今日はご馳走
それはたった1日だけ起きた、奇跡のような出来事だった―――。
「ただいま~。」
家に帰って手洗いうがい。台所に入ると……。
「わぁ~~~~!!!!お母さん!?どうしたのこれ!??」
何と言うことでしょう。(アナウンスはサザエさん)
目の前には豪華な食事がところ狭しと広がっているではありませんか。
ごらんください。
いつもならみそ汁と漬物ばかりの食卓に……1品2品…いえいえ6品も!
なんとも母の頑張りが分かるものばかり。
今日はなんて素敵な日なんでしょう。
この出来事は、これから一生思い出に残るでしょう……。
本当に残りました。
あまりの珍事(失礼)に、交換ノートにも書き残してしまいました。
友人達からは「おめでとう!」「良かったね!」とたくさんの温かい言葉を貰いました……。
「どうしたのこんなに……。大変だったでしょう……?」
「…………。」
「?……お母さん??」
笑顔が張り付いたままの母。
あやしい……実にあやしい……。
普通に「やれば出来るのよ。ふふん。」とかなんとか言えばよかったものを、ヘタな反応をしては怪しまれてしまうではないか??
「何を隠しているの……。」
私は母をじとっ……と見続けた。
母は観念した。
「お腹痛くなったらごめんね。」
「……どゆこと?」
「全部、賞味期限過ぎてたの☆」
え。
えぇぇぇぇぇぇぇ~!!!????
私は食卓をバッと見つめた。
こんなにも美味しそうな匂いと見た目なのに……(色んなにおいが混じっているのでよくわかりません。)
ロシアンルーレットだと!!!!!????
(※母の料理は当たり外れが激しいので、当時兄弟の中でこの言葉が流行っていました。)
どうして……どうして味見をしないんだ!!!!!
味を見れば『食えない、ヤバい』くらい分かるのに!!!!
そうこうしている内に、兄が帰ってきた。
「なんだ(笑)とうとう地球が滅亡するのか?」
兄は、母が凄い事をするとすぐ「天変地異」「明日は雨」と言う。
私も言わずもがな……あ。これって祖母ちゃん譲りか??(爆)
「なんだC。食べないのか。」
「……食べるし。」
意を決して食べてみると――――。
「………おいしい……。」
いつものように薄味だが、妙な味はしなかった。
兄も驚いていた。
「食える。」
「……お母さんもやれば出来るのよ!」
「それを毎回発揮してくれればなぁ……。」
「無理ね。」
「じゃあどうして今日は頑張ったの??」
母は目をそらしながら
「材料を腐らせると、お父さんがうるさいからに決まっているからでしょ!」
「「…………。」」
色んな意味で、親父には頭が上がらないと感じたのだった――――。
*****
「こんなに作って、馬鹿じゃないの??」
父は母を褒めなかった。
気持ちは分かる。
マーボー豆腐・ねぎ味噌・豚肉の生姜焼き・ピーマンともやしの炒め物・卵スープ・茄子の煮物。
うん。多い。
そして5人前以上の量。
うん。多いね。
いいじゃない。明日もおかずがあるんだから!!
いや~。こんなに豪華な食事にありつけるなら、賞味期限が切れてもいいな!!
………なんか違うか……????
次の週。
当時にしてはめずらしく、東北に台風が直撃した。
苦労して学校へ行ったのに、授業は全部なかった。
初めての経験だった。
はじめての……。
~祖母は語る~
「昔は賞味期限なんか無かったからね~よく匂いを嗅いだもんだ~。だからね、ちょっと賞味期限が切れたからって慌てなくてもいいんだよ。匂い嗅げばいいの。」




