おたまは偉大
母と姉が台所に立つと…
「キャ―――!醤油入れすぎちゃった!!!」
「めんつゆドバッっと出てきたんだけど!!」
「あ、やば。酢、入れすぎた…。」
「思ってたよりも出汁残ってた。(袋の中身全部入れた)」
…………もう。
いい加減にしてほしい。
おたま使えって言ってるじゃん!!!????
***
弁明者:姉
作ろうとしていたもの:おでん
入れすぎたもの:めんつゆ
「うわぁぁぁあああああ!!どうしよう!?めんつゆ入れすぎちゃった!!」
「どんまいで~す。(『残念』と言う意味)めんつゆなんて沢山入れても構わねぇって……。」
そっと鍋を覗いてみると、Oh……見事にまっくろ。
5人前のおでんの種が入るほどの大きな鍋。
具がひたひたになるほど水は入っていた。
その水の色が、黒い。明らかにしょっぱそうだった。
昆布だし、しいたけの出汁を、もう入れなくてもいいぐらいに……。
「え。どんだけ入れたの?」
こりゃあかんわ~……ないわ~……。
私はふと、姉の持っているめんつゆのボトルを見た。
昨日か一昨日開けたばかりのめんつゆは、もう半分になっていた。
なんてことでしょう……姉がおでんを作ると、めんつゆは半分消えてしまうようです。しかもその麺つゆ、ちょっとばかしお高いんですよ??奮発したんですよ??
「あ~……別の鍋でスープでも作るしかないか。」
「うぅぅ……ごめん……。」
怒っても仕方がないので、私はすぐさま代案を提示した。
母が後ろから「その麺つゆ高いのよ?!」とか言っている気がするがスルーだスルー。末っ子は争いが大嫌いなのだ。……面倒くさいとも言う。
しかし、姉が素直に謝ったことは美点である。
……そう思うのだが、ここはやはり言いましょう。
「おたま使えって言ってるよね?」
私はあと何回このセリフを言えばいいのだろうか…。
あれですか。妹の諫言など右から左に抜けますか??
姉はしょんぼりしていたが続けて諭した。
「料理番組の料理人さんだっておたま使ってるのに、料理が苦手な人が目分量とかありえないから。お姉さんはその域に達していませんから。」
「……確かに!」
え。そこ、驚くところだったかな??
と言うか、気づいてなかったのか。
人間って言われて気づくこともあるんだな…。
……そうか、苦手なものほど尚更言わねばならなかったか……。
(真理だな……。)
と私は新たな境地(笑)にたどり着いたのだった。
今では姉は、計量スプーン・計量カップで何でも計るようになってしまった。
それはそれで面倒くさいのだが、その話はまた別の機会に。
***
弁明者:母
作ろうとしていたもの:チャーハン
入れすぎたもの:醤油
「あ!」
母の不穏な声が台所から聞こえた。
……今回はなじょした?(『どうした?』と言う意味)
そっ…と台所にいる母のもとに行き、フライパンを覗くと…
チャーハンの色が、こげ茶色になっていた。
(わぁ~。修復不可能~。)
私はすぐさまヤカンに水を入れて、火にかけた。
もうこれは、お茶でも入れるしかない。
これが本当の『お茶で濁す』ってやつだな……と頷いた。
ふぅ……。
「母さんはいつになったら『おたま』を使うの?あぁ……今回は小皿でも良かったのでは??脳みそ少ないCさんでも分かる事なのに、どうして出来ないんでしょうねぇ……??」
「あんこ足らねぇ奴はあんこ食ってろ。」と何かと馬鹿にされる私は、これ見よがしに母をディスった。母は何も言わずにチャーハンを混ぜ続けた。
(フハハハハ!!人のことを馬鹿にするから、こういう時言われ返されるんだぞ!)
顔のにやけが止まらない。
が、しかし―――。
(このチャーハン食べるの辛いだろうなぁ……。)
現実は、あまりにも残酷だ。
~新商品のおたまがあらわれた時の話し~
姉「ねぇ!!良いもの買ったの!見てみて!!」
私「はいはい、何?」
姉「これ!!メモリが付いてるおたま!!」
私「!!!!!これは凄い!!!!!」
姉「でしょでしょ!!」
私「皆、困っていることは同じなんだねぇ……。作った人に感謝だな。」
姉「いちいち計量カップ洗わなくて済むよね~。」
私「……そ、ソウダネ(使用頻度高いのお姉様ぐらいだと思いますよ。)」
姉「便利な世の中になったね~。」
私「そ、そうね(お姉ちゃんよかったね……ホロリ)」




