マリアブルク誘拐事件
〜マリアブルク〜
報酬を受け取り、商人と別れたロキたちは、冒険者ギルドへ報告に向かっていた。
「すごいね。露店がいっぱいだよ」
「折角だ。何か買っていくか?」
「うち食べ物がええわ。パンと干し肉やったらお腹膨れへんかってん」
「おいシャル、あれはなんだ?」
「あれはお餅だね。あれの元になるお米は、東の特産品なんだよ。買ってみよっか」
「うち食べたことないわ。どんな味なん?」
「私も食べたことないよ。話で聞いただけ。すみませーん、串餅三つくださーい」
「はいよ。銀貨四枚ね。別嬪さんが二人もいるんだ。銅群五個はおまけだよ」
「ありがとうな、おっちゃん」
「まいどあり!」
串餅片手に再び歩き出す三人。
「話で聞いてたのより伸びないね」
「伸びるものなのか」
「まあ食べ歩きで伸びられても困るしなぁ」
「お餅の醍醐味は無いけど美味しいよね」
「ああ。もう一本頼めば良かったな」
「こんな美味しいものがいっぱいあるんかな? 目移りしてまうわ」
実際に、南方では珍しい食べ物、アクセサリーの数々に目を奪われていた。
「はっ。こんなことしてる場合じゃなかった。ギルドに行かないと」
「待てよシャル。まずは食べてからだ」
「シャルちゃん、こっちにシャルちゃんに似合いそうなネックレスあんで」
「なんてこった。二人が屋台の魔法に捕えられちゃった」
「無駄口はいい。さっさと食え」
「ネックレスの値段見たらめっちゃ高かったわ。屋台やからって安いわけちゃうねんな。ロキ君、うちもなんか食べさして」
「え、私が変だったの? 食べるのが正解?」
何やかんや言いながらも、少しずつ冒険者ギルドへ進んでいった。
〜冒険者ギルド〜
三人は、依頼の報告を終えるとすぐに魔物の素材買取へ。
「全部で金貨一枚です」
「ありがとうございます」
道中で倒したエレキマウスは全て売り払った。電気を通さないあの毛皮は、何かと便利らしい。
「さて、次の依頼だが、どうする?」
「何かを探すんはもう勘弁やで。採取系は向いてへんわ」
「そうだね。やっぱり討伐依頼が楽だよ」
「とはいえ、Eランクの身分ではな。せいぜい小型の魔物くらいだぞ」
「それでもその方がええやん。動物やったらまだマシやわ」
「迷うくらいならやってみようよ! 行こう!」
〜マリアブルク周辺〜
三人は、腰を曲げて、ひたすらに何かを探していた。
「もう、誰やこの依頼選んだんは!」
「シャルだな」
「いけると思ったんだよ!」
三人が探しているのは、エレキマウス。草むらに擬態する小型の魔物である。
「というか、討伐だけならさっきの護衛でやったやんか!」
「死体を持っていかないといけないんだと」
「なんで売ったの! あれがあれば無償でクリア出来たじゃん」
「おい、俺のせいにするのか」
「あかんあかん! 仲間割れしとったら! 気分転換に、もっと画期的な方法でやろう!」
「例えば?」
「餌で釣るんや。ロキ君、ちょっとチーズ買ってきてくれる?」
「なるほどな。了解だ。すぐに戻る」
ロキは全速力で戻った。
ちなみに、アビスブルクにて身分証は作ってあるため、ゲートを通る際にお金はかからない。
ものの数分で、ロキは戻ってきた。
「それを置いて待とか。商人の馬車から盗むくらいやし、置いといたら絶対来るって」
「本当かな?」
半信半疑なシャルルであった。
〜夕方・冒険者ギルド〜
突然だが、釣りは待ちが肝心である。
しかし、ロキたちにそれは関係がない。いかにすばしっこい魔物であろうと、シャルルとロキに及ぶものはないのである。
つまり、奴らが姿を現したが最後、ロキとシャルルの囲い込み猟が始まるということだ。
「はい、金貨一枚です。こんなにエレキマウスを狩る人は初めてですね」
「あはは」
「ありがとうございます」
依頼報告と素材買取が済んだロキたちは、冒険者ギルドを出た。
〜マリアブルク・街頭〜
外は暗くなり、屋台の喧騒はなりを潜め、代わりに宿屋の呼び込みが始まっていた。
そこで、シャルルの袖を引っ張る少女がいた。身長は、ロキの腰あたりまでしかない。
「お兄さんとお姉さんたち、宿は決まってるの?」
「え、私たち?」
「決まってへんよ」
「私のうちの宿、来ない?」
こてんと小首を倒す少女。
シャルルとフランの心臓が撃ち抜かれる音がした。
「ロキ、この子の宿にしない?」
「こんな可愛ええ子がおるんやで?」
「別に安ければどこでも構わん」
「一泊一部屋で銀群が、えっと、これだけ!」
「四個?」
「やーん可愛い!」
「ふむ。少し高いが、三人で銀群八個なら安いものか」
「ロキ、良い?」
「構わん」
「やった! ほな行こか!」
「うんっ!」
少女の笑顔にフランとシャルルは骨抜きになっていた。
〜宿屋〜
「ママぁ! お客さん!」
「いらっしゃい!」
「おぉ。でっかい」
「シャルちゃん、失礼やで」
「だが言いたくなるのもわかるな」
恰幅のいい壮年の女性。この宿の女将らしい。
「二部屋で二泊だ」
「はいよ。金貨一枚と銀群六個ね。うちは先払いだよ」
「はい」
「まいど! 食事はどうする? おまけさせてもらうよ」
「ほな、ここで食べていこか。ええやろ、ロキ君?」
「ああ」
シャルルとフランが少女の給仕に興奮していると、宿屋の扉が再び開いた。
「いらっしゃい!」
「一泊だ。食事もな」
「はいよ! 食事付きで銀群五個だね」
「ああ」
ロキたちのテーブルの隣のテーブルについたその男は、いつぞやのスキンヘッドだった。
ロキからすれば、冒険者ギルドで絡まれて以来。一年ぶりである。
当然、ロキが覚えているはずがない。
「あ? お前は」
スキンヘッドはロキを見て何かを言おうとしたが、ロキの方が興味を失って視線を外した。
スキンヘッドはフランとシャルルの姿を見て、三人に見えぬようにどす黒い笑みを浮かべた。
〜深夜〜
フランとシャルルの部屋で、カチャリと音がした。
ひっそりと開けられた扉から入ってきたのは、スキンヘッド。
ベッドですやすやと寝息を立てる美少女二人を見て、彼は舌なめずりをした。
「あの野郎、こんな美味そうな女を二人も捕まえやがって。あいつには勿体ねえよなぁ?」
スキンヘッドは掛け布団に手をかけた。寝間着姿の二人が彼の目に飛び込む。
スキンヘッドはさらに笑みを深め、二人の口元へ慎重にテープを貼った。そして、ロープを使って手足を縛り上げる。
「んんっ! んー!」
「起きちまったか。まあいいさ。その状態じゃあ何も出来ないだろう」
縛り上げたところで、シャルルが目を覚ました。
いくらロキと鍛えているとはいえ、シャルルはまだ少女。ロープを引きちぎるような腕力などない。
スキンヘッドは眠ったままのフランを抱えた。
「じゃあな。こいつは貰っていく」
「んー!」
「なんだ? お前も俺のモノになりたいのか?」
スキンヘッドはいやらしい笑みを浮かべた。途端にシャルルは青ざめる。
「心配するな。お前の貧相な体なんぞいらん。せいぜい、あの小僧に助けを求めることだな」
そして、スキンヘッドはフランを袋に入れ、サンタの要領で窓から出て行った。
〜翌朝〜
「いつもならシャルが起こしに来るはずなんだが、まだ寝ているのか?」
そんなこととは露知らず、ロキはゆっくりと目を覚ました。
「はぁ。たまには俺が起こしてやるか」
ロキは着替えた後、欠伸をしながら隣の部屋をノックした。
「おいシャル、フラン。今日は訓練しないのか?」
返事がない。既に日は昇っているというのに、起きていないということはないだろう。
ロキは訝しんだ。そして、気がついた。鍵がかかっていないことに。
「入るぞ」
ロキが入ったそこには、手足を縛られ、口をテープで塞がれたシャルルが、涙ながらに這いずっていた。
暴れていたのか、寝間着のシャツのボタンが取れている。
「おいシャル! どうした! まさか、そんなものに目覚めたのか!」
ロキは慌ててテープを外し、縄を解く。心配のベクトルがズレている。
「違うよ! フランちゃんが攫われたの! あのスキンヘッドに!」
「どのだよ」
「昨日いた人! 前に冒険者ギルドでも見かけた! ナイフ投げて来た人!」
「そんなやついたか?」
「いたよ! それよりフランちゃんを探し出さないと!」
ロキは室内を見渡した。
フランは確かにいない。いるのは、ボタンが取れた寝間着の胸元を隠しているシャルルだけ。
「なんの恨みがあるか知らんが、大それたことをしてくれたものだな」
「早く探そうよ!」
「ならさっさと着替えろ」
「それを言うなら出てけ!」
追い出されて数分後、着替えて荷物を持ったシャルルが出てきた。
「ロキ、一回部屋の中を探したんだけど、何も痕跡はなかったよ。フランちゃん、無事だといいけど」
「さて、どうだろうな。昨日の深夜だろう? 今頃どこかへ逃げ去っている可能性もある」
「もしフランちゃんに何かあったらって思うと」
「話していても仕方がない。探すぞ。全速力でな」
「うん!」
その日、疾風のような速度で屋根を走る物体が現れたと、街は騒然となったという。
〜路地裏〜
「んー! んー!」
「元気の良い小娘だ。こいつは犯しがいがありそうだな」
フランが目覚めたときには、この場所に連れてこられていた。
手足を縛られ、口を塞がれたフランに抵抗の術はない。
目が覚めるたとき、突然スキンヘッドの大男が眼前にいれば、誰しも恐怖を覚えるだろう。
「まずはどこから食べてやろうか」
「んー!」
「くひひ。そう焦るなよ」
これから何をされるのか、なまじ想像が出来てしまうだけに、フランの恐怖は相当である。
「まずは上から剥ぐか」
「んー! んー!」
「あの小娘よりも食べ応えがありそうだしな」
スキンヘッドは舌なめずり。フランの顔はさらに恐怖で歪む。
スキンヘッドは、フランの寝間着のボタンを下から一つずつ外し始めた。
一つ外す毎に手を止め、フランの表情を楽しんでいるらしい。趣味が悪い男である。
下から三つ、ボタンが外れた。フランの真っ白な腹部と、小さな臍が顕になる。
「思った通り。細くて美味そうだなぁ。やっぱりあいつには勿体ねえ」
「んー! ん!」
フランは必死で抵抗する。身を捩り、スキンヘッドの手から逃れようと。
しかしスキンヘッドはそれさえも楽しんでいるようで、一層笑みを深めた。
「さぁて。お楽しみはこれからだぜぇ」
四つめのボタン。肋骨の下部が姿を表した。
あとボタン一つで、フランの大切な部位が顕になる。
嫌悪感と羞恥心で、フランの顔は真っ赤に染まった。
「良い反応だなぁ。安心しろ。可愛がってやるからよぉ」
「んー!」
スキンヘッドが五つ目のボタンに手をかけたとき、水音がスキンヘッドとフランの耳に入った。
スキンヘッドが、音源、フランの下腹部に目をやる。
寝間着のズボンからは、黄色がかった液体が滴っていた。
フランは恐怖のあまり、失禁してしまったのである。
「くっはは! 本当にいい反応だな! こっちにも手をつけて欲しいのか? ん?」
フランは涙を流しながら首を横に振った。
ぴちょん、ぴちょんと寝間着から尿が滴る。
スキンヘッドはそれが大層気に入ったようだった。
「ご要望通り、先に手をかけてやるよ」
「んー!」
スキンヘッドがフランの寝間着のズボンに手をかけた。
そして彼は、フランの絶望に染まった表情を見ようと顔を上げる。
「は?」
耳が生えていた。円形の、モフモフとした耳。
動物で言うならば、コアラの耳である。
「獣人なのか?」
スキンヘッドは耳の感触を確かめた。
「ん! んんっ!」
「本物だ」
そこで落胆するかと思いきや、彼は口角を上げたのだ。
「ふははは! お前は最高だ! お前を犯す理由まで自ら作るだなんてな!」
この国の中で、獣人は奴隷。
奴隷が主人にどんな扱いを受けていようと、気にとめる者はいない。
「お前は最高の女だ。さぞ、綺麗な体なんだろうな」
「んー!」
スキンヘッドは再びズボンに手をかけた。
あわや、フランの恥部が顕になるかというその瞬間。
「やっと見つけたぞ」
屋根の上から、路地裏にいるスキンヘッドとフランを見下ろすロキの姿があった。
お読みいただきありがとうございます。
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