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ジャン負け村人転生しようぜ  作者: リア
第三章・東方見聞録
31/78

依頼を阻止する依頼

〜数日後・冒険者ギルド〜



「ロキ、ロキ。これどう?」


「なにそれ。破格の報酬やんか」


「隣町まで貴族が乗る馬車の護衛か。報酬の額も納得だな」


「つい最近Dランクに上がったからさ、これも参加できるよ」


「貴族の護衛にか? Dランクでは役不足だろう」


「できるだけ多く雇って、襲われる確率を少しでも減らしたいんやろな」


「それに、ランクが低いとお金で言うことを聞かせやすいんじゃない?」


「なるほどな。参加してみるか?」



 シャルルとフランが頷こうとしたとき、冒険者ギルドの扉が勢いよく開いた。


 冒険者ギルド内の喧騒が少し大きくなる。



「あれ、アイリスお姉さん。どうしてここに?」


「あなたたちを探して来たのよ」


「うちら、これから依頼を受けようと思っとったんやけど」


「どうしても付いてきて欲しいところがあるのよ」



 アイリスのいつもの笑顔が、少し真剣みを帯びている。



「俺たちの収入を奪ってでも、ついてこさせたいのか?」


「申し訳ないとは思うけれど。お礼は必ずさせてもらうから。あなたたちの強さを見込んで」


「はぁ。そこまで言うなら、行ってやるか」


「おぉ。ロキが珍しく人の頼みを聞いた」


「シャル、お前、人を何だと思ってやがる」


「傍若無人な自称紙」


「おい、字が違うぞ」


「それ以外は否定せえへんのやね」



 アイリスは真剣さを引っ込め、くすくすと笑った。



「フランちゃんとシャルちゃんも、お姉さんのお願いを聞いて貰えるかしら」


「うん」


「お姉さんの頼みやからな。無視することは出来ひんよ」


「だが、謝礼は期待させてもらうからな」


「うふふ。ご期待に添えるよう、検討しておくわ」



 冒険者ギルドを出ようと背を向けたアイリスが安堵のため息を吐いたことに、ロキたちは気づかない。



〜ミルク・郊外〜



「最近、この街道に魔物が沢山出て困っているのよ」


「それを俺たちに退治して欲しい、と?」


「そういうことよ」


「それやったら、別にうちらやなくても」


「冒険者ギルドに依頼でも出せば良いんじゃないの?」


「それは、今すぐにして欲しかったからよ。それに、あなたたちの実力は旅の途中で見せて貰っているし。下手に素人に任せて、失敗されると困るもの」



 アイリスの笑顔に、どこか焦りが見える。



「というより、なんでアイリスお姉さんがこんな依頼をするん? 街道に魔物って、結構な一大事やんか」


「普通、もっとお偉いさんが解決に当たっても良いよね」


「え。そ、それは。そう。お姉さんの商業ギルドのお偉いさんに頼まれたのよ。それで、あなたたちを斡旋したの」


「ふぅん?」


「一度上に言ってしまったからには、実行しないわけにはいかなくてね。だから依頼を引き止めてでもお願いしたのよ」


「まあ、そうなんやろな」


「間が気になったが、それは気にしないでおくとしよう」



 アイリスの笑顔が柔らかくなった。



「さて、仕事を始めるとするか」


「フランちゃん、ここ最近の修行の成果を見せてよ」


「任しとき!」



 笑顔に余裕が戻ったアイリスが、頬に手を当てる。



「フランちゃん、何をしていたのかしら?」


「この街に来てから新しい魔法を閃いたと言っていた」


「この間、エレキマウスを探すのにすごい手間取ったやろ? やから、索敵用の魔法があれば便利かと思って」


「私たち、索敵とかに関してはとことん運がないもんね。頼むよ、フランちゃん」


「いくで! 索敵(サーチ)!」



 しかし、なにもおこらなかった。



「くっ。やっぱりお手本も無しに魔法は使われへんのかな」


「どうなんだろうね。出来たら面白いんだけど」


「世の中、そう上手くはいかないだろう。はぁ。また地道に探すしかないのか」



 三人揃って方を落としたとき、アイリスが手を叩いた。



「実はお姉さん、索敵用の魔法が使えるのよ」


「えっ、そうなん?」


「そういえばお姉さん、魔法使ってるところ見たことないね。属性は?」


「雷よ」


「商人には使いどころが無いわけだ」



 ロキが納得したように頷いた。



「お姉さん、はよ索敵の魔法見してや。参考にさして」


「ええ。探知電波(エレクトロサーチ)



 見た目には、なにもおこらなかった。



「向こうの森の中ね」


「あかん。全然参考にならへん」


「やっぱり属性も違うし、参考には無理だよね」


「諦めて、さっさと討伐に向かうぞ」


「はーい」


「またね、お姉さん。お姉さんは街で待つでしょ?」


「お姉さんもついて行くわ。上司から、結果を詳細に報告するように言われているのよ。大丈夫。足でまといにはならないわ」



 強引にもついてこようとするアイリスに、三人は顔を見合わせた。



「そうだな。ならこれを持っていろ」


「あ、お姉さん。意味はないけど、私のも貸してあげる」


「これは何かしら?」


「魔物避けやで。これを持っとるだけでちょっと魔物が寄り付かんくなるんやって」


「って、もしかして。今まで遭遇率が悪かったのってこれのせい?」


「馬鹿言え。範囲なんて知れているだろう。それに、一度気づかれたら意味を成さない」


「何にしても、ありがとう。これでお姉さん、安心して付き添えるわ」



〜十数分後〜



 いつもより随分短い時間で獲物を発見した。


 今回の獲物は、リアンクロウ。その名の通り、リアンブルーのカラスで、空に擬態する。大きさは大型の鷹くらいだろうか。


 そのため、近くに接近するまで存在が分からないことが多いのである。その上雑食で、大抵の物は食べることが出来てしまう。商人の天敵と言って良い魔物であろう。



「フラン」


「わかっとるよ。小石礫(スロウストーン)



 フランは手で拳銃の形作り、その人差し指から小石を飛ばした。


 見事命中である。


 怒ったリアンクロウは急降下。フランの元へ一直線。重力も味方につけて、結構な速度で向かってくる。



「はっ!」



 そこをロキが横から飛び出し、叩く。


 グエッというカラスどころかカエルのような呻き声を上げて、羽を撒き散らしながら木に激突した。ちなみに、体毛が焦げているものの、流血は無し。



「よし、上手くいったな」


「どうして胴体がひしゃげているのに流血がないのかしら」


「熟練の技というものだ」


「あはは。謎だよね」



 笑いながら、フランが引き付けたもう一羽をシャルルが串刺し。こちらは流血あり。フランには浴びせていないが。



「この囮作業、ほんまに怖いんやから。はよ終わらせてや」


「ああ。当然だ」


「別にフランちゃんなら防御も出来るでしょ?」


「いや、それにしたって高速で嘴が飛んできたら怖いって」


「まあ、そうだな。さっさと終わらせることには賛成だ」


「終われば、ね」



 アイリスが笑顔を暗くする。それに焦ったのはフランだ。



「ちょっ、アイリスお姉さん! 不吉なこと言わんとってや!」


「だって、お姉さんの索敵に新しい魔物がどんどん近づいてくるんだもの」


「あ、ほんとだ。いっぱい羽が見える」


「げぇ。ほんまやんか」


「はぁ。一掃出来れば楽なんだがな」



 ロキがため息を吐きつつ、フランの方をちらりと見る。



「無茶言わんとって。飛んでる敵を一掃なんて、地属性には出来ひんわ。いや、出来ひんことはないけど、地形が変わってまう」


「え。フランちゃん、そんな魔法使えるの?」


「そら、理論上出来ひんことはないで。これの大岩バージョンを連投しまくればええんやもん。シャルちゃんも出来るやろ?」


「いや、無理無理。先に魔力が切れるって。それに私、魔法をそんなに高くまで飛ばせないし」


「えっ」



 自らが異常であることに、今更気づいたフランであった。



「嘘やろ。うちもロキ君やシャルちゃんと同類? うちだけはまともな人間やと思っとったのに」


「おい。酷い言い草だな」


「フランちゃん、打ちひしがれる気持ちもわかるけど、今は魔物に集中して」


「せ、せやな」



〜数十分後〜



 フランが確かな精神的ダメージを受けながらも、討伐は順調に進んだ。



「神を害するなんぞ百年早い」


「さすがね。もう片付いてしまったわ」


「案外すぐに終わったね」


「これならあの依頼にも間に合うんちゃう?」


「ま、待って! まだ魔物がいるわ」


「まだ反応があるのか?」


「えぇ。これだけやってまだいるの? さすがに多すぎじゃない?」


「愚痴言うてもしゃあないって。で、お姉さん、その魔物はどこにおるん?」


「え、えーと」



 アイリスは冷や汗を流した。



「この際だ。さっさと終わらせるぞ」


「じ、実はお姉さん、魔力効率が悪いみたいで。いるってことはわかったのだけれど、どこにいるかまでは分からないわ」


「え? でも、魔力がないんやったら倒れたりするはずやねんけど」


「魔法の効果が中途半端になるっていうのも聞かないよね」


「あ、それは」


「怪しいな。何か隠していないか?」



 ロキの疑いの目がアイリスに向かう。


 焦ったアイリスは、長い水色の髪で隠しながら、何事か小さく呟いた。幸いなことに、ロキたちは気づいていない。



「魔物、言いたくないような場所にいるとか?」


「ここからめっちゃ遠いとか? 気を使って言われへんの?」


「おいおい、それは面倒だぞ」


「いいえ。逆よ。言いたくないほど近くにいたの」



 アイリスの背後から現れた、巨大な魔物。見た目で言えば、ティラノサウルスである。大きさも、その比喩に違わず、女性にしては長身のアイリスの、倍ほどはあるだろうか。



「お姉さん!」


液状化(リキューファクション)!」



 咄嗟にシャルルが飛び出し、アイリスを抱えて避けた。


 フランの魔法で、ひとまずは足止めである。



「どうなってやがる! こんなデカブツ、見逃しようがないだろ! 探知は節穴か!」


「あまりに大きくて岩かと思ったのよ。こうやって責められるから言いたくなかったのに」


「というか、木よりデカいのになんでうちらまで気づかんかったんやろ」


「疑問は後だよ! 何故かあんまり動かないけど、早く倒そう! 氷矢(フリーズアロー)!」



 シャルルの魔法がティラノサウルスへ向かう。決して遅くはない速度で向かったのだが、ティラノサウルスはそれをしゃがんで避けた。



「うそぉ!」


「ぅらあっ!」



 次はロキが向かう。反撃を恐れずに真横から拳をかざした。だが。



「あれっ?!」



 真後ろにバックステップで避けたのだ。文字通り神のスピードを持つロキの、視覚すら難しいボディーブローを。



「デカブツのくせになんて速度してやがる!」


「こいつ、ロキ君が動く前から動いてたで! 相当頭が良いみたいやわ!」


「いや、ロキの攻撃が単純すぎただけじゃないの」


「大抵の魔物は速さでごり押せるんだ。だがこいつは違うらしい」


「うちの魔法も全然効いてへんみたいやしな」



 フランの魔法により、地面に足が埋まっているはずだったのだが、上手く抜け出したらしい。



「次はもっと上手くやる」


「ロキ、手伝うよ」


「援護は任しとき! 岩石砲(ロックブラスト)!」



 まず、フランがティラノサウルスの側面から岩石を射出。が、またもやバックステップで回避されてしまった。



「こいつ、バックステップしか出来ねえのか」


「見るからに横からの衝撃に弱そうだもんね。じゃ、私の番、行くよ!」



 バックステップの着地点へ、シャルルが入り込んだ。そのまま懐へ潜り、刺突を繰り出す。


 ワンパターンなティラノサウルスは、またもやバックステップ。しかし、それをロキが許すはずもない。



「沈め」



 ティラノサウルスのジャンプの最高点。ロキがそのさらに一つ上へ現れた。デタラメなジャンプ力である。


 そして、燃え盛る拳を振り下ろした。



「は?」



 ティラノサウルスは避けた。空中にいる状態からどうやって避けたのかと言えば、急速に降下して。


 さしものロキも困惑を隠せない。



「何あれ。物理法則無視しとるんやけど」


「無理があるでしょ。何なのあれ。魔法だったりする?」


「あいつ、本当に生き物か? 攻撃されているのに反撃する様子もない」


「ぎくっ」



 アイリスの口から、犯人のような言葉が漏れた。



「アイリスお姉さん、何か知ってるの? 倒し方とか知ってたら嬉しいんだけど」


「い、いいえ。聞いた事がないわ」


「どないすんの? 無害っぽいし、放置する?」


「だが、依頼としてはそれで良いのか?」


「もう少しだけ観察してみましょう。襲ってくる様子が無ければ、無視して良いわ」


「はーい」



〜数時間後〜



「動かへんなぁ」


「なぁ、いい加減俺は飽きたぞ」


「そだねー。こんなの作っちゃうくらいだもんね」



 ロキたち四人は、人数分のハンモックを木にかけていた。


 というのも、何かと言ってはアイリスが引き止めていたのだ。



「もう良いだろう?」


「そうね」


「はーい。やっと終わりだぁ」


「撤収やな」



 結局ロキたち三人は、貴族護衛の依頼を受けることが出来なかったという。

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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