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ジャン負け村人転生しようぜ  作者: リア
第四章・神話の始まり
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人々の宴

〜宿屋〜



「もぉー信じられへんわ! 何で借金なんかしとるん!」


「それに、私たちに断りもなくお金を使うなんて」


「うぅ。ごめんなさい」


「これは借金としてくれて構わない。だが、利子率だけはどうかまともな額にしてくれ。頼む」



 シャルルとロキが頭を下げた。


 ロキが頭を下げるのは初めてということで、シャルルもギョッとしている。



「反省しているようですし、私は借金にしなくとも構いませんよ。元々無かったものと思えば気になりません。国王陛下とは別に、実家から支度金は貰っていますから」


「ありがとうリリちゃん! 本当にリリちゃんは天使だよ!」


「はぁ。一番関係ないリリちゃんがそう言うんやったらうちも認めへんわけにいかんやんか。それに、うちは命まで助けてもろてんねんから、お金くらいええわ」


「お姉さんもそうするしかないわ。お姉さんだって、私の街を救って貰ったんだもの」


「みんな天使! みんなありがとう!」


「感謝する」



 シャルルが三人に抱きついた。しょうがないなぁといった表情で、三人が背に手をやっている。



「その代わり、しっかり働いてもらうで。明日からは荷運びや」


「ああ。任せろ」


「どちらへ向かうのですか?」


「お姉さんも知らないわ。シャルちゃん、どこなのかしら?」


「獣人の村だよ。この間の捕獲作戦で戦場になった場所なんだ」



 シャルルは表情に陰を落とす。



「お詫びというか、弔いに行く予定なんだよ」


「来たくなかったら来んでええで。お姉さんとリリちゃんでお留守番なり他の依頼に行くなりしてくれても」


「関係ないと言えば突き放すようだが、行って心地よい場所でもない。来る価値どころか、むしろ邪険にされるだろう」


「私は行きたいです。弔いは聖職者の務めですから。それに、戦場となったというのも人間のせいだと思いますし」


「そうね。フランちゃんが文句を言っていたのを聞いたけれど、戦場になったのではなく、彼が手を出したのでしょう? 思い切り人間のせいじゃない。同じ人間として、詫びるのは当然のことだと思うわ」


「聞かれとったんか」


「そりゃフランちゃん、あれだけイライラしながら言ってたら誰でも気にかけるって」


「俺が眠っている間に何やってたんだお前ら」



〜翌日・モンテブルク〜



「今日は獣人をよく見かけるね」


「早速効果が出とるんやろな。こんな早く効き目があるとは思っとらんかったわ」


「これでも、きっと一部よ。奴隷商人のところなんかはまだ沢山囲っているでしょう」


「彼らも生活がかかっていますから、仕方がないことでしょう。そこはもう少し時間がかかりそうですね」


「獣人さんたち、解放されたのは良いけど、結局どこへ行くのかな」


「解放するだけして、あとの生活は無視やもんな。そこまで面倒見てられへんのはわかるけど」


「それで犯罪を犯して、結局また奴隷行き、なんてことにはならないで欲しいわ」


「他の獣人さんたちの仲間に入れて貰えるなら、それが良いと思います。法の下では平等になったとしても、人間の心の中ではまだ差別意識が残っているはずですから」


「あの村に受け入れを頼んでみるか。ガラナのせいで人口はめっきり減っているだろう。あいつらとしても、人手は欲しいはずだ」


「頼んでみるだけしてみようか。何にせよ、人間の街で共存するにはまだまだ時間がかかりそうだしね」


「そうやな」



〜モンテブルク・ゲート〜



 ゲート付近では、瓦礫こそ片付けられたものの、ゲートとしての体裁は保っていなかった。


 逃げ出した獣人が、そこから続々と街を抜け出していく。



「まだ直っとらへんな」


「そりゃ、あれだけ派手に壊されたらね」


「壊すのは一瞬のくせして、作るのには何週間もかかるというのだから、不便なものだな」


「ここも白帝の仕業なのですか?」


「ええ、そうよ」



 喋りつつ、ロキたちもゲートを素通りする。



「そう言えば、リリちゃんはどうするの? まともに移動出来なくない?」


「シャルちゃんのまともは、とてもまともでは無いと思うのだけれど」


「うちはシャルちゃんにおぶさるやろ? アイリスお姉さんは魔法があるから、残りはロキ君?」


「しかし、ロキ様には荷物があります。安心してください。こう見えても私、体力には自信があります」



 ふんすっ。と、やる気を漲らせるリリ。可愛らしくはあるが、ロキたちのスピードについてこられるかと言うと。


 一分後、物の見事に撃沈していた。



「はぁ、はぁ。ロキ様もシャルル様も、速すぎます。全力で走っても追いつけませんよ」


「何だかこのやりとり、見覚えがあるわ」


「お姉さんのときと一緒やで」


「リリちゃん、ロキに乗せてもらえば?」


「リリ一人の体重なんぞ、荷物より軽い。ゆっくり歩くよりは乗ってくれた方が助かるが」


「し、しかし。殿方に抱えてもらうなんてそんな」



 頬を赤く染め、あわあわと困惑するリリ。しかしロキは、そんなリリの姿にため息を吐いた。



「はぁ。面倒くさい」


「ふぇっ?! あ、あのっ!」



 ロキは軽々とリリを持ち上げた。俗に言う、お姫様抱っこの体勢である。



「行くぞ。しっかり掴まってろよ」


「は、はひっ」



 顔を真っ赤にしながらも、リリはロキの首に腕を回した。



「いいなぁリリちゃん」


「ん? シャルちゃん何か言うた?」


「い、いや。なんにも」



〜数日後・獣人の村〜



 向かう場所が場所ということで、暗い雰囲気を払拭するように、殊更明るく話していたロキたち。


 おかげで不要な重圧をリリとアイリスに感じさせることもなく、獣人の村に到着した。


 前回のような、周囲三百六十度からの射撃もなく、実にすんなりと村に入った。



「何者や!」


「久しぶりやね。その後どう?」


「なんや、フランか。人間共が襲いに来たかと思ったやんけ」


「基本的にやけど、人間が襲いに来ることはないと思うで」


「そらお前らのことはある程度信頼しとるけど、あのガラナとかいう殺人鬼が言いふらさないとも限らんやろ?」


「うちらの権限を使ってな、獣人を捕まえるって法律を取り止めにしたんや」


「なんやて? そんなこと出来るんか!」


「あの白黒を捕まえた褒美やっちゅうことでな。せやから、仮にあいつが言いふらしたとしても、ここに来るんは無法者だけやで」


「なるほどな。それを伝えるためにここに来たっちゅうことか」


「それもあるけど。ロキ君、よろしく」


「ああ」



 返事をしたロキは、背負っていた荷物を下ろした。



「この間、うちらがここを戦場にしたお詫びや。好きに食べて」


「これは?」


「これを使って、これから私が料理を作ります。私が作ったもので口に合うかわかんないですけど」


「シャルル様、手伝います」


「お姉さんも手伝うわ。これで彼女たちに信頼してもらえれば良いけれど」


「ありがとう、リリちゃん、お姉さん。きっと大丈夫だよ。様子見してるだけみたいだし、多分ね」



 シャルル、リリ、アイリスの三人は料理の支度を始めた。ロキは火を起こすだけ。



「安心しろ。シャルの料理はそこそこの味だ」


「そう言って手伝わへんのが常やんな、ロキ君」


「俺が手伝っても良いのか? 味は保証するが、臭いは保証せんぞ」


「ロキ、やめてね」


「というわけだ。俺は手伝わん。フランがやってくれ」


「うちは村長さんと話すから。他に支援が必要なもんが無いか聞いとくわ」


「良い言い訳だな」


「言い訳ちゃうし。ほな行こか、村長さん」



 そんなわけで、ロキが一人手持ち無沙汰になった。


 何をするのかと思えば、おもむろにコソコソとシャルルたちを見ている人影に近寄っていった。



「人間っ! 食われるっ!」


「食わねえよ。なぁ、この辺りで魔物はいないか?」


「ま、魔物? そんなん聞いてどうするんや」


「ひと狩りしてくる」


「ま、魔物やったらそこら中におるけど」


「そうか。助かる」



 ロキはそれっきり興味を失ったように獣人の方は振り返らず、山の道無き道へ入って行った。



「なんやったんや、あの人間」


「さ、さぁ? 悪いやつとはちゃうみたいやけど」



 獣人はしきりに首を傾げていた。



〜数時間後〜



 獣人の村には、スパイスの効いた良い香りがそこら中に漂っていた。



「よし、出来たよ」


「良い香りね」


「はい。初めて見る食べ物ですが、これは?」


「あっ、ええ香りやと思ったらカレーやんか。うち、カレー大好きやで。リリちゃんも食べたら絶対気に入ると思うわ」


「フランちゃん、良いところに。村の人たち呼んできて」



 シャルルはフランを遣わし、彼女自身は紙皿の用意を始めた。



「あいよ。村長さん、手伝ってくれる?」


「構わへんけど、こんなツンとする香りのもん食ってええんか?」


「大丈夫やって。不安やったら、うちらが食べてるとこ見てから食べればええわ」


「そうやな」



 獣人たちの不安そうな表情と共に、村を上げてのカレーパーティが始まった。


 シャルルは口に合うかと心配していたが、それは杞憂だった。一口食べた者から嬉嬉として食いつき始め、最速でお代わりを要求する者まで出る始末である。



「大成功やね、シャルちゃん」


「うん。良かったよ」


「美味しいです、シャルル様」


「リリちゃんの口にも合ったみたいで良かったよ」


「あら? ところで、ロキ君はどうしたのかしら? 姿が見えないけれど」



 シャルルが賞賛される中、アイリスが首を傾げた。たしかに、村中を見回してもロキの姿はない。


 噂をすれば何とやら。その数分後にロキは帰ってきた。



「遅くなった。思っていたより魔物の数が多くてな。次から次へと見つかるもので、つい熱中してしまった」



 ロキはロープを引っ張っていた。背後の茂みから、ロープに繋がれた大量の魔物の死骸が転がり出る。



「ちょっとロキ! そんな獣臭いものこっちに持ってこないでよ!」


「おっと、食事中だったな。すまない。すまないついでに、俺にもカレーをよそってくれ」


「食べる前に手を洗ってよ? 近くに川があるから。もう、ご飯には間に合うように帰ってきてよ」


「はいはい」


「はいは一回。真面目に聞いてよ」



 ロキとシャルルがそんな夫婦のようなやり取りをしていると、フランが唐突に勢いよく立ち上がった。



「でかしたで! ロキ君!」


「うおっ。どうした」


「フランちゃん、食事中に席を立つのはお行儀悪いよ」


「あ、ごめんなさーい。ロキ君、事情は後で説明するわ」



 食卓においてだけは、シャルルがパーティを牛耳っている。


 ロキが手を洗って、着席すると、待っていましたというようにフランが話しかけた。



「さっきリーダーさんと話しとった内容の一つが、周辺の魔物駆逐やねん。うちらのエンカウント率的に不安やってんけど、ロキ君がやっといてくれて助かったわ。どんくらい狩ったん?」


「それをお披露目するのは食事後だな。シャルがうるさい」


「あーい」


「他にはどんな内容を話していたんだ?」


「えっと、街から出た獣人さんらの保護の話。ここの人らは別にええって言うとるけど、食料供給が追いつかへんかもって」


「なあフラン、魔物の肉は食えるか?」


「買い取ってもらえるくらいやし、食べれると思うで。なあ村長さん」


「そうやな。食えるやつがほとんどや」


「なら、俺が狩ってきた奴の肉をくれてやれ。買い取り用の素材なら皮でも爪でも角でも良いだろう」


「ロキ君が他人に親切にするなんて珍しいな」


「別にこいつらのためじゃない。こんなところまでお前らの親切心で訪れるのは御免被りたいだけだ」


「ふぅん? まあ、そういうことにしといてあげるわ」



〜数十分後〜



 共に食卓を囲むことで、リリとアイリスは知らぬ間に獣人たちと打ち解けていた。


 そこで、ロキが立ち上がり、ロープを引っ張った。



「さて。そろそろ解体を急がねえとな」


「そうやな。ロキ君の獲物がどんくらいかも見たいし」



 ロキはさらにロープを引っ張った。村の端から端までロープは続く。その至る所に魔物の死体を引っさげて。



「うわ、さすがだね、ロキ」


「ほんま、この辺の生態系変わったんとちゃう?」


「いつも通り、デタラメね」


「これだけの魔物を捕らえておきながら、一切の流血が無い。これがロキ様の実力なのですか」


「そういうことだ。解体を手伝え。リリはどこかの貴族の末娘と聞いたが、死体に耐性が無いわけじゃないよな?」


「はい。問題ありません。でなければ、国王陛下から直々に依頼などいただけませんよ」


「それじゃあ、さっさとやってしまいましょう」


「村の皆も手伝ってや」


「これのお肉は全部持って行って良いですから、解体を手伝ってください」



 同じ釜の飯を食っただけあって、シャルルの善意しかない発言をいとも容易く信じた獣人たち。彼らのおかげで作業はみるみるうちに進む。



「ほんまに、こんなに貰ってええんか?」


「神に二言はない。好きに使え」


「ありがとう。ありがたく使わしてもらうわ。ささやかすぎるお礼やけど、今晩は俺の村で食べてってくれんか。俺らの伝統料理を食わしたるわ」


「ほう。美味いんだろうな?」


「味は保証する。是非食ってってくれ」


「そこまで言うなら、招待を受けよう。お前らも、それで良いな?」



 解体作業に勤しんでいたパーティメンバーの少女らに話を振った。



「ちょっとロキ、そんな雑に振られてもわかんないって」


「構へんで」


「構いません」


「楽しみね」


「え、わかってないの私だけ? 皆聴力おかしくない?」



 シャルル一人が困惑した。


 その晩。獣人の村では盛大な宴が催された。


 人間、主にガラナのせいで甚大な被害を被った村であったが、このときばかりは、獣人も人間も関係なく笑い合えたのではないだろうか。

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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