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最弱モブ、なぜか最強の魔物に狙われる。  作者: くろねこドリル
第一章 世界覚醒(ワールド・アウェイク)
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第九話『弱虫』の魔法使い

9話になります。

ダンジョン帰還後の2週間後の話になります。

先のダンジョンから2週間後。


透と浩介は、学校のテストを終えていた。


「なんでこんな世界なのに、テストあるんだよ!!!」


「まぁ、学生の本分ですから。」


俺としては、テストより問題がある。


期間限定のイベントの一つが今日で終わる。


昨夜も最後まで周回していたせいで、眠い。


「昨日ちゃんと寝た?」


「デイリー終わらせてた。」


「聞いてねぇ。」


そんなことを言いながらギルドへ向かう。


結局、あれから魔導書を見つけることはなく、あっという間に時間が過ぎていた。


古い本と黒い球は、持ち帰ったものの特に使えるものではなかった。

おれの家の隅に置いてある。


「あーあー、俺も魔法使えねぇーかな」

「ファイアー!!サンダー!!なんつって」


「初級魔法でいいんだな」


「ものは、つかいようっていうじゃん?」


たしかに…。一つでも使えたら、ダンジョン攻略が少し楽になりそうではある。


いつも通りくだらない話をしているといつのまにかギルドについていた。


「なんかみんなかっこいい装備してんなぁ」


「2週間だぞ、意外とみんながんばってるんだよ」


「それはそうなんだよなぁ」


ギルドは、相変わらず活気に満ちていた。


受付には依頼を受ける冒険者が列を作り、ロビーでは新しい装備を身につけた者たちが互いの成果を語り合っている。


「昨日レベル15になったんだよ。」


「マジか! どこのダンジョン潜ってんだ?」


「あそこだよ。南区のダンジョン。経験値がうまいらしい。」


少し離れた場所では、武器屋の店主が新しく仕入れた剣を手に声を張り上げていた。


「魔石強化済みだ! 切れ味が違うぞ!」


「本当に?」


「試し斬りしてみるか?」


壁一面の掲示板には、以前よりも多くのパーティ募集が貼り出されている。


『前衛募集 レベル10以上』


『回復役急募』


『初心者歓迎』


ダンジョンが現れてまだ日も浅いというのに、人々はもう、この世界に順応し始めていた。


「新しいダンジョンも行きたいけどなぁ」

「そいえば東区のダンジョンボス部屋あるらしいぜ」


「お前、どこでそんな情報仕入れてくるんだよ。」


さすが透。情報通だ。


俺たちは、前回、魔導書を見つけるという目的でダンジョンに訪れたが、特に成果は大きく得られなかった。


俺たちも負けてはいられない。


「今日は、次のダンジョンに向けての情報収集と準備だな」


「そうだな!」


一応パーティ募集にも目を通しておくか。


◇◇

ギルド掲示板付近につく。


掲示板へ向かおうとした。その時だった。


一人の少女が、おどおどと誰かに声をかけているのが目に入った。


少し灰色がかったアッシュブロンドの髪。


小柄な体には、何度かダンジョンへ潜ったことが分かる程度に使い込まれた装備をまとっている。


しかし、その瞳には冒険者らしい自信はなかった。


人の視線から逃げるように俯き、杖を抱き締める姿は、今にも「帰りたい」と口にしそうだった。


彼女の名は、森川しえる。


掲示板の前でオロオロしながら、歩く人たちに声をかけている。


「あ、あの……えっと……」

「パーティ募集……。」


「悪い、他当たって。」


「……ご、ごめんなさい。」


深く頭を下げ、また別のパーティへ向かう。


「あ、あの……。」


「悪い。前衛なら欲しいんだけど。」


「そうですよね……。」


小さく笑おうとしたその表情は、すぐに曇った。


そこへ


「お、魔法使いじゃん!」


透が声を掛ける。


「へ?」


「……本物?」

「魔法って見せてもらえたりする?」


「む、無理です!」


「なんで!?」


「……透。」

「やめとけって。」


「……。」


そこで周りから


「やめとけ。」


「そいつ"弱虫"だから。」


「敵が出ると震えて何もできない。」


周りが少し重くなる。


だが、透だけは首をかしげた。

「……でも。」


「魔法使えるんだろ?」


しえるは小さく頷く。


「だったら十分すげぇじゃん。」


周りが呆れたようにため息をつく。


「だから使えねぇって言ってんだよ。」


「そうなの?」


透は本当に不思議そうな顔をした。


「じゃあ一回だけ見せてよ。」


「透、お前また巻き込む気か?」

透は、良くも悪くもいろんな人を巻き込む。


「いいじゃん。」

「魔法使いってロマンあるだろ?」


「とりあえずここじゃあれだから」

「外にしよう。透」


「外いこーぜ」

透は笑って手を振った。


「あ、え…。」


「いっくぞー!」


◇◇


ギルドの職員に事情を話し、

魔法が使えるスペースを貸してもらう。



「ここならいんじゃねーか?」

透は、周りを見渡す。


ギルドの職員は、しえるの事情も知っており、人払いも済ませてくれている。


「えっと…。」

「あの…。できないかもです…。」


透がしゃがむ。

シエルに目線を合わせて伝える。


「無理なら無理でいい。」


「でもさ。」

「俺、一回魔法見てみたいんだ。」

「ゲームじゃ何回も見たけど、本物まだ見たことねぇし。」

「だから、一発だけ。」


「…。」


俺は、その様子を静観する。

透らしい。そう思った。


しえるは、手を振るわせながら

「ファイア……。」

失敗


「大丈夫。」

「一回深呼吸しよう。」


透は、しえるへ笑いかけた。


馬鹿にされると思った。

試されると思った。

だけど、この人は違う。


杖の先に、小さな火が灯る。


揺れる。


消えそうになる。


しえるは震える手を必死に支えた。


「お願い……!」


炎が一気に膨れ上がる。


「ファイアボール!!」

ドン!!


的の表面が黒く焼け焦げ、周囲に熱気が広がった。


「……すげぇ。」


透だけが、目を輝かせていた。


「かっけぇ。」

「やっぱ魔法っていいなぁ……。」


しえるは呆然としていた。


「……できた。」


小さくそう呟く。


透は笑った。


「なぁ。」


「俺たちとパーティ組まない?」


俺は思わず苦笑する。


——また一人、透に振り回される仲間が増えそうだった。


そして、この時の俺は、まさか彼女の魔法に何度も助けられることになるなんて、思ってもいなかった。


ブックマーク。いいねありがとうございます。

とても嬉しいのでぜひいいなぁーと思っていただけたらお願いします。

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