温野菜
その日は研修会か何かで、杜の都から電車を使って家に帰った。駅から家までは徒歩20分ぐらいだ。ゆっくりと歩を進めていると、通り過ぎる家々から、夕飯の良い匂いが漂ってきた。
(この家は今日はサンマか……醤油かけて食べたい。おぉー……シチューの良い匂い。)
どの家もご飯時だからかとてもいい匂いがした。よそのご飯に触発されて、「早く帰りたい。」「今日のごはんは何だろう。」と私はうちのごはんに思いを馳せた。お腹はとっくに腹ペコだった。
しかし、うちのごはんだ。
大層な期待をしてはいけない。
1番の妥協点としては『おかずがあれば、それで良い』。
そう思いながら帰路についた。
「ただいま~。」
「おかえり~。」
家に入った瞬間、いの一番に思った事。それは、
(何の匂いもしない……!)
道中あれほど「この家は煮物、こっちは食べ終わっているな、流しの音がする。」とアホな遊びをしながら帰って来てしまった為、この事実には衝撃を受けた。
いつものように手洗いうがいをして、台所にいくと―――。
食卓にはおかずが置いてあった。
特に匂いはしない。
近づいてよくよく見ると、
茹でた人参。
茹でたスナックエンドウ。
茹でたほうれん草
茹でた豚肉のロース。
………全て茹でられていた。
「お母さん?!!?」
「どうしたの。」
「何で混ぜなかったの?!!これでシチューとか作れるじゃん??!!」
匂いがしない理由は茹でられていたからだった。
こんなに茹でるなら全部まとめて炒め物でも良くないか?
水入れてシチューの素入れれば良くないか?!
それか茹でるのではなくて、油で揚げても良かったのではないか??!!
私が困惑をあらわにしていると、母は言った。
「健康的でしょ?」
母は強かった。
*****
父と兄も反応は私と同じだった。
「何故別々に……。」
「さすがお母さん。」
ちなみに私の家にはドレッシング類がありません。
マヨネーズ・ソース・ケチャップもあまり好んで使用しません。
なので、この温野菜たちは『そのまま』食べます。
……醤油くらいは使いますが。
今日、もし私が、自分の家を他の家と思って横切っていたら、こう思っただろう…。
(この家、匂いしないけど。ご飯ちゃんと食べてんのか?)
……ちゃんと食べてますよ。
ちゃんとね。
これを書いていて思ったのですが……。
今までは「朝の通勤・通学時間にチョコッと読めればいいかな?」と思って朝に投稿していましたが、夕ご飯ネタなら夕方の方が良いのかな??と、思ってしまいました。
でも夕方に読むなら、おいしいご飯話の方が良いですよね(笑)




