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ジャン負け村人転生しようぜ  作者: リア
第四章・神話の始まり
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嫌な忘れ物

〜翌日・モンテブルク〜



 ロキたち五人は王都を出て、モンテブルクにやって来ていた。


 金銭に余裕がある現状では、モンテブルクで一番とも言われる宿に泊まっていた。



「さてと。今日の予定は、リリちゃんのいろいろを済ませるんだよね」


「キャンプ用品とか着替えとかやんな。腕が鳴るわ」


「お手柔らかにお願いします」



 シャルルよりも一回り小さい金髪が頭を下げる。



「それにしても、こんな小さい子が魔神の調査なんて、本当に大丈夫なのかしら?」


「国王の勅令は断れないんだろう?」


「それにしたって、こんな可愛らしい娘を先頭に出さんでもなぁ」


「親御さんとか心配してないかな?」


「先程から聞いていれば、失礼ではないですか? こう見えて、私はもう十六ですよ。親に甘える時期はとっくに終わっています」


「そうやって背伸びするところも可愛らしいわ」


「うちらが絶対守ってあげやなあかんわ」


「聞いてくださいよ」


「諦めろ。うちの奴らは人の話を聞かない奴ばかりだ」


「あはは。災難だったね、リリちゃん」



 ロキとシャルルの言い草に戦慄するリリであった。



〜アウトドア用品店〜



「リリちゃん、これなんてどうかな?」



 モンテブルクは職人の街というだけあって、キャンプ用品一つ取っても意匠が細かく、種類も豊富である。


 今選んでいるのは寝袋。リリの意見はそっちのけで、シャルル、フラン、アイリスが各々勝手に選んでいる。


 シャルルが持ってきた寝袋は、やけに目立つショッキングピンクのもの。ハート型の刺繍もあって、可愛らしいことは可愛らしいのだが。



「却下だ。どれだけこいつを目立たせるつもりしてやがる」


「ええー。可愛いのに。リリちゃんはどう?」


「ロキ様の言う通り、さすがに目立ちすぎだと思います」


「そっかぁ。じゃあ仕方ないね」



 シャルルはとぼとぼと寝袋選びに戻って行った。


 次にやってきたのはフラン。手に持っているのは、うさぎを模した着ぐるみのような寝袋である。



「リリちゃんやったら絶対似合うと思うねん! 白が目立つんやったら迷彩もあるで!」


「寝袋に可愛さを求めすぎだろう。迷彩の兎って何だよ」


「もう、ロキ君は文句ばっかしやな。リリちゃんはどう思う?」


「可愛いです」


「せやろせやろ? リリちゃんがこれ着とったら襲う自信あるわ」


「襲われるような寝袋というのはどうなのかしら」



 アイリスが苦笑いしつつ、一般的な寝袋を持ってきていた。



「珍しいな。一番フランに同調しそうなものを」


「寝袋に時間やコストをかけている暇はないのよ。あまり目立っても不利になるだけ。それよりも、普段着に手間をかけた方が良いわ。うふふふ」



 アイリスは妖しげな笑みを浮かべた。



〜服屋〜



 アウトドア用品店では、アイリスの勧めで無難なものばかり選んだ。フランは不貞腐れていたが、アイリスに耳打ちされると目を輝かせていた。



「リリちゃんってどんな服が好きなの? やっぱりフリフリ?」


「いえ、そういうわけでは。ドレスは動きにくいですし。聖女だなんて呼ばれているので、イメージ付けですね。私の仕事服のようなものです。白は好きですが」


「そうなんだ。すごく似合ってて可愛いよ」


「そ、そうでしょうか?」


「うん。仕事服なんて言うの勿体ないよ」


「え、えへへ」



 照れたようにはにかむリリ。シャルルの顔にも自然と微笑みが生まれた。



「なんて清楚なのかしら」


「なんやこの光景。尊すぎんか?」


「知らねえよ」



 二人の会話を少し離れた位置で覗く三人。



「ふへへ。リリちゃんにこんな服着せたら似合うやろなぁ」


「これなんかも良いわね。リリちゃん、小動物が好きみたいだから、きっと気に入ってくれるわ」


「お前ら、買う気の無いものを試着させるなよ」


「何を言うとんの。こんなコスプレみたいな服、買われることを予想しとらへんて」


「ええ。この品揃えは絶対に趣味で作っているわ。リリちゃんに着られるならきっと本望よ」


「はぁ。まあ勝手にしてくれ」



 フランとアイリスが気色悪い笑みを浮かべていると、リリが試着室に入った。シャルルがカーテンの外で待っている。



「どうだ、シャル。良いのは見つかったか?」


「うん。あのドレスよりは動きやすくて、尚且つリリちゃんに似合うと思うよ。いやぁ、可愛い女の子の服を選ぶのって楽しいね」


「ああ。あいつらも楽しそうにしていた」


「あはは。あんまり過激なのは置いてないみたいだから大丈夫だと思うけど、何を引っ張ってくるかわかんないからね」



 そんな話をしていると、試着室のカーテンが開いた。



「どうでしょうか?」


「うん。やっぱり無難に似合ってるね」


「あまり変わらないように思えるが。買うならもっと違うものにしたらどうだ?」



 リリが試着したのは、白のワンピース。先ほどのドレスより丈も短く、フリルも少ない。


 脚を露出することに若干の抵抗感があったようだが、その恥じらいがまた可愛らしい。



「ロキ様は、お気に召しませんか?」


「い、いや。そんなことはない」



 苦言を呈したロキであったが、上目遣いに見つめられては形無しである。



「お。ロキがタジタジだ。珍しい」


「うるせえ」


「リリちゃんはロキキラーだね。よーし、次行ってみよう」



 次にリリが試着したのは、黒いキャミソールにロゴの入った白いダボシャツ。合わせたのは、デニム生地のクロップドパンツ。



「大人っぽいっていうか、ちょっとチャラすぎかな? どう思う、リリちゃん」


「可愛いと思いますが、私には少し似合わないような」


「そうか? 可愛らしいと思うが」


「か、かわわわ」


「リリちゃん、もしかして褒められ慣れてないの? こんなに可愛いのに?」


「男の人に褒めてもらう機会がなかなか無くて、ですね。その、少し恥ずかしいです」



 恥ずかしそうにカーテンで顔を隠すリリ。シャルルが鼻を押さえた。



「萌えが鼻から出そう」


「やめておけ。リリ、さっさと着替えろ」


「ちょっと待ってもらおか。リリちゃん、次はこれ着てな」


「え、あ、はい」



 リリはフランから服を受け取り、カーテンを閉めた。



「フランちゃん、ちゃんと選んだよね?」


「当たり前やんか。うちが今までちゃんと選ばんかったことがある?」


「水着のときとか酷かったけど」


「あれはあれで、一個はまともやったやんか」


「二着渡してたみたいだけど、あのときみたいな選び方してないよね?」


「さぁ、どうやろな」


「すごく不安なんだけど。リリちゃん、着たくなかったら着なくて良いからね」


「い、いえ。そういうわけには」



 リリはそう言ってカーテンを開けた。



「さすが、何でも似合うわ」


「おぉー。これくらいなら良いじゃん。可愛いし」


「しかし、普段着にはならんだろう」


「はい。それに着にくいです」



 リリが着たのは、いわゆる巫女服。和風な服装と、金髪碧眼の彼女とのアンバランスさが一層魅力的に映る。



「買う気は無いんですよね、これ」


「やっぱ素敵やわ。ほな、次行こか」


「いつものことだけど、ファッションショーだね」


「着替える方は大変だろうな」



 ロキとシャルルはリリに同情した。しかし、同情したところでフランの勢いは止まらない。


 リリは再びカーテンを開けた。



「最っ高やわ。やっぱ金髪ときたらメイドさんやんな」


「やっぱりフランちゃんはミニスカートの方を選ぶよね。ギルドマスターのところで見た人はロングだったけど」


「たしかに、着せたくなるのはわかるな。可愛らしい」


「あ、ありがとうございましゅ」



 紺のワンピースに白のエプロンドレス。そして、何と言っても白のニーハイソックス。



「リリちゃん、そこでちょっと一回転してくれへん?」


「はい。こうですか?」


「ぐふうっ! 可愛い。そしてエロい! 見た? あのガーターベルト! スカートとの絶対領域も合わせてめっちゃエロいと思わへん?」


「え、えろっ。そんなこと、大声で言わないでください!」


「あぁ。隠さんとってや。謝るからぁ。もうちょい堪能さして」



 リリは顔を赤くしてカーテンを閉めた。そこへアイリスが現れる。



「リリちゃん、お姉さんが選びに選んだこれ、お願いできるかしら」


「は、はい」


「おいアイリス。それ、見るからに布が少なくないか?」


「言うたらあかんて。リリちゃんが着てくれへんくなるやろ」


「リリちゃん、どうか無理はしないでね」



 アイリスは服をカーテンの下から入れた。


 しばらくして、ゆっくりとカーテンが開く。



「これはさすがに、恥ずかしいです」


「カーテンはそのままで良いわ。少しだけ見させてもらうわね」



 リリが少しだけ開けたカーテンの隙間に、団子のように四人が重なった。



「ふはっ!」


「想像以上の破壊力ね」


「ロキは見ちゃだめ」


「手で目を隠すな。それをされるくらいなら退く」



 白のチャイナドレス。それが今、リリの身につけているものである。チャイナドレスと言っても、丈は膝元までしかない。その上、腰のあたりまでスリットが伸びている。



「腰あたりまで切れてるのに、パンツの紐が見えないんだけど、もしかして?」


「ええ。下着は履かせていないわ。その方が扇情的でしょう?」


「さすがお姉さん! よう分かっとる!」


「こ、これ以上見ないでください! 恥ずかし過ぎます!」



 リリはニヤニヤする女子たちを押し出し、カーテンをシャッと閉めた。



「あら残念。そうそう、次の服は水着だと思って。下着は履いても良いけれど」


「お前、今度は何を着せるつもりだよ」


「それは見てのお楽しみよ。うふふ」


「こ、これを着るんですか?」


「サイズは合っているはずだけれど」


「いつ測ったんですか!」


「目でちょっと。お姉さん、そういうの得意なのよ」


「さすがお姉さん。憧れるわ」


「ごめんね、リリちゃん。うちの女性陣が」


「それ、お前も入ってるぞ、シャル」



 今度も同じように、カーテンがゆっくりと開いた。しかし、開いたのは目一つ分。また同じように、女子三人が団子になる。


 ロキは思った。傍から見てこんなにシュールな光景があるだろうかと。



「ふおぉぉ」


「ねえお姉さん、さっきからずっと、フランが奇怪な声を漏らしてるんだけど」


「可愛いでしょう?」


「いや、可愛いけどさ」



 最後に試着したのは、モコモコした生地で出来た水着のようなサイズの代物。限界ギリギリまで短く作られたスカートと、スポーツブラと大差ないトップス。


 羊をエロ可愛くデフォルメしたような、そんな愛らしさである。



「終わりです! アイリス様の選んだ服はもう金輪際着ません!」


「えぇ。エッチくて可愛ええのに」


「夜の男も女も皆揃って悶絶するわよ?」


「エッチなのはいけないと思います!」



 少ししか開いていないカーテンを、リリは音を立てて閉めた。



「ほなシャルちゃん、真面目に選ぼか」


「最初から真面目に選んでよ」


「まったくです!」



〜冒険者ギルド〜



 リリを怒らせながらも、どうにか普段着を買い揃えたロキたちは、冒険者ギルドへやって来ていた。


 冒険者ギルドでは、貸金受付だけでなく、銀行としての役割も担っているのである。



「金群百個も持っとったら危なっかしいもんな」


「盗まれる危険はないと思うけれど」


「このメンツだしね」


「しかし、持ち運びに不便ですから」


「口座は俺名義で良いか?」


「ええで」



 ロキは受け付けへ向かった。



「口座の開設を頼む」


「承りました。本人証明ができるものを提出お願いします」


「ああ。これで良いか?」



 ロキはアビスブルクで作った身分証を手渡した。


 それと同時に、ロキは嫌な記憶を思い出した。



「聞きたいことがある」


「何でしょう?」


「シャル! ちょっと来い!」


「何?」


「俺たちには借金があったはずだ。それがいくらか調べてくれ」


「承りました。そちらの方も、身分証を提出お願いします」


「あったね、そんなの」



 今まで一銭も返していなかったが、ここでようやく思い出したようだ。



「これだけあれば返せるよね」


「二人分でだいたい金群四十個ある。二年かそこら借りっぱなしだったが、返せないことはないだろう」



 二人は知らない。これが盛大なフラグであることを。



「二人合わせて、金群百個です」


「は?」


「え?」


「金群百個です」



 ロキとシャルルは呆然自失となった。冷や汗がダラダラを流し、手元の金群を取り出す。



「すみません、これで払います」



 言ってしまった。ロキとシャルルの新たな借金生活が、今始まる。

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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