思い出のサンドイッチ
※暗いです。
学生時代は楽しい事がいっぱいだ。
バイトをして初めてお金を手に入れた時、働く大変さ、労働や経済の流れ、そう言ったものの中に自分も入り込んだのだと自覚したものだった。そして、『自分で稼いだお金だからこそ自由に使える』と言うことで、友達とあちこち出かけ行動範囲を広げたことは、何ともの言えない高揚感があった。
田舎から飛び出して分かったこと。
都会はまぶしすぎて、夜寝られない。
都会は車の音がうるさくて、夜寝られない。
都会は人の声も結構聞こえてきて、夜寝られない。
あと、空気がおいしくなくて、空が曇っていて、星が全然見えない。
都会はいろいろ便利だが、私は住みたいとは思わなかった。
(早く田舎に帰りたい……。)
カエルの声を聴いて寝たい。
虫の声を聴いて寝たい。
真っ暗にして寝たい。
星が見たい。
おもいっきり息を吸いたい。
そう思った。
そうやって昔懐かしい友人たちと再会し、学業・バイトをこなしている中で、私はDと再会した。(小学校編・中学校編に出てきたDです。)
もともと仲が良かったため、いつの間にか2人で会うことが増えていった。
*****
そんなある冬の日。
「就活を頑張りたいから、終わるまで会いません。」
とDから宣言された。
何とか交渉し『電話はOK(しかし週に1回)』と決めた。
「ちょっと待って!花見は?来年は一緒に行くって決めたじゃん。」
「お前、桜の木嫌いって言ってたよな?クローンだから風情がないとか……。」
「ぐっ……!!もしかしたらDと一緒に見れば好きになるかもしれません。吊り橋効果とやらで…!」
「実験か。花見はどこにいった。」
「時空の彼方に…(「トイ・ストーリー」ネタ)じゃなくて!そうだサンドイッチ。サンドイッチを作ってきます!!」
「サンドイッチ……!」
「そうそう!食べたいって言ってたでしょ?」
Dと私が仲良くなったきっかけは、小学校の調理実習のサンドイッチ作りだった。あれからと言うもの「サンドイッチくれ」「あげねぇよ!!」のやり取りは2人共通のネタになっていた。
「交渉成立だな。花見に行こう。」
「君。どんだけサンドイッチ食べたかったの……。」
サンドイッチをダシに花見をもぎ取ったので、私はバイト代でサンドイッチの材料を買って、何度か練習を重ねた。粒入りマスタード・生ハム・スモークサーモン。ちょっとお高い材料にも手を出してみた。家族に食べてもらい、好評だったものを花見の日に作るつもりだった。そして、あの時「あげねぇよ!」といったタマゴサンドも……。準備はすこぶる順調だった。
でもまさか。
まさか来年の春。
花見どころじゃなくなるなんて、予想できなかった。
あの大きな地震の時は、皆が大変だった。
連絡が取れないのは当たり前だった。
当たり前なのだからと思っても、私は言いようのない不安を感じた。
そして、Dと連絡が取れないことを同じ中学の友人たちに相談した。
「携帯が壊れたのかもしれない。」
「今は皆苦しい時だから、不安になりやすいだけだ。」
「通信が落ち着いたら、連絡はとれる。」
「「「考えすぎるな。」」」
しかし、私の不安は見事に的中した。
その知らせを受けた時
桜は見事に満開であった。
あの日から
サンドイッチは作れない。
大学編、おしまい。




