塩と砂糖
うちの家族は「おひたし」が大好きだ。
ほうれん草、小松菜、もやし、モロヘイヤ、ニラ、オクラ、つるむらさき…。
ご当地野菜?の、すべりひゆも忘れてはならない。
これらの野菜に共通することは『塩ゆで』だ。
……『塩ゆで』だ。
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親戚から沢山のほうれん草を貰った。
「新鮮だ――――――!!!ありがと―――!!!」
表面上は良い子ちゃんの台詞を装いながら、心の中では(お前らグッダグダに煮てやんよ!!フハハハハ!!)と盛大に毒づいた。
大きな鍋でお湯が沸くまでの間に、ほうれん草を洗う。
畑からもぎ取ったままの姿なので、土がけっこう付いている。
そこそこ適当に洗っている内に、鍋の水が沸騰した。
「お姉ちゃ~~ん。塩とって?」
調味料置き場の近くに姉がいたので、声をかける。
『立ってるものは、姉でも使う。』
ただそれだけの事だった。
私は火加減を調節するのにコンロを見ていた。
その為、姉が調味料を取るところを見ていなかった。
「はいこれ。」
「ども!」
姉から手渡された調味料容器。
ふたを開けて、中に入れっぱなしの計量スプーンを取り、白い物体に『ガッ!』と突き刺した。(塩や砂糖って固まってますよね??)
(……あれ?)
私は違和感を感じた。
(この感触は………??)
ぐつぐつ煮えたぎる湯の前で、しばし呆然とする私。
姉が「どうしたの?」と言っているのが遠くから聞こえる。
いやいやまさか……まさかそんな……。
困惑しながら、白い塊をガツガツ壊す。
壊せば壊すほど、思った。
……これは砂糖だ。
「お姉ちゃん!!!これ砂糖!!!」
「え?」
「塩じゃない!!!」
「えぇぇぇえええ????!」
危ない危ない。もうすぐ大切な水が「砂糖水」になってしまう所だった。
気づいた私!えらいぞ!!
と私が内心自画自賛をしていると――。
「だってラベル書いてないし!分かるわけないじゃん!!」
そうなのだ。料理が苦手な家族なのに、調味料にラベルが張ってないのだ。どうしてかと言うと、母がよく容器を入れ替えるからだ。母曰く「入れ物が可愛くなれば、料理をしたくなると思う。」らしい。実に素晴らしい理由だ。だから私は自然と、塩と砂糖の違いが分かるようになった。だから姉が気づかないのは……致し方ない事だ。(一応、塩は『香辛料棚』砂糖は『紅茶棚』に分かれて置いてある。)
「ほらこれ!砂糖はふわふわしてるじゃん!!」
「……。」
「塩はほら。ザラザラしてるじゃん!!」
「……。」
姉の大きな目が、極限まで細められている。「こいつ、何言ってんの?」と、心の声が聞こえそうだ。
姉の視線を感じながら鍋に塩を投入し、ほうれん草の固い部分を下にして少し茹でてから、全体を湯に入れる。姉は似た容器に入っている塩と砂糖の塊りを『ガッガッ』と壊していた。
そして『そっ…』と塩と砂糖の容器のふたを閉め、一言。
「……わかんない……。」
『塩と砂糖を間違えてしまうのには、必ず理由がある。』
私はまた一つ悟ったのだった……。
~~おまけ~~
私「母さ~ん。塩と砂糖の容器にラベル付けて良い?」
母「なんで?」
私「姉ちゃんが間違えるから。」
母「お姉ちゃんは家で料理しないから。付けなくてもいいでしょ。」
私「……。」
母「ラベル貼ると、何か容器が可愛くなくなっちゃうでしょ。」
私「ほほぅ……。」
母「だから、付けなくても良いの。」
私「……。」
だったら、お母さんも塩と砂糖を間違えないでほしいんだけど……。
あぁ……発言権の弱い末っ子ポジションが憎い……。
昨今は容器の色が別々なので、間違い騒動はなくなりました。




