「これほどとは思っていませんでした。この分であれば、アレクサンドラ様もさぞお強いのでしょう」


「ええ。仮にも東の魔女と呼ばれているもの。けれど、本当に、あの三人は別格よ。私で及ぶかしら」


「安心しろ。お前も十分規格外だ」



 少なくとも、安心できる案件ではない。



「まだ、僕は諦めません」



 撤収作業を始めている中、元婚約者の彼は誰にも見つからないように拳を握りしめた。

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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