黒豆
父は休日、畑で色々作っている。じゃがいも、タマネギ、かぼちゃ、とまと、ブルーベリー、じゃがいも(2期)、さつまいも。毎年バラバラ。
その中でも、毎年そこそこに作っているものがある。
『黒豆』だ。
黒豆はスーパーで買うと結構なお値段がする。畑で作れば簡単…てことはないのだが(天日干しと殻から実を取るのが大変)とにかく毎年作っている。
感の言い方ならお気づきだろう?
今まで黒豆料理なんて出て無くない……?
***
ある日のことだった。居間でくつろぐ家族に父が言った。
「お母さん。お父さんが作った黒豆って、どこにあるの?」
「……」
「え?! 黒豆?? 鳥の餌にしてるのかと思ってた!!」
「C、やめろ。……お父さんが可哀想だろ」
そんなこんなで出てきた黒豆。まるでへそくりの如く隠されていたそれは、大量にあった。
「……ちょっと、これはヤバくない?」
「新しいのは親戚に配るか……」
「え? 豆って生鮮食品じゃないの?(古いのうちらが食うの?)」
「大丈夫だ。腐ってないから、煮れば食える」
「ほほぅ……」
ジップロックに小分けして、黒豆に凝っている従兄弟のお姉さんに多めにあげて、とにかく配った。そして残った、古い黒豆達。
(今まで料理しなかったのだから、これは私がするしかないのだろうな)
ゲンナリしながらも、調理を開始した。
***
古い豆は固くなっているので、前日の夜から水を張ったボールの中に2合分くらい浸す。
次の日。
(あんまり変わって無くない?)
と思いながらも、ご飯と一緒に炊き込む。豆ご飯である。初めは家族全員何も言わずに食べていた。1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目……と続いたある日、父が言った。
「豆ご飯……飽きた。白いご飯が食べたい…」
もの凄く長いため息を吐きながら、黒豆ご飯を美味しくなさそうに食べる父。
「さすが農家の子。白飯大好きすぎる的な」
「いや、ちょっと続けすぎだろ。体には良いと思うけど」
「えええぇぇぇぇ??」
兄の言葉に私は納得いかなかった。だって黒豆作ったの父じゃん。だったらどうやって消費しろと?
「甘く煮れば良いんじゃね?」
「えええぇぇぇぇ??」
私は思った。うちの家族、おせち料理(買ったやつ)で最後に残るのはいつも黒豆の煮付けである。
(絶対こいつら作っても食べないと思う)
しかしながら言われたので作ってみる。
毎年あずきしか煮ない鍋(石油ストーブ用)に1日水に浸した黒豆を投入。水も入れてコトコト煮込む。2回ほど水を交換する。コトコト煮込む。煮汁が少なくなったら水を足し、柔らかくなるまで煮込む。柔らかくなったら、お好みで砂糖を入れる。数日おくと思ったので結構甘く作る。焦げないように木べらで混ぜる。ちょっと塩を入れる。
(出来た……!!)
後は粗熱が取れたらタッパーに移し、冷蔵庫に保管するのみ。
(そして食すのみ)
そう、思ったのだが……。
1日目、母と私が食べる。
2日目、母が食べる。
3日目、母と私が食べる。
4日目、母が食べる。
「……食べないのかよ!!!???」
「え~~??」
「食べるって言ったじゃん!!」
「言ってない言ってない。作ったら? って言っただけ」
「それって=食べるってことだろ!!??」
「イコール付いてない付いてない」
「付いとるわ!!!!」
私は強硬手段に出た。
夕飯時、黒豆を小皿に分けて出した。1人1日あたりのノルマを課したのだ。
父、何も言わず食べる(出せば食べるのかよ?!)
母、毎日食べているので特に何も無し。
兄、1回で口の中に全部かき込んで食べる。
私、普通に食べる。
私は思った。
(お父さん どうして黒豆 作ったの)
C、心の俳句が生まれたのだった。
※現在も黒豆とは格闘中。




