キャベツ
ある日のことでございます。私は土日に何を作ろうか台所の周りをうろうろしていました。野菜室をのぞき込むと、玉のように真っ白な1つの塊が。しかしその隣には、まだ半分しか使われていない同じ代物がありました。どうやら、間違って買ってきてしまったようです。
(oh my 仏陀……)
私は頭を抱えたのでした。
*****
次の金曜日まで(私が料理をするまで)には、そのキャベツはくたばるだろう。むしろ、半くた(半分)の奴の命は今日か明日までだ。そう思った私はキャベツをそっ……と切った。
1/4は一口大に切り、ジップロックに入れて冷凍保存。それをもう2袋作る。これでいつでも簡単にキャベツを使用できる。
その次は1/4のキャベツをなんちゃって千切りにして耐熱皿に移し、ラップをふんわりかけてレンジでチンする(時間は適当)。冷蔵庫にあった、いつ開封したか分からないけど匂いが変じゃないから大丈夫と判断したごまドレッシングをかけて和える。『即席キャベツサラダ』のできあがりだ。
次の1/4は一口大に切ったじゃがいも、人参、タマネギと一緒に鍋に放り込み、炒めてから水で煮る。煮立った頃にコーン缶、トマト缶、ケチャップ、コンソメスープの素を入れて味を調える。我が家でよく食べる『見た目ポトフ(ビーツが入ってないから)』の完成だ。
最後の1/4は、一口大に切った鶏肉をフライパンで焼き、スライスしたタマネギとピーマンと一緒によく炒める。醤油、みりん、かつおだしの素を入れて味を調え『肉入り野菜炒め』を作った。
(使い切った。やりきった)
と自分で自分を褒めていたら、そこへ水を差す男(兄)が現れた。
「全部キャベツじゃないか」
「……仕方がないじゃないか。キャベツが死にそうだったんだから」
「どうしてこうなった」
「おそらく、まずはお母さんがキャベツを買ってきて、次に、食べた(消費した)と思ってお父さんがキャベツを買ってきてしまった的な」
「いつになったらこの不毛な連鎖は終わるのか」
「え? 何を言うか?! とっくの昔にあきらめたわい!」
最新の言語と古語が入り交じる謎の会話を楽しんだ後、私と兄と母は夜ご飯を食べた。そうして父が帰ってくると、「作りすぎだろ」の一言が。
「お父さんがキャベツ買ってきたんでしょ?」
「あぁ、うん。そうだった」
「何で買ってきたの?」
「ないと思ってね」
「……そうですよね。でもさ~言ってくれなきゃ作る(消費する)のも大変なんだけど」
一言「キャベツあったのに買ってきちゃった。よろしく」とか何とか言ってくれれば今日はキャベツパーリーにならなかったのに……と内心ふてくされていたら、
「でも、どうにかなったでしょ?」
「「……」」
私は、
(男性がたまに見せる『無神経』ってこういう事を言うのだな)
と、ちょっとイラッとしたのだった。
~食べている最中の兄の無神経~
「芋虫ってキャベツばっか食ってて偉いな~」
「食べるもん(もの)、それしかねぇ(無い)からな」
「いや、そっちじゃなくて、俺には無理だという話だ」
「……それって、遠回しに今日の夜ご飯ディスってますよね?」
「お? バレた?」
「うふふふふ。おら、もっと食え」
「俺、芋虫じゃねぇから」
「朝起きたら虫になっているかもよ」
「…それマジでやめろ」
※『ある日のことでございます』:芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の有名な冒頭。
※ある朝起きたら虫になっていた:カフカの「変身」。我が兄弟のトラウマ(幼少編:いなごにて)。絵本の『ねないこだれだ』よりも怖かった。
「朝起きたら虫になってたらどうしよう(((゜д゜;)))))ガタガタガタガタ」
……ん? お母さん、子ども寝せる気あったのか??




