姉とごはん
私と兄が小学生。姉が中学生の時だった。
母が入院した。
洗ったカーテンを取り付けている時に脚立から落ち、腕を骨折したからだ。
(側には父がいた。救急車も父が呼んだ。)
頭を打ったかもしれないため、検査も含めて入院する。
2泊3日の入院。
(軽く済んで良かった~。)
私は安堵した。
(2泊3日ぐらいならこの兄弟でも家を守れるな!!)
朝の戸締りは小学生の私と兄。
夜の戸締りは父。
と言っても責任感の強い私は、すべての戸締りに関わった。
この時の経験により、現在に至るまで、私は家の戸締りが習慣づく。
この時の私は知らなかった。
こんなに濃い2泊3日になるとは―――。
*****
「私がごはんを作るわ!!」
いつもより早く帰ってきた姉。
部活を特別に休ませてもらったらしい。(吹奏楽部は休みに厳しい。)
(おぉ!!なんかお姉ちゃんっぽい!!)
普段台所になど立たない姉。
何でも幼い頃、母にしつこく「台所に入るな!」と言われていた為、近づいてはいけないと思っているらしい。それはそうだろう。何故なら姉は、寒いからと石油ストーブに腰掛け、火傷をしたことが有る。そんな能天気な幼い姉が台所に入ったら何が起こるか…。想像するに恐ろしい。
私は「台所に入るな!」と言われても「どこまでならいいの?」「ここならいいの?」「見るだけ!見るだけ!」と根気よく交渉をしていたため、はっきりと話せるようになる前から台所に侵入していた。(私は言葉を話すのが4歳と遅かった。)よく椅子の上に立って母の手元をのぞいていた。
………お姉ちゃん。諦めるの早いよ……。頑張って……。
「俺も手伝うよ。」
(おぉ!!お兄ちゃんっぽい!!)
普段台所に立たない兄。(お前もか。)
合宿でのご飯炊きの経験を活かし、姉の手伝いをするようだ。
毎度毎度、母の料理に文句を言っている二人。
どんな料理を作るのでしょう??
私はリビングのソファーに座りながら。
(お手並み拝見ですな!!)
と、高みの見物をきめこんだ。
しかし、それは直ぐに破られた――――――。
「おい!なんで洗剤もってんだ!?」
「え、洗うからでしょ。」
「米洗う馬鹿がいるか!!?」
Oh……。
聞き捨てならない単語が……。
「あ。ごめんごめん。洗わなきゃって思ったら無意識に…。」
「…あぶねぇ。手伝うって言った自分を褒めたい……。」
本当に危ないよ!(物理的にも!)
食べた瞬間洗剤の味なんて嫌すぎる!!
(兄よ!!よくやった!!)
私は兄を心の中で褒めたたえた。
お姉ちゃん。しっかり!
しかし、姉の不穏な動きは続く…。
シャッシャッシャッシャッシャッシャッシャッシャシャッシャ。
ジャーーー。
1回目。
シャッシャッシャッシャシャッシャッシャッシャシャッシャ。
ジャーーー。
2回目。
シャッシャッシャッシャシャッシャッシャッシャシャッシャ。
ジャーーー。
3回目。
シャッシャッシャッシャシャッシャッシャッシャシャッシャ。
ジャーーー。
4回目。
(ん?)
シャッシャッシャッシャッシャ……。
「ちょっと待てぇ―――い!!??」
私は居ても立ってもいられなくなった。
リビングからすぐさま、隣の台所に駆け寄った。
姉は、更に米を研ごうとしていた。
「何回といでんの????」
「え。白いの無くなるまで??」
「阿保か!!米無くなるわ!!」
「いやぁ~俺もおかしいと思ったんだよ。」
「だったら止めろよ!?」
ちょっとちょっと大丈夫か!?
兄よ。お前もしっかりしてくれ!!
あまりにも心配になったので、私は台所の椅子に座り、2人の様子を見守った。
………水。どこまで入れるかとか、分かるよね??
ピタっとガス釜の前で立ち止まる2人。
「……どっち?」
「…こっちじゃないか??」
ひそひそと話す声が聞こえる。
これ以上、妹の前で恥ずかしい姿を見せたくないようだ。
(そんなプライドいらねぇよ!!捨てろ!!)
うちのガス釜。
昔仕様だったので、「麦ごはん」用のメモリもついていた。
2人が話しているのはそのことだ。
しばらくしても2人は振り向かない。
しびれを切らした私が釜を見に行った。
「こっちです。」
「「………。」」
無言で水を入れる2人。
メモリまで入れられたのか、釜のふたを閉める。
そして、点火スイッチに手をかけ―――――。
「ストーーーーーーップ!!!!」
私は待ったをかけた。
「何合炊くのかメモリ確認して。ガスの元栓確認して。換気扇付けて。」
私は指示を出した。
見ていられなかった。
どことなく胸が痛かった。
しかし、背に腹は代えられない。
姉兄は言われたとおりに動いてくれた。
(この頃は、米を水にしばらくつけることが浸透していないので、すぐにスイッチを押しています。)
私はガッカリした。
いつも母の料理に文句を言っているので、この2人はできるのかと思っていた。
しかし、そうでは無かった……。
なんて傲慢な奴らだったのか……。
軽く失望した……。
その後、炊き立てのご飯を「蒸らす」事を教え、無事にごはんが出来た。
ごはんでまさかの苦戦。
ごはんでまさかの…!!
姉よ……。
妹は色んな意味で心配です。
一応、私たちは農家の末裔ですよ??
それが米のとぎ方知らないとか、炊き方知らないとかやめてください。
ご先祖が泣くぞ。
……すでに泣いているかもしれないな。
この後のおかずづくり。
恐怖でしかたない。
===20年後の真実===
母が骨折した「姉兄編」。
たまたま里帰りした姉にチラッと確かめたら「お前は何か、勘違いをしている!!」と言われました。「何をじゃ!?」と聞き返しましたら衝撃の事実が!!!!
姉が語った事の顛末はこうです。
兄が米を研ごうとした時と、姉が食器を洗おうとしていた時が重なり、「おい!なんで洗剤もってんだ!?」「え、洗うからでしょ。」「米洗う馬鹿がいるか!!?」「あ。ごめんごめん。洗わなきゃって思ったら無意識に…(お先にどうぞ)」「…あぶねぇ。手伝うって言った自分を褒めたい……。」と言うへんてこな会話をしたようです。兄の勘違いを、そのまま私は勘違いしていたようです。
兄が手伝う(米を研ぐ)と言ったのに、私が台所に駆け付けた時に姉が研いでいたのは、兄が研いだ後、姉も研いだから。だから回数も多かった。それを私は姉が一人でやっていたと思っていた。
兄が「いやぁ~俺もおかしいと思ったんだよ。」と言ったのは、私の「米無くなる」発言を聞いて、姉のもっとしっかり研ぐべき!と更に研いだことに対して「おかしい」と言った言葉だったと。
私、リビングから姉と兄の姿を「見て」いないんですよ。
「聞いて」いただけなんです……。
なんだって……!?
つまり、つまり…………。
20年近く、勘違いしていただと……!!???
ナンテコッタ……。
なんてこったぁ!!!!!!
いやぁ――――――――!!!!
恥ずかしいぃぃぃぃぃ……!!!!!!!!
今の今まで勘違いしていたとか。
そんな……そんな~~~!!!!!
穴があったら入りたい!!!!
お姉ちゃん、ごめんなさい!!!
……だからと言って、この後の失敗は変わらないけれども。
失敗しなかったら、変に勘違いも……。
いえ、何でもないです。




