レシピと姉
姉が、甥っ子を連れて泊まりに来た。
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結婚してから料理に目覚めた(?)姉。
得意料理はマカロニサラダ。
マヨネーズを惜しみなく使い、今日もマヨマヨ絶好調!
「上手いもんだね~。」
「人間1つでも得意料理があると良いもんだよ~。」
と、会話をしながら姉妹仲良く夜ご飯づくり。
母は居間で甥っ子の面倒を見ている。
あとは、私が『野菜のあんかけ』を作り、姉が『きゅうりの酢の物』を作れば、今日の晩御飯の準備はお終いだ。
(姉と一緒に台所に立てる日が来るなんて……。なんて感慨深いんだ……。)
そう思いながらふと、スライサーできゅうりを薄切りにし終わった姉の手元を見るとスマートフォンが……。
「料理中にスマフォを見るなんて!!」
まさかの「ながらスマフォ」に憤慨する私。
危険!火から目を離してはいけません!!(まだ使ってないけれど)
そう思ったのだが――――
「違うよ!レシピ見てたの!!」
「……レシピ??」
手元を見てみると『きゅうりの酢の物』の作り方が載っていた。
私は困惑した。
(……見る必要があるのか?)
そうこうしている内に、姉は計量スプーンを持ってきて、
「今、このレシピの2倍の量できゅうりを用意したから……酢は大匙10杯、砂糖大匙6、塩小さじ1/2……。1・2・3・4・5……。」
「あの…。」
「今話しかけないで!」
「……。」
姉の凄みのある声にビビル私。
「小さじ1/2って何グラムなの……。C! 電子計量器あったわよね?!」
「はい~!!」
言われるがまま電子計量器を取りに行く私。
そして、塩小さじ1/2を正確に計ろうとする姉。
え? 酢のものですよね?
ナニ? この荒野の戦場の如き緊張感は??!
え??? 台所は戦場だったのか??!!?
困惑している私をよそに、姉は一寸の狂いもなく調味料を計っていく。
え!? 酢のものですよね???
マヨネーズは惜しみなく使うのに、この状況はいったい……??!
「あの…。」
「静かに!!」
……お手上げだ。
私の心が白旗を振り始めたころ、姉は計った調味料をよく混ぜ、味見をした。
「……良かった。ちゃんとできた……。」
ホッとする姉の横顔を見ながら、私もようやく一息吐いた。
そして、呆れながら問う。
「何なの。毎回そんなんじゃ疲れるでしょ。」
調味料を計るだけなのに、目をギラつかせて一心不乱な様子なのは、いろんな意味で心配だ。子育て疲れ? え? 神経質になってる感じ??
ともかく「アレ」は無い。
しかし、姉には姉の理由があったようで、
「酢は失敗できないのよ!!?」
「いや、味見すればいいじゃん。」
「味がよく分からないからレシピを見てるのよ!!」
「え。それって育児ストレスでプチ味覚障害起こしてるんじゃない??」
「分からないけど、真剣なのよ!!」
「お~~い。落ち着け~~~。」
……なにこの強迫観念!!
怖い!! すごく怖いわお姉様!!!??
その後、私は「基本を知っていれば良いのだから、分量通りでなくてもいい。」「砂糖多めの酢にしてもいい。」「自分好みにして良いんだよ?」と言うのを伝えると。姉は幾分か落ち着いた。
だからと言って、強迫的計量癖がすぐに改善されるはずもなく。
味付けに自信のない姉が、レシピサイトを見ながら計量スプーンを駆使する姿は数年続いたのだった―――。
*****
~おでんづくりの時~
姉「3倍の量だから、醤油大匙6、みりんが―――」
私、めんつゆを鍋にドバっと入れる。
姉「何してんC!? 今分量―――!!」
姉が何かを言っているが、気にせず料理酒・みりん・かつお節・昆布だしを適当にぶっこむ。
私「大丈夫だって。濃かったら水入れれば良いんだから。」
姉「あんた、お玉も使わないでよくも入れたわね…。」
私「料理は経験と勘だよ!……って祖母ちゃんが言ってた(言ってたかな…?)」
姉「お祖母ちゃんが??」
私「うん。いいんだよ~。そんな神経質にならなくっても~。」
姉「いやいやいや。あんたはもうちょっと神経使いなさい??!!?」
私「お、おほほほほ。受ける~~。」
(兄弟って、上手く分かれるもんなんだな~。)
と、しみじみ思ったのだった。




