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姉とカレーライス

姉が1人暮らしを始める。


父と母は言った。


「1人暮らしをすれば、掃除・洗濯・料理を否応いやおうなしにしなくてはいけない。荒療治あらりょうじだが、お前の為だ。」


私も言った。


「お姉ちゃんはこのままじゃヤバイ。かわいい子は旅をした方が良い。」


姉は嫌がった。


「なんで追い出すような事するの?!ひどいよ!!」


酷いかもしれないがお姉ちゃんの為だよ。

姉は家にいると

1.料理はしない(苦手だから)

2.掃除もしない(布団も干せない)

3.洗濯したことない(お手てツルツル)

私からすると超ヤバだった。


姉は父と母の協力を貰い、アパートを探し、1人暮らしを始めた―――。




*****




効果はてき面だった。

姉は、洗濯と掃除をするようになった。

節約を覚えた。

炊事を…………何とかするようになった。


良かったよかった。

これで彼氏とも上手くいくだろうし、嫁に出しても恥ずかしくないな。



そう思ったある日の事だった。


「来たよ~。」


姉が家に帰ってきた。

姉は「杜の都は車の音がうるさくてくつろげない…。」と言って休みの日はよく帰ってきていた。

そして今回は何やらお土産があるらしい。


「見て~。カレー作りすぎちゃってさ~。これ食べて~。」


そう言って渡された直径20cmほどの鍋。

お姉ちゃんが炊事を!!と感動しながらふたを開けた。


「ん?これなに?」

「カレーって言ったでしょ。」

「なんか、ガチガチに固まってない?」

「1日たったから。」

「……え?」


表面を触っても、カレーが手につかない。

表面を押しても「ぐにっ」ともしない。


(なにこれ。食品サンプルか…?)


1日たったからって、固まるわけないじゃん。

我が家で少し残ったカレー、次の日固まらないわい。

姉は、更に恐ろしい事を言った。


「昨日彼氏がおいしいって言ってくれた。」



な……。



なな…。




何だって――――――――――!!!!????




ここここここんなガチガチカレーを食べただと!!???

やばい。とんでもなく良い人だ!!!


(この人を逃してはいけない!!!!!この人であれば、これからも姉の料理を笑って食べてくれるだろう!!!!)


私は強く思った。


おそらくは作り立てはドロドロカレーだったのだろう。

香辛料に舌がだまされて、塩辛さは判断できなかったのかもしれない。

私は聞いた。


「お姉ちゃん。カレー粉なん個入れたの……?」

「1箱。」

「ほっほう……。」


20cmほどの鍋に、1箱。


(そりゃあ1日おいたら固まるわ。)


「あのねお姉ちゃん。うちのカレー、あの大きな鍋でカレー粉は半分しか使わないよ。」

「うちのカレーはサラサラだから。」

「塩分控えめって言って。その分香辛料入れてんの。この鍋で1箱ってことはさ、かなり塩辛かったと思いますよ。」

「………でも彼氏はおいしいって言ってくれたよ。」

「うん。後でお礼言わないとね。」


私は家にあるカレー粉の箱を持ってきた。


「見て。ブンリョウガウシロニカイテアル。」


後半はもう脱力していた。

箱を見て姉はちょっと驚いていた。


(驚いたと言うことは、見なかったのかしら……。)


私は思うことが沢山あったが、今のところ体を壊していない様だったので深く考えないようにした。

とりあえず。


今回の恋路は全力で応援しなければいけない。


そう、心に誓ったのだった。

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