部活でやきそば
中学2年生の後期。
私は吹奏楽部の部長になった。
もともと1年生の時に副部長だったので、繰り上がった形だ。
おそらく役職は繰り上がるだろうと思っていた私達は、学祭も3年生を送る会も、準備と段取りはあらかじめしていた。
学祭では前例を覆し、吹奏楽曲ではなく歌謡曲やジャズを選択し、先生たちや同級生に友情出演をしてもらった。演歌を歌ってもらったり、踊ってもらったり、……高校の文化祭より手の込んだステージ発表をした。(高校も吹奏楽曲ばかりだった。)
交渉の為に毎日学校を駆けずり回った。三顧の礼でやっと出演許可をもらい、人気者たちや、司会者に協力を仰いだ。………いい経験をしたと思う。
……翌年、見事に戻ってしまっていたが…。
さてはて
そんな用意周到さが、まさか自分の首を絞めることとなるとは、夢にも思わなかった―――。
*****
部長になってから数日後。
私は顧問の先生に、職員室に呼ばれた。
「3年生を送る会について、皆で話し合っておいてくれ、内容は――」
「あ。先生。実はもう用意していました!」
「……はぁ?」
先生は困惑していた。それもそのはず。
先輩たちが引退したのはつい先日。
お別れ会だって3ヶ月は先の話しだ。
私はカバンをごそごそあさり、企画書を先生に見せた。
「これは進行表。時間と流れはこれ。それぞれの役割分担がこれです。確認よろしくお願いします!」
「……お前ら…。」
私達2年生。去年の3年生を送る会の後、「もっとこうしたい!!」とお弁当の時間に白熱し、事細かに企画を作っていた。面白いことが、大好きなのだ!!
顧問の先生は、企画書を眺めてから言った。
「もっとやろう。」
「………え…?」
何を?
出し物とかも結構するし、1年生にも内々にお知らせ済みよ??
これ以上なにをしろと???
「毎年午後からしかしないが…」
「はい。そう聞いてます。」
「午前も使おう。」
「……え。」
「家庭科室を借りて、食事会もしよう。」
「!!!???え??えぇ!!?」
「何を作るか考えて、それにかかる時間、食事の時間も逆算して、何時に集まるのとかも改めて書いて出してくれ。」
ふぁい!!??
まじか!??
私のHP、今ゴリゴリ無くなったわよ!!??
「いや…そうだな、作るのは焼きそばにしよう。材料費の計算とかは、調理実習でしている通りに出してくれ。」
待て待て待てぃ!!!
今の、私がよく調理実習の班長をしていることを知ってる感じだったな!!
いや、先生!!絶対知っているな!!??
「C。お前ならできる。頼んだぞ。」
「……………分かりました…。」
その後、提出した企画書を返され、私は職員室を出た。
私は廊下を歩きながら思った。
あぁ……NOと言える日本人になりたい……!!
新たな企画書は、2年生で何度も話し合いをし、1月前に最終案を提出。無事に通った。
*****
当日の朝は忙しかった。
会場準備班。材料調達班。
それぞれに分かれてからのスタート。
私達2年生は人数が一桁と少なかったので、1年生も出動。
これらの下積みのおかげか、高校・大学などのイベントは、全く苦にならなかった。むしろ、「もっとやれ!!」精神満載であった。
材料調達班も戻ってきて、先輩たちも集まってきた。
時間は10時。
さぁ。皆で焼きそばを作ろう!!
……焼きそばなんて、混ぜれば終わりだ~。と思っていた私。
すると、後輩ちゃんが……。
袋に入っている焼きそばの麺を、もみ始めた。
(!!!?????)
私は周囲を見渡した。
麺をもんでいる子は1人もいなかった。
「え。あ、待って?どうしてもんでるの???」
怒ったつもりではなかったのだが、後輩ちゃんはビクッ!とした。
一緒のテーブルで作っていた同級生が私をせめた。
「C!!後輩ちゃんビックリしてるでしょ!!もんでたって良いじゃん!!」
「え。あ、ごめん!ごめんね…!!そんなつもりは…。」
でも、1度思った疑問。どうしても知りたかった。
「なぜに揉んだの??」
他の班も未だもむ様子はないぞ??
すると、後輩ちゃんは言った。
「もむと、麺がほぐれて混ぜやすいんです。パッケージに書いてあって…。家でもやってます…。」
「「え!!?まじ!!??」」
私と同級生と先輩と、皆でパッケージを見た。
「え~~!!すご~~い!!本当に載ってる~~!!」
先輩が大きな声で言った。
周りの班の人たちがこっちを向いた。
何かあったの??と言う感じだった。
「皆~!焼きそばの麺って、もむといいんだって~!!後輩ちゃんが教えてくれた~!!」
後輩ちゃんの不安気な顔が、いっきにほころんだ。
他の班の人たちも、袋麺をほぐして入れ始めた。
「うわ!本当に楽!!」
「これは家で早速するわ~!!」
皆が口々に言った。
さっきまでの嫌な空気が無くなった。
その後、予定通りに食事会をし、つつがなく送る会は進んだ。
何気ない一言が、相手を傷つけてしまう事。
何気ない一言で、周りの空気を変えられる事を、私は学んだのだった―――。
*****
焼きそばを作るときはいつも思い出す。
後輩ちゃんのビクッ!とした姿……。
うあぁ~~!!!!!!本当に申し訳ない~~!!!!!!
馬鹿な先輩でごめんなさい~!!!!
恥の多い人生です……。
食事会のお金は顧問の先生のポケットマネーです。
送る会は、臨時集金をして行っています。
部費の無駄遣いは出来ないのです!!!




