第八話 憧れの魔法スキルを手に入れたい件。
レッツ魔導書探索!
早朝。
ピンポーン
「俺、今日から魔法使いになるんだ!!!」
朝っぱらからインターホン越しに意味不明なことを叫ぶ男がいる。
「へい、へい」
どうせ透だ。
昨日準備しておいた道具を持ち、俺は玄関へ向かった。
◇◇
——昨日の帰り道
ダンジョン作戦会議は、透の一言から始まった。
「さて明日のダンジョンは——」
透は、鼻と髭つきのメガネをかけ、襟元を正す。
「いつ準備したんだよ。」
いつも通り呆れる俺。
どうやら透は、掲示板で情報を集めてくれていたらしい。さすがの情報通だ。
狙うはレアモンスターのドロップ。
それが無理なら宝箱だ。
今回のダンジョンでは、前回のスキルもさらに活用してみたいらしい。
「——ということで目標は、魔導書とスキルの応用ということに決まりました。」
「皆様盛大な拍手を」
「いっとくけど誰もいないからな。」
……というわけで、今日の目標が決まった。
◇◇
東区のダンジョン前。
早朝にもかかわらず、前回同様ギルド職員が黒い巨大な扉の横にいた。
「本日付で魔法使いになります。透です!」
「そして、永遠に語り継がれることだろう。」
「ストップ」
「はい。」
ギルド職員は、困った顔をしながら前回同様案内してくれた。
ギギギィ…。
巨大な扉を開けて中に入る。
前回と変わらない黒くゴツゴツした岩肌。
壁に埋め込まれた鉱石が、ぼんやりと辺りを照らしている。
今回は、用意していたランタンをつけ、探し漏れがないようにしていく。
「さて、いきましょうぞ!!」
「そのキャラ、いつまで続くんだよ」
「なぁ、浩介」
「なんだよ。」
「見つけようぜ!宝箱!」
透は、やたら爽やかな笑顔で言う。
しばらく歩いてみる。
すると、前回通った分岐に差し掛かった。
「左じゃね?」
「逆だろ」
「あ、こっちか」
「うん、そっちだ。」
罠に警戒しながら、さらに通路を進む。
…。
カチッ
「あっ…。」
何かが作動した。
反射的に走り出す。
「「うおおおおおおおお!」」
「うぉぉぉ……?」
「うぉ?」
さっきまでいたところを見返す。
ドスンッ!!!!…。
俺と透は、目を合わせる。
「落ちたぁぁぁ!」
「確かに落ちてるけど!」
「危なかったな。」
先ほどまで俺たちがいたところは、大きな岩によって塞がれていた。
「う…うぅ…。浩介ぇぇ!!」
「死んでねぇよ!!」
気を取り直して
正面を再度確認する。
右へ通じる通路があるようだ。
進むしかない。
「透こっち行ってみようぜ。」
右の通路へ入ると、床一面がスライムで埋め尽くされていた。
「うわ、気持ち悪っ!」
「透、踏むなよ!」
「もう踏んでる!」
スライムを避けながら進む。
「滑る!滑る!」
「転ぶなよ!」
ズルッ
「うわぁぁぁ!」
「だから言っただろ!」
ようやく抜けたと思えば――
俺たちは、また床のスイッチを踏んでしまった。
「「あっ」」
…。
「……何も起きな——」
ザザザザッ
足元から蛇が何匹も這い出してくる。
「ぎゃあああ!」
「蛇だけは無理ぃ!」
「どうなってるんだ、このダンジョン!」
「罠しかねぇーじゃん!」
◇◇
ふぅー……。
どれくらい歩いただろうか。
「浩介、ランタン暗くなってきたな。」
「もう半分しかないからな。」
「思ったより広いんだな。このダンジョン。」
「そうだな。」
奥からゴブリンの鳴き声が聞こえてくる。
「ここだな。」
「掲示板の情報、正しかったみてぇだ。」
「さて、はじめるか…。」
「おうよ!」
「身体強化。」
俺と透の足元が砕ける。
モンスターのいる広間へ続く通路を、一気に駆け抜ける。
ビュンッ
「右方向」
俺が指示を出す。
「おうけぃ」
すかさずバリアブルアタックで剣を盾の形にする。
キンッカキンッ
トラップの弓を弾く。
「正面飛ぶぞ」
「へい」
落とし穴をかわしていく。
着地したと同時に上から槍が降ってくる。
右と左に分かれて避ける。
「「あっぶねぇーーー!!」」
最初なら慌てていた罠も、今では自然と避けられるようになっていた。
「すぅーー」
「はぁーーーーーーー。」
呼吸を整える。
狙い通り6体ゴブリンが見える。
「透!」
「おっけぇーーー!!」
一気に距離を詰める。
「バリアブルアタァァァック!!」
剣が巨大なハンマーへと変形する。
「うおおおおおお!!」
ドゴォンッ!!
振り抜いた一撃がゴブリンを壁まで吹き飛ばす。
壁に叩きつけられたゴブリンは、崩れ落ちた。
しかし、透の攻撃は止まらない。
そのまま身体を回転させ、遠心力を乗せた一撃が二体目を襲う。
「まだまだぁ!」
体勢を崩したゴブリンへ、俺が追撃を叩き込む。
数十秒後。
六体いたゴブリンは、すべて床に倒れていた。
広間に立っていたのは、俺たちだけだった。
「魔法使いじゃなくて、ハンマー使いだな。」
「ハンマーも魔法だから!」
「そんなわけあるかっ!」
俺のツッコミも健在である。
「……なぁ、浩介。」
「なんだ?」
「なんか、見られてる気がしねぇか?」
「……。」
振り返る。
誰もいない。
だが、胸騒ぎだけが残った。
広間の奥で、何かが鈍く光っている。
「……宝箱だ。」
ゴブリン集団を狙えば宝箱がある――
掲示板の情報は本当だった。
「隊長!! 発見いたしました!!!!」
「よくやったぞ!!」
待ちに待った宝箱だ。
俺たちは顔を見合わせる。
「開けるぞ?」
「ちょっと待て。」
「罠じゃないよな?」
周囲を確認する。
……静かだ。
「……大丈夫そうだ。」
ギィィィィィ……。
「……。」
「なんだこれ?」
「魔導書……じゃないよな?」
中に入っていたのは、一冊の古びた本。
そして、その横には黒い玉。
まるでこちらを見ているかのように、不気味な光を放っていた。
「……これ、持って帰るか。」
「いや、絶対ヤバいやつだろ。」
その時だった。
ふと奥へ視線を向ける。
「……なんだ?」
宝箱のさらに奥。
下へ続く石階段があった。
その横には、古びたプレート。
《第二階層》
「……。」
俺と透は言葉を失う。
「まだ……下があるのか。」
その瞬間。
ゾクッ――。
まただ。
誰かに見られている。
「……今日は帰ろう。」
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