ひじきの炒り煮
姉は里帰り中です。
「ひじきの炒り煮が食べたい。」
姉の鶴の一言によって、私はスーパーにチャリをかっ飛ばした。
*****
人参の細切り、油揚げの細切り、ひじき、大豆、だし汁、おから。
材料の準備は満タン。作り方はPCでおさらいもした。
(まさか失敗しないだろう。)
そんな安易な気持ちのせいで、悲劇は起こった。
フライパンにごま油を引く。香味野菜は熱した油でサッと炒めると香りが良いらしいので、十分に油を熱してから人参を投入。人参に火が通ったら大豆とひじきも入れる。乾煎り程度に炒めたら、油揚げと出し汁を入れ一煮立ちさせる。
ぐつぐつ音がしてきたら、おからを入れて、まんべんなく混ぜる。
簡単簡単!楽勝楽勝!!
そう思いながら、袋入りのおからをドカドカ目分量で入れ続けた。
……もうお分かりだろう。
おから、入れすぎた。
(やばいやばいやばいやばい。)
炒り煮はパッサパサ。
おからの肌色一色。
(やばいやばいやばいやばい。)
私はすぐさま水を追加し、火力を押さえた。
けれどもまだまだパサパサだったので、どんどん水を加えた。
加減が分からずどんどん。
―――炒り煮はグッダグダになってしまった。
(やばい。笑えないほどヤバイ。)
水分を飛ばせば大丈夫ではないか?
そう思いたかったが、すでにフライパンは肌色だらけ。
砂浜に人参やひじきが散らばっている。そんな感じだった。
何も考えずにおからを入れてしまったので、量も5人分を通り超えて10人分はあった。おそらく、おからが水分を吸って膨れたのだろう。
張り切って作ったのに『まさか』の大失敗。
顔から火が出る勢いだった。穴があったら入りたかった。
「ど~お~?上手く作れそう~?」
身重の姉がトコトコやってきた。
『ひじきの炒り煮』を楽しみにしている姉の笑顔を見るのが辛い。
良心が居たたまれないので、私はすぐさま白状した。
「すまん。失敗した。」
「ん?」
フライパンの中身を見た姉は大爆笑。
「ひじきの炒り煮なのに、おからの炒り煮になってる!!!」
姉は笑い上戸になった。
テーブルをバシバシ叩いて笑いを発散させようとしていた。
「も、やめて…苦し……!おなか痛い……!」
「え!?大丈夫??!」
「大丈夫大丈夫。あ~~おかしい~~~!!!」
姉が爽快に笑い飛ばすので、私は開き直った。
やってしまったものは仕様がない。味さえ良ければそれでいい。
そう。食べられれば、それでいいのだ。
***
ご飯が炊けた頃には、ひじきの炒り煮は良い感じに水分が抜けていた。
「人参発掘しろってか??」
兄の妙に的を射ている発言に、ぐうの音も出ない。
父は「味が良ければそれでいい。」と言い。
母は「おからが好きだからこれで良い」と言う。(良いのか?!)
献立の提案者である姉は、ちょっと食べ過ぎじゃない?と思うほど、炒り煮をおかわりしていた。
贅沢言っちゃあいけないよ。
そう。
食べられれば、それでいいのだ。
*
余った炒り煮をタッパーにしまっている時、兄が私に聞いてきた。
「でさ。」
「うん?」
「これ卯の花?ひじきの炒り煮?どっち??」
私は考えた、考えた末―――。
「おからの炒り煮じゃない?」
…お姉様のネーミングセンスは、衰えていなかったのだった。
おからはあと半分残っている……!
姉のネーミングセンスについては、中学校編の「ハンバーグ」にて出ています。




