水着を選ぶだけの話
〜数日後〜
ロキ、シャルル、フランの三人は、いくつか依頼をこなし、少しだけ生活に余裕が出るくらいの稼ぎを得た。
ロキの部屋でそんな数日間のまとめをしていると、ちょうどそこへアイリスが訪れた。
「また来ちゃったわ」
「あっ、お姉さん!」
「見計らったようなタイミングで来たな」
「いらっしゃい! 丁度暇しとってん! 皆で何かせえへん?」
「それなんだけれど、お礼の内容を決めたわ。三人とも、来てくれるかしら?」
三人は揃って首を傾げた。
〜水着屋〜
「じゃじゃーん! 好きなものを選んで良いわよ」
「わぁ。ほんとに?!」
「ええの?!」
「お姉さん、こう見えて結構稼いでいるのよ。それに、この店はお姉さんと同じ商業同盟に加盟しているから、都合をつけることもできるわ」
「ちょうど欲しいと思っていたところだ。助かる」
「ここで水着を買って、一緒に遊びましょうね」
「シャルちゃんの、うちが選んでええ?」
「うん! じゃあ逆に、フランちゃんのは私が選んでみても良い?」
「うん、ええよ」
少女二人が楽しそうにはしゃぐのを、ロキは遠目で見ていた。なぜならこの水着売り場は、女性物ばかりだからである。
この二人に連れ回されすぎて、女性服店に入ることに抵抗が無くなっているロキであった。
〜数十分後〜
シャルルとフランは、互いに商品を袋に入れて持ってきていた。試着してからのお楽しみということらしい。
「はい。シャルちゃんはこれとこれな。試着してみてどっちがええか決めよう」
「うん。フランちゃんはこれとこれね」
「じゃあ、まずはシャルちゃんから行ってみましょうか」
シャルルが入った試着室の中から「え、これ着るの?」などという声が漏れてきた。フランは黒い笑みを浮かべている。
「もうええ?」
「う、うん。でも、もう少し心の準備を」
「てーい!」
シャルルの言葉を無視して、フランがカーテンを開けた。
「ぴゃっ!」
「あらあら、大胆ね」
「むふ。ええやんええやん。眼福やわぁ」
「それっ、馬鹿にしてない?」
シャルルが着ていたのは、いわゆるマイクロビキニ。局部に白い布地が少しあるだけで、他は紐だけ。
シャルルの肌が白いこともあって、遠目から見ると、何も着ていないようにさえ見える。
「なぁシャル、それ、裸と変わらなくないか?」
「ロキは見ないで! もう! この水着の布面積少なすぎるって!」
「それがええんやんか。はぁ。そそるわぁ」
「色気があって良いと思うけれど、でもお姉さん、それを着て海水浴場に行くのはどうかと思うわ」
「そうだよね! やっぱりこれはおかしいよね! もう着替えるからっ! あー恥ずかしい!」
シャルルは勢い良くカーテンを閉めた。
フランが残念そうに眉尻を下げる。
「そう思うんやったら着んかったらよかったやんか」
「そうなんだけど、せっかくフランちゃんが選んでくれたから着ないとって思って」
フランの眉が上がった。
「なぁシャルちゃん。そんな可愛いこと言われたらガチ恋してまうんやけど。カーテン開けて今すぐ飛び込んでええ?」
「えっ! ダメダメ! 今何も着てないから!」
「尚更飛び込みたいんやけど。もうええやんな。うち、我慢できひんで」
「いや、ダメだって!」
「大丈夫。今このお店には男の人おらんから」
「ロキがいるでしょ! フランちゃんの目は節穴か!」
「ロキ君やったら見いひんって。入るで」
「わ、ちょっと!」
シャッとカーテンを開けた。そこには次の水着に着替える途中のシャルル。局部は何とか手で隠している。
ロキはといえば、マイクロビキニを見るなと言われて以来、試着室の方に顔を向けていない。
「見ないでぇ! ってロキ、ほんとに見てないし!」
「見て欲しかったん? ぐへへ。うちが思う存分見たるからな」
「いやぁ! 変態がいるぅ! 助けてぇ!」
フランが息を荒くしてシャルルに近づいていく。
そのままシャルルと試着室の中に入って、カーテンを閉めた。
「おじさんが着替えさせてあげるねぇ」
「うわっ! キモい! フランちゃん、さすがにそれはキモすぎるよ!」
「ほーら、足開いて」
「ちょっ、フランちゃん力強くない?!」
「シャルちゃんが可愛いからあかんねんで」
「意味わかんない。ああんっ! そこはダメっ!」
「ここがええのんか?」
「はぁんっ! ダメだってばぁ!」
「そうは言うても体は正直やで?」
百合の花が咲き乱れる試着室のカーテンを、アイリスが思い切り開けた。
せっかく着かけた水着を擽ってでも脱がそうとするフランと、局部を隠しつつも抵抗するシャルルの姿が晒された。
ロキは変わらずそっぽを向いているが。
「こぉら。そういうことは家でしなさい。ここはお店よ」
「はぁい。家でするわ」
「家でもしないで! それよりお姉さんは早くカーテン閉めて!」
「あら、ごめんなさい」
フランは渋々試着室から出てきた。一瞬のうちにシャルルがカーテンを閉める。
スキルが発動しているくらいの速度であったが、フランはしっかりと、防御が無くなったシャルルの局部を凝視していた。
試着室の中から、シャルルの荒い息遣いを聞くことしばし。
「はい、いいよ」
「御開帳ー。わぁっ。可愛ええやんか!」
「これでも結構恥ずかしいんだけど。布面積少ないし」
「恥ずかしがることないで。めっちゃ可愛いもん」
「お姉さんも可愛いと思うわ」
シャルルが着ている水着は、赤いビキニタイプ。その胸部と腰周りには白のフリルがついている。
「そう、かな。ロキはどう思う? って見てないし」
「ああ、見てよかったのか?」
「今は良いよ。感想、聞かせて?」
「ふむ」
ロキはシャルルの全身を舐め回すように見た。シャルルは恥ずかしそうに身を捩る。
「良いじゃないか。よく似合っている」
「そうかな。えへへ」
「デレデレしちゃって。羨ましいわ」
「フランちゃん、焼きもち? 可愛いね」
余裕の笑みを浮かべるシャルル。
フランはカチンと来たらしい。
「そうやな。胸元のフリルはおっぱいを大きく見せるらしいし、シャルちゃんにはピッタリな水着やわ。それにしたら?」
シャルルにも青筋が浮かんだ。
「あらあら、喧嘩はダメよ? 次はフランちゃんの番ね。手早く進めましょう?」
「はぁい」
アイリスの仲裁で、二人の溜飲は下がったようだ。
「はい、じゃあフランちゃん、交代ね」
「はーい。どんなんか楽しみやわ」
「私はまともなのしか選んでないから、安心してね」
「暗にうちがまともやないって言っとるんやけど、喧嘩売ってるってことでええの?」
「喧嘩はダメよ」
ほんの些細なところで喧嘩が再発しそうだったところを、アイリスが止めた。何かと世話焼きな人である。
「じゃーん。どう?」
「おー。可愛い」
「似合っているわ」
フランが着ているのは、ピンクと白のボーダー柄ビキニ。小ぶりではあれど、女らしさを象徴する二つの丘がしっかりと強調されている。
「ロキ君、どう?」
「良いと思うぞ。やはりフランには桃色だな」
「んふふ。ありがとう」
「はい、じゃあフランちゃん、次お願いね」
「えー。もうちょっとロキ君に見せつけたいんやけど」
「それは海に行ったときにして」
「はーい」
フランは次の水着を試着し始めた。着にくいらしく、格闘する声が漏れ出てくる。
「はい、ええで」
「じゃあ開けるね?」
カーテンが開いて現れたフランは、全体が白い水着を纏っていた。率直に言えば、白いスクール水着である。
「んふふ。可愛いよ」
「あんまり装飾がなくて落ち着かへんねんけど」
「少しサイズが合っていないのかしら? 少し食いこんでいるわ」
「いやいやお姉さん、それが良いんだよ」
「そうなの? ああ、なるほどね」
アイリスは少し疑問に思っていたようだが、しばらくフランを見つめると、何か納得したように頷いた。
「ロキ君、どう? 可愛ええかな?」
「いや、可愛い云々より、少し透けていないか?」
「へ?」
「あ、気づいた?」
「ちょっ、ちょちょちょ! シャルちゃん! なんてもの着せとるん!」
フランは慌ててカーテンを閉めた。
「私も最初に見たときに、へぇそんなのあるんだって思ったよ」
「やからってそんなん友達に着せる?!」
「お姉さんも発想に驚いたわ。なかなかお洒落なことをするのね」
「いや、お姉さんも何言うとるん! 乳首とか透けとるんやろ?! お洒落も何もないやんか!」
「いやいや、ちゃんと見てよフランちゃん。そこは透けてないから」
「え?」
フランは姿見鏡を見る。
すると、その白いスク水が、水玉模様のように透けていることがわかった。ギリギリ局部は隠れているが、そのチラリズムは男共を誘惑すること間違いない。
「なんやこれ。無駄に凄い技術やな」
「でしょ? 面白いよね」
「だが、可愛いかと言われると微妙なところだな」
「それはそうね。さっきの水着の方が良いと思うわ」
「そうやね。はぁ、ビックリした」
「えっへへ。ドッキリ大成功だね」
「もう、シャルちゃん心臓に悪いわ」
結局、シャルルはフリルの水着、フランはボーダーの水着を購入してもらった。
さて、次はロキの番。と思いきや。
「お姉さんも新しい水着を買おうかしら」
「アイリスお姉さん! 是非うちに選ばして欲しいわ!」
「私も選びたい!」
「お願いできる? 可愛いのをお願いね」
「おい、俺の水着は」
「やった! いつかスタイルええ人の服を選んでみたかってん!」
「なに? また喧嘩売ってるの?」
「いや、そういうことちゃうって」
一瞬だけ険悪な雰囲気を出しながらも、和気あいあいと水着選びにはしゃぐ少女二人。ロキは完全に置いてけぼりである。
「ロキ君、今のうちに、ロキ君の水着、選びに行きましょうか」
「助かる」
アイリスの優しさが身に染みたロキであった。
〜数十分後〜
「アイリスお姉さん!」
「どっちの水着がより似合うか選んで! うちとシャルちゃんの勝負やねん!」
「またやっているのかお前ら」
「うふふ。良いわ。試着して決めましょうか」
ロキは自分の買い物袋を片手に、肩を竦めた。まだまだ付き合わされそうだと、ため息を吐きながら。
「まずはうちが選んだのから。どうぞ!」
フランがシャッとカーテンを開けた。
フランが選んだのは、黒の紐ビキニ。少女二人とは格が違う双球が零れ落ちはしないかと不安になる。
「どうかしら? 少し恥ずかしいわ」
身を捩る度にブルンと揺れる主張の激しい胸部。経験のない男子共が見れば卒倒するような光景である。
「ふぉぉ。迫力があるおっぱいやわ」
「ぐむう。羨ましい」
「ロキ君、どうかしら?」
「良いんじゃないか?」
「うふふ。余裕綽々ね。ならこれでどうかしら」
何故かアイリスはそのままの格好でロキの腕に絡みついた。当然、ロキには双球の感触が伝わってくるわけで。
「ちょっ! お姉さん何してるの!」
「せっかくだから、ロキ君を悩殺してみようと思って」
「無駄だ。そんなことより、シャルがうるさいから離れてくれ」
「あら、釣れないわね」
アイリスはぱっと離れた。試着室に戻り、カーテンを閉めてシャルルの水着に着替える。
「ロキ君、気持ちよかった? あれが女性の感覚やで。うちで良ければもう少し触らせてあげるけど」
「もう! フランちゃんまで!」
「いらんと言っているだろう。押し売りはお断りだ」
「じゃあ引き売りやったらええの? じゃあロキ君、お手を拝借。えいっ」
フランはロキの手を引き、自分の胸に押し当てた。
「どうや? アイリスお姉さんほどちゃうけど、ちゃんとあるやろ?」
「はぁ。余計なことをするな。またシャルが」
「えいっ!」
シャルルは、ロキの反対側の手を、自分の胸元へ押し付けた。
「ど、どう? 無くはないでしょ?」
「はぁ。お前らなぁ。俺で遊ぶんじゃない」
「あらあら。着替えている間にロキ君が破廉恥になっているわ」
「なったんじゃない。されたんだ」
「うふふ。対抗心を燃やして、可愛い娘たちね」
今一瞬だけ、アイリスの目が開いた。
ロキとシャルルは見ていなかったが、フランは見ていたようだ。ロキの右手に、ブルリと震える感触が伝わってきた。
フランの恍惚とした表情にロキはある種の恐怖を覚え、両手にかかる少女の力を振り払った。
「どうかしら? お姉さん的にはこっちの方が良いと思うのだけれど」
「んー、でも、せっかくのスタイルが見えへんしなぁ」
「そうだよね。さっきのを見たらこっちのが地味に見えるよ」
次にアイリスが着たのは、南国風のパレオ水着。色にせよ柄にせよ、水着としてはこちらの方が派手なのだが、先程の凶悪な水着を見た後では霞んでしまう。
「お姉さん、やっぱりうちが選んだやつの方がええって」
「お姉さんはこれの方が気に入っているのだけど」
「悔しいけど、フランちゃんの言う通りだよ。今回はフランちゃんの勝ちだね」
「あの、お姉さんはこっちの方が」
「諦めろ。あいつらは一度決めると言うことを聞かない」
自身の意見はほぼ無視され、アイリスは結局フランが選んだ水着を購入したのだった。
「いやー、ええ買い物やったなぁ」
「ほんとにね」
「はぁ。俺のことはすっかり忘れているみたいだがな」
「あっ! ロキの水着も見なきゃ!」
「ほんまや! すっかり忘れとった!」
「大丈夫よ。ロキ君はお姉さんと一緒に買いに行ったから」
「え、どんなの買ったの?」
「忘れるような奴には見せん」
「ごめんやんか」
「海水浴に行くまでのお楽しみということよ」
意見を無視された二人は、仲良さげに微笑み合ったのだった。
お読みいただきありがとうございます。
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