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ジャン負け村人転生しようぜ  作者: リア
第二章・冒険者育成教室
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冒険者始めました

〜一年後・冒険者ギルド〜



「はい。承りました。あなたがたは、今日から冒険者です」



 受付の女性に微笑まれたのは、男一人美少女二人の三人組。ロキとシャルル、それからフランである。



「まずはFランクからのスタートになります。依頼をこなして、高ランク冒険者を目指すのも良し。低ランクの依頼で小遣い稼ぎをするも良し。ご自由になさってください」


「よし、早速依頼をこなすぞ」


「うん!」


「そうやね」



 意気揚々と掲示板に張り出された依頼用紙をチェックする三人。最低ランクだけあって、その内容はどれも雑用ばかり。



「くだらない依頼ばかりだな」


「あはは。トイレ掃除まである」


「自分でやれって感じやわ。ほんまに小遣い稼ぎにしかならんみたいやな」


「せっかく冒険者育成教室で教育を受けても、これでは気勢がそがれるだろうに」


「まずはシステムに慣れろってことじゃない? だから無理やりにでも簡単な依頼を引っ張ってくるのかも」


「なるほど。賢いな、シャルちゃん」


「それが目的だとするなら、この辺りは適当に受けてさっさとランクを上げるぞ」



〜数時間後・アビスブルク郊外〜



 ロキが最初に手に取った仕事は、初心者の典型、薬草採取。



「見つからへんなぁ」


「薬草がそこら中に生えていたら、さすがに依頼なんて来ないだろう」


「だよねぇ。しかも見分けにくいし。いい加減腰が痛くなってきたよ」


「なんで栽培せえへんのやろ」


「栽培で足りない分をこうして依頼に回しているんだろう。なら少しは生えていて良いと思うんだが」


「群生してるところとかあるのかな」


「依頼書読んでみる?」


「そうだな。どれどれ? 湿った日陰の薄暗い土地」


「ここ、がっつり草原なんだけど。太陽暑っついんだけど」


「ロキ君、ちゃんと見といてぇや」


「面目ない」



 こればっかりは、ロキもしょんぼり反省した。



「で、ここ、いつもの森やん」


「結局戻ってくるのか」


「良いじゃん。ここなら魔物も出ないし、薬草採取に専念できるよ」


「さっさと終わらせるぞ」



 ロキたちは森林地帯へ足を踏み入れた。


 毎週通っていた彼らは迷うことなく進んでいく。



「そういえばこんな草生えてたね」


「まったく気にしてへんかったな」


「訓練場所になっているだけあって、踏まれているものが多いな。もっと奥まで行くか」


「はーい」



 ずんずん奥まで進む彼らであったが、どこもかしこも彼ら自身で踏破したところばかり。



「自分で自分の首を絞めることになるとはな」


「予想外やね」


「あ、あったよ!」



 シャルルが踏まれていない薬草をようやく発見した。しかも、その周辺にはその薬草が群生している。



「ラッキー! 早く終わらせようよ!」


「ああ、そうだな」


「ってシャルちゃん、後ろ!」



 薬草を踏み分けるようにしてやってきたのは、いつぞやに出会ったホーンディア。


 振り返ったシャルルと目が合う。


 シャルルはホーンディアの足元を見ると、先程までの笑顔を凍てつかせた。



「せっかく見つけた薬草をよくも! 氷矢(フリーズアロー)!」


「あ、待ってシャルちゃん! そこで貫通性のある魔法なんて使(つこ)たら!」



 案の定、シャルルの魔法はホーンディアの皮を食い破り、周辺に血液を飛び散らせた。



「あっ」


「はぁ。やりやがった」


「もう! またふりだしやんか!」


「ごめんなさぁい!」



 こうしてシャルルたちの冒険者稼業は先行き不安な幕開けとなったのだった。



〜翌日・冒険者ギルド〜



 結局、昨日は一日中薬草を探す羽目になったのだった。それも、多くの魔物と遭遇し、その度に薬草を血に濡れさせながら。


 森林地帯の付近で野宿をし、今に至る。



「薬草の報酬より、魔物の素材のほうがよっぽど儲かるじゃねえか」


「昨日のエンカウント率は異常やったもんな」


「嫌がらせだよ絶対。あれでいくつの薬草が血に濡れたか」


「シャルが先走って刺すからだろうが。俺なら血を出さずに狩ることもできたのに」


「まあまあ。シャルちゃんも役に立とうとしとったんやって。逆効果やったけど」


「うぅ、ごめんなさい」



 愚痴り合いながら、今日もまた依頼を漁る。


 なんでも、ホーンディアの角を採集して欲しいとの依頼があり、同時に達成したのだとか。


 おかげで彼らは二つ依頼をクリアしたことになり、ランクは一つ上のEランクへ。小型魔物の討伐依頼なども受けられるようになった。



「なあフラン、ちょっといいか?」


「なんやロキ君?」


「もうちょっと近く」


「うん?」



 密着とはいかぬものの、肩と肩が触れ合いそうで触れ合わないくらいの距離まで詰めた。



「お前の両親、この街にはいないんだよな?」


「うん、多分。どこの奴隷商人のとこへ行ってもパパとママはおらんかったし。さすがに買い手が付いとったらわからんけど」


「街で見かけることは、って思ったけど、獣人って外で見ないよね」


「基本的に奴隷は家で扱き使われとるから。よっぽどのことがない限り、外には出さへんみたいやで」


「獣人というだけで奴隷扱いだというからには、目に触れることさえ嫌うのかもな」


「それじゃあ奴隷を買う人はいないよ?」


「ようわからんけど、気分のええ話とちゃうな」


「すまない。こんな話をするつもりではなかった」


「ごめんね、フランちゃん。もうちょっと気をつけるよ」


「うん。ありがとう。ほんで、ロキ君。本題は?」


「お前の目的は両親を探すことだろう? アビスブルクから出たほうが良いんじゃないか?」


「それもそうやね。定住してる家があるわけでもないし」


「そこでこの依頼だ。移動に丁度いいと思わないか?」



 ロキが差し出したのは、商人が所有する馬車の護衛。


 南の大都市アビスブルクから、東の大都市マリアブルクまでの街道を護衛するというものだ。



「ロキ君らがええんやったら、そうさして。うちに付き合わしてるみたいで気い引けるんやけど」


「いいんだよ。私、場所にこだわりは無いし。強くなれればそれで良いから」


「俺に至っては目的すら無いからな。生きていけるだけの収入があれば良い」


「ありがとうな」



〜翌日・アビスブルク・ゲート〜



 ゲート内には、一つの幌馬車と、ロキたち三人がいた。



「今日はよろしく頼みますね」


「ああ。よろしく頼む」


「よろしくお願いします」


「よろしく頼んます」



 小太りな男性の御者と共に、三人はゲートから出た。



「すみませんね。商品がいっぱいで乗ってもらうことは出来ないんです」


「構わん。馬車に乗るより走った方が速い」


「そうやんな。もうちょっと速い乗り物ないんかな?」


「そんなものがあれば、流通に革命が起こるんですけどねえ」



 苦笑する商人。ごもっともである。



「私、気になってたんですけど、どうして安全で近い王都経由にしなかったんですか?」


「物見遊山ならそれで良いんですけどね。商品を持っていると関税がかかるんです。それなら、冒険者を雇った方が安くつくんですよ」


「さすが商人さんやなぁ。よう考えてはるわ」


「それに、この街道は草原ばかりで魔物も少なく、安全ですから、尚更というわけです」


「俺たちとしては、依頼が来て万々歳。利害が一致したわけだ」



 時間と共に、ゆっくりと馬車は進んでいく。



「アビスブルクからマリアブルクまでって、結構近かったですよね。どのくらいで着きそうですか?」


「このペースであれば、明日の昼頃には着きますね」


「一泊する必要があるのか?」


「馬も生き物ですから。休ませないといけないんです」


「近いって言うても回り道やからなぁ。そら一泊もするて」



 シャルルとロキは、気がついていなかった。彼らの速度、持久力が異常であることに。


 ロキに至っては、馬力すら馬を超えている。この文章からして、異常さがわかってもらえるだろう。



「ただ、魔物が少ないには少ないんですが、この街道、少し厄介なところがありまして」


「なんだ?」



 商人が答えるより早く、フランが首を傾げた。



「あれ? なんか今黄緑っぽいのが通ったような気が」


「ああ。来てしまいましたか。そいつが厄介の原因です」


「魔物か?」


「はい。エレキマウスという魔物です。すばしっこい上に小さくて、その上麻痺まで付いてくるので、手を焼いているんです。いくら護衛をして貰っても対処出来なくって」


「そら大変ですね」


「ですので、もう自然への還元だと思って諦めているんですよ」



 苦笑が板についている商人の元へ、シャルルが小走りに寄って行った。


 若草色で、いかにも草むらに擬態していそうな毛並みのネズミをその手にぶら下げて。



「エレキマウスってこれ?」


「ああそれですそれです。いや、本当に困ってまして」



 言いながら、商人は固まった。シャルルは馬車に合わせて歩きつつ、首を傾げている。



「それって、え?」


「あ、盗まれてた商品はきちんと中に戻しておきましたよ」


「いやそういうことではなく。え、麻痺は?」


「ロキがデコピンしたら死んじゃったみたいですね」


「あの普段着の方がですか?」


「おい、普段着だからといって侮るなよ」


「信じられへんかもしれませんけど、そうなんです。ロキ君、力が異常に強くて」


「仮にそうだとしても、あんなに素早いのに」


「私とロキで囲い込みました」


「なんかの遊びみたいになっとったな。エレキマウスもどうしたらええかわからんくなっとったで」


「そこをバチンと、というわけだ」



 その光景を例えるならば、超少人数且つ超高速の「かごめかごめ」のようなものだろうか。あるいは、南アジア某国の国技か。


 商人の苦笑がどこかへ消え去った。



「護衛としての役目はなんとかなりそうだね」


「ああ。これで盗まれていたら冒険者失格だったな」


「いや、こんなん出来んのロキ君らだけやで」



 フランの言葉に頷くことしか出来ない、異常慣れしていない商人の姿であった。



〜夕方・街道〜



「ここらで野宿にしましょうか。テントの設営をお願いします。食事を用意しますので」


「分かりました」



 商人が幌馬車の中の荷物を漁っている間に、三人はテントを設営した。


 いつも通り、一箇所に集合させて。


 そこへ商人が戻ってくる。



「パンと干し肉しかありませんが。って、近くありませんか?」


「いつもこんなものですよ」


「なんだ、離した方が良いか?」


「あ、いえ。大丈夫ですが」



 美少女二人とテントが近いとあって、少し照れが入った商人。苦笑いにも嬉しさが混じっている。


 質素に夕食を済ませた後、ロキ達は眠りにつこうとテントに入ろうとした。そこを商人が止める。



「あの、夜番は?」


「ん、ああそうか。今日は馬車があったな」


「じゃあ夜番、順番ね」


「ほんならまずはうちから行くわ」


「あ、じゃあ次は私で」


「おい、俺に朝を任せるのか」


「早い者勝ちだよ。ね、フランちゃん」


「ねー」


「こいつら」



 怒りを顕にするロキ。だが、諦めたようにテントへ入った。シャルルも自分のテントに入った。



「いつもはどうなさっているんですか? 夜番はしないような言い草でしたけど」


「あの二人、魔物避けっていうのを持ってるんです。それで魔物は寄ってこうへんくなるんですよ」


「そんな便利なものがあるんですか?」


「そうみたいですよ。どこで手に入れたんかは知らないですけど」



 これは嘘。フランはシャルルから入手方法は聞いていたが、将来の商売敵を増やさぬため、嘘をついたのである。



「そうなんですか。また探してみます。おやすみなさい」


「おやすみなさい」



〜翌日・正午〜



 ロキたちと幌馬車は、今日も快調に進んでいた。



「みなさん、あれがマリアブルクのゲートです」



 ロキたちの新天地、マリアブルクはもうすぐだ。

お読みいただきありがとうございます。

アドバイスなどいただけると幸いです。

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