ゴーヤ
沖縄での修学旅行で出会った食材は、もずくだけではなかった。
ゴーヤ。
ゴーヤはものすごく苦くて食べられたもんじゃない!!
と今まで思っていたのだが、沖縄で食べたゴーヤは独特の苦みが緩和され、甘辛いタレによくなじみ、とても美味しかった。沖縄の人が自宅で栽培して食べる気持ちがよく分かった。
ゴーヤに対するイメージががらりと変わった私は、家でゴーヤ入りの野菜炒めを作った。
ゴーヤは中のワタを取り、いちょう切りにし、塩で良くもむ。
そしてしばらく漬け込んでおく。
その間に人参、たまねぎを一口大に切る。
もやし、豚肉(少しお酒をかけておく)を用意する。
どうしてゴーヤチャンプルにしないのかって?
豆腐と玉子の組み合わせはトラウマだからですよ……。
ゴーヤの余計な水分を手でしぼり、準備は満タン。
豚肉から炒め、たまねぎ、人参、ゴーヤ、もやしとドンドン炒めていく。
味付けはめんつゆ。ちょこっと黒酢と、昆布だしをいれる。
砂糖や、七味などの冒険はしない。
普通の野菜炒めの出来上がりだ。
「ゴーヤが苦くない!?」
と、同じくゴーヤが苦手だった兄も見解を改めた。
ゴーヤってこうやって食べるのか……家族みんなが思ったのだった。
*****
学校から帰ってきて、手洗いうがいをしたあと台所に向かう。
(今日は何を作ったのかな??)
当たりはずれが多い我が家だが、作ってくれるだけありがたいものなのだ。
食べられるだけで幸せなのだ。
そう思ってフライパンのふたを開けると―――。
ゴーヤチャンプルが作られていた。
私はそっ……とふたを閉めた。
そして、兄が帰ってくるのを待った。
兄が食べて、大丈夫だったら食べよう。
そう思った。
帰ってきた兄は「まぁまぁ、まずは一口。」と言って食べ――――。
「無理!!!!!う……本気で吐く。」
トイレに見事に駆け込み胃の府のものを吐き出した。
私は恐怖で真っ青になった。
いつものように母にたずねる。
「母さん……味見した…………??」
「したわよ。」
「………食べられるの………??」
「お母さんは食べられたわよ。」
「どういう事なの。何を信じればいいの。……助けてパパイヤ!!」
どうして一日の終わりに罠が待ち構えているんだ!!!!
なんたる苦行!!座禅の方がましだ……滝行の方がましだ……!!
目の前の料理が憎たらしくてたまらない。
あ。
いかんいかん。
食べ物が有るだけで幸せなんだって悟ったはずじゃないか!??
そう、無だ。
心を無にするのだ。
大丈夫。これを食べたからと言って死ぬわけではない。
大丈夫。
大丈夫……。
パクリと一口食べた。
(あれ?……思ってたほど食べられる??)
と思ったが後から来るゴーヤの苦みで瞬殺だった。
あまりの暴挙に思わずそのまま飲み込んでしまった。
「う″……!!!???し……死ぬ!!!!!!」
「C――――――!!!!しっかりしろ!!!!!!」
「気持ち悪い!!!!!水……!!みずぅ……。」
あわてた兄が水を持ってくる。
私はそれをごくごく飲んだ。
「大丈夫か……。」
「大丈夫じゃねえ!!!!!」
兄の肩がものすごく震えている。
しかしそれは、恐怖からではない。
あきれを通り越し、笑いを必死にこらえたものだった。
料理がとんとできない母のもとに生まれたこと。
そんな星のもとに生まれたことを、静かに享受したのだった―――。
*****
ゴーヤチャンプルは見事に売れ残った。
母が「まったく!!」と愚痴を言いながら一人黙々と食べる。
何で食べられるんだ……??
それはそれで、ある意味恐怖だった―――――。
高校編も終わりです。
おそまつさまでしたm(__)m




