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ジャン負け村人転生しようぜ  作者: リア
第四章・神話の始まり
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状況確認

〜一週間後・王都〜



 真っ白く、明るい部屋の中。それもベッドの中でロキは目を覚ました。



「ここは?」


「ロキっ! よかったっ!」



 目を覚まして、白い天井の次に写ったのは、シャルルの白い髪と肌、それから紅い目であった。その紅い目の周りは、泣き腫らしたのか、赤くなっている。


 どうやらシャルルは、ロキが寝込んでいたベッドの横でずっと看病をしていたらしい。



「フランちゃん、ロキが目覚めたよ!」


「んぅ? ロキ君? ほんまや! ロキ君!」



 シャルルが、彼女の向かいで眠っていたフランを起こした。


 すぐさまロキは、寝転がったままでも両手に花の状態となる。二方向から抱きつかれ、ロキは体を起こすこともできなかった。



「あ、ごめんロキ! 痛くなかった?」


「あ。ごめんな、病み上がりやのに」


「問題ない。それより退け。重い」


「ちょっと! 女の子に重いなんて失礼だよ!」


「でも、ほんまにいつものロキ君みたいで安心したわ」



 ロキは左手をついて上体を起こした。



「どこか痛むところはない?」


「どっか記憶が飛んでたりせえへんか?」


「気絶する前のことは覚えている。確か、白帝とやらに左手を喰われて」



 ロキは今ついている左手を見た。目を擦ってもう一度見た。


 感触を確かめるために触ったり、にぎにぎしたりもした。



「腕が戻っている?」


「すごいでしょ? この国で一番凄腕の回復魔法士の、聖女って呼ばれてるに魔法をかけてもらったんだよ」


「あれは回復というか、もはや再生やったわ。ほんま、世の中には凄い人がおるもんやで」


「俺が倒れてからはどうなったんだ?」


「ロキ、それより先に国王陛下のところに行かないといけないの。色々と話があるんだって」


「歩ける? 肩貸そか?」


「問題ない。それより、何用だ?」


「私たちも聞かされてない。三人一緒に来て欲しいんだって。あ、それからガラナさんと」


「げっ。あの人も来んの? うち、あの人トラウマになってんねんけど」


「あの人の方が私たちを怖がってると思うよ。だって腕を刺されて地面に埋められたんだもん」


「お前ら、そんなえげつないことしてたのか」


「あはは。まあ、この話もおいおいにしとこか。まずは王城へ行くで」



〜王城〜



 人類の叡智が結集して出来た建物の最上階。そこに、ロキ、シャルル、フラン、ガラナ、そしてアイリスが膝をついていた。


 そこへ入場するのは、国王とその妹、姫である。



「面を上げよ」


「はっ」



 五人は恭しく国王と目を合わせた。



「この度は依頼を達成してもらってありがとうございます」


「お兄ちゃん国王陛下、言葉遣いを直してください」


「もう良いだろう。これから何度か顔を合わせるようになる仲だ。気兼ねなく話させてくれ。貴方達も、それで良いですか?」


「は、はぁ」



 ペースが狂う国王たちである。



「さて、来ていただいたのは他でもありません。あの白帝と名乗る魔物の件です。無属性魔法、尋問(クエッショニング)の使い手に調査をさせました」


尋問(クエッショニング)は、秘密にしていることも喋らせることが出来る魔法なんだよ」



 姫が補足する。



「しかし、それでも奴は口を割りませんでした。いえ、言えることだけを言ったという感じですね。その内容は、奴の主人、魔神とやらが復活の準備を始めているということです。どうして街を襲ったのかと聞くと、魔神の復活に必要な条件を満たすためだと。それ以上に話すことはせず、舌を噛み切って自殺しました」


「こんなことも言っていたよ。クククッ。強化の無い我は神獣四天王の中でも最弱。良い気になるなよ人間共。って」


「そこで。貴方達に再び依頼がしたいんです。シャルルさんとフランさんから話は聞いています。強化有りの白帝を倒したあなた方に、魔神の調査をお願いしたい。可能であれば、神獣四天王の残りも打倒し、更には魔神も。魔神とやらの目的は分かりませんが、良くないことは明らかです」


「国王の勅令ということかしら?」


「その通りです。よろしくお願いします」



 国王の命令とあっては逆らうことも出来ず、五人は頷いた。


 それを満足そうに見た国王は、明るく言った。



「では、あなた方のこれからを決めてしまったお詫びをしましょう。白帝捕縛の報酬も兼ねて」



 国王が指を鳴らすと、何故か宰相が、金群のピラミッドを運んできた。その段数は七段。合計にして百四十個である。



「この度の依頼の報酬と、それから支度金です。是非これで装備を整えてください」


「こ、こんなに?」


「太っ腹やなぁ」


「一体はミルクの街で討伐してくださったようですから、白帝よりも強いとされる神獣があと二体残っています。危険な旅となるでしょう。そこで、国王権限であなた方に聖女を同行させます」


「この腕を治した奴か。会ってみたいと思っていた」


「でも、大丈夫なんですか? 聖女様がいなくなっては、この国の医療は」


「問題ありません。彼女一人失っただけで倒れるような、やわな政治はしていませんから。聖女様、お入りください」



 ロキたちが入室したのと同じ扉が開いた。



「失礼致します」


「こいつが?」



 ロキが疑問を持つのも無理はない。


 扉から現れた彼女の背は低く、顔立ちも童顔。金髪でふわふわした髪は腰のあたりまで伸びており、肌は白く、精巧で可愛らしい人形のようである。


 衣服もまた純白。控えめなウエディングドレスとでも表現しようか。裾を引きずるようなことこそ無いものの、清純さを象徴するようなロングスカートである。また、その至る所にフリルがあしらわれており、頭にティアラを乗せればお姫様と言って何ら違和感がない。



「聖女などと、大層な呼び名はおやめください、国王陛下。私の名はリリ。リリ・クラージュです」


「というわけで、クラージュ家の末の娘、リリさんです」



 あどけない見た目の割に、大人びた言葉遣いである。生まれと素質から、そうならざるを得なかったのであろう。



「この六人で、魔神の調査、もしその目的が国を害するものであれば討伐をお願いします」


「発言よろしいでしょうか」


「なんですか、ガラナさん?」


「僭越ながら、国王陛下の命令に異を唱えたく存じます」


「理由を聞かせてください」


「魔女殿、ロキ殿、シャルル殿、聖女殿、そして私めがその依頼を受けることは納得出来ます。しかし、そこの桃髪は獣人です。獣人風情に国王陛下の勅令など分不相応かと存じます」



 そう発言し、ガラナは宰相と目を合わせた。



「その通りでございます、国王陛下。獣人など、この空間を共有しているというだけで吐き気がします」



 明らかな嫌悪感を滲ませて、宰相は言った。



「うち、キレてもええ? 軽くこのお城をボコボコにしたいんやけど」


「フランちゃん、落ち着いて」



 小声でシャルルがフランを宥める。そんな彼女らには目を向けず国王は首を傾げた。



「そうですか? 見た目は人間と変わりませんが」


「騙されているのです、国王陛下。私は見ました。この女が獣の耳を携えていたところを」


「この国の法律で、獣人は奴隷行きと決まっているではありませんか。即刻捕らえて奴隷商に売り飛ばしましょう」



 ガラナと宰相は初めから手を組んでいたらしい。


 国王は苛立ちを顔に出さなかったが、隣の姫は訝しげな視線を二人に向けていた。



「はぁ」



 ここで、国王とロキのため息が重なった。国王は二人の態度に呆れてであるが、ロキのため息は。



「このままガラナが何も起こさなければ、もっと有意義なことに使えたはずなんだがな」


「何のことだい?」


「国王陛下。依頼の報酬、一つ忘れていないか?」



 シャルルがロキに敬語を使うよう言おうとするが、国王がそれを手で制した。


 国王はロキの意図を察したようで、語調を明るくして言った。



「そう言えばそうでしたね。僕がどうにか出来ることなら、何でもしましょう」


「そうか。なら、奴隷に関する一切の差別を禁止し、人間と同様に扱うこととしてくれ」


「なっ?!」


「そのようなこと、出来るはずがない! いったいどれだけの不利益を被ると思っている!」


「しかし、出来ることは何でもと言ってしまいましたし。法律を整備し直すということで良いですか?」


「ああ。構わん」



 宰相の反駁を無視して、国王とロキの間でトントン拍子に話が進んでいく。



「これでフラン様が依頼を受けるに当たって問題は無くなりました。何か文句がありますか?」



 トドメに国王は宰相へ問いかけた。宰相は言い淀み、それ以上は何も言えなくなった。ガラナも同様である。



「それでは、話は以上です」



 国王は退出した。謁見の間には、ロキたち六人と宰相だけ。



「ちっ」



 宰相は舌打ちをして出て行った。残されたのは六人。



「獣人なんぞと組む気は無い。俺は勝手に行かせてもらう」



 死亡フラグのようなセリフを残して、フランとロキを睥睨してからガラナは退出した。



「勝手にどうぞ! ベロベロべー! あいつほんま腹立つわ!」


「うふふ。仕方ないわ。年寄りは頭が堅いもの。いつまでも因習に縋っていたいのよ」


「お姉さん、久々に会ったけど、毒舌増してない?」


「それよりも、何故アイリスがここにいる?」


「当たり前じゃない。人形越しにシャルちゃんの悲鳴が大音量で流れたんだもの。心配にもなるわ」


「そう言えば、あそこらへんの会話全部お姉さんに漏れとったんやな」


「最終的に皆無事だったみたいで良かったけれど」


「それもこの子のおかげだね」


「ああ」



 親しげに話す四人の中に、入れないでいる少女が一人。四人の視線が彼女に向いた。



「改めまして、リリ・クラージュと申します。これからよろしくお願い致します」


「礼を言う。腕を治してくれてありがとう」


「私からもありがとう」


「うちからも」


「お姉さんからも」


「い、いえ。職務を全うしただけですので」



 リリは褒められることに慣れていないらしい。赤くなって恐縮している。



「可愛ええなぁ。ちょっと抱きしめてもええ?」


「だ、抱き? ええ? 初対面ですよね?」


「困っているところも可愛いわ。抱きしめるのも仕方ない可愛さね」


「はみゅっ?!」


「あ、お姉さんずるいわ」



 前からアイリスの双峰、背後からフランのなだらかな山に挟まれて、リリはじたばたともがいていた。



「お姉さんもフランちゃんも、ほどほどにね。お姉さんは、仕事は良かったの?」


「いいのよ。勅令じゃあ仕方ないわ。代わりも置いてきたし、いざとなれば連絡手段だってあるもの」


「なんも心配はあらへんってこと?」


「そういうこと。むぎゅー」


「それ以上はやめろアイリス。リリが窒息する」



 ロキは小柄なリリの体から、アイリスとフランを引っペがした。



「大丈夫か? 悪いな。うちの痴女共が」


「ち?!」


「誰が痴女やの」


「そうよ。お姉さんはリリちゃんがあまりにも可愛いから、抱きしめたくなっただけなんだから」


「お姉さん、そのセリフは犯罪臭がするよ」



 シャルルがアイリスにツッコミを入れると同時に、アイリスはリリの異変に気がついた。



「あら? リリちゃん、赤くなってどうしたのかしら?」


「もしかして、痴女ってワードが原因やったりする?」



 リリの顔はより赤くなった。



「え、もしかしてビンゴ? うち、割と冗談のつもりで言うたんやけど」


「いくら幼いとはいえ、シャルちゃんより初心な反応をする娘がいたなんて、いじめがいがあるわ」


「やめて! リリちゃんには手を出さないで! こんな純粋な子に!」


「たしかに、シャルより純粋だな。痴女ごときで顔を赤らめるなんて」


「ま、またっ!」


「ロキまで虐める側に回らないでよ!」



 リリが羞恥心で目を回すまで、このからかいは続いた。

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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