第十話 レッドゲート
記念すべき第十話目でございます。
ギルドの周辺は、二週間前とは別世界だった。
コンビニの隣には「冒険者専門装備店」ができ、路上では魔石の買い取りを呼びかける業者が声を張り上げている。
「ポーション高価買取!」
「南区ダンジョン攻略パーティ募集!」
たった二週間。
世界は、想像以上の速さで変わっていた____
◇◇
そうして俺たちは、新しいパーティメンバーを加え、
カフェに集まっていた。
「おぉ……」
思わず声が漏れた。
木目調のテーブル。ガラス越しに差し込む柔らかな陽射し。コーヒーの香ばしい匂いが店内に漂っている。
「なんだこの空間……」
モブの俺にとって、人生初のおしゃれカフェだった。
正面に座るしえる
「あ、あの……改めまして。森川しえるです……よろしくお願いします。」
「そんな緊張すんなって!」
「透だ! 未来の英雄!」
「俺は佐川浩介。」
「は、はい……っ」
しえるは膝の上でぎゅっと両手を握りしめ、小さく頭を下げた。
挨拶もほどほどにしえるのステータス見せてもらう。
レベル16
体力 92
攻撃 85
防御 55
魔力125
役職 魔法使い
スキル
火球、ストーンウォール、インビジブル
基本的に冒険者の間では、ステータスは、信頼してる人にしか見せないのが常識となっているらしい。
俺たちは、信用にたるってことか…。
だが、とんでもない数値である。
このステータスなら、ギルドでもBランクかCランク扱いされてもおかしくない
世界が変わって2週間
ほぼ毎日レベルを上げていないとこんな数値には、ならない。
以前入っていたパーティは、攻略ガチ勢だったらしく、パーティーの役には立てなかったが、分配の経験値でレベルは、上がったらしい。
謙遜しすぎだ。
「すごいな」
数値に思わず感心する。
以前のパーティでは、戦うたびに怯えてしまって、『弱虫』なんて呼ばれていたらしい。
実際モンスターの前でビビるのもわかる。
でも、この数値を見る限り才能だけなら俺たちよりずっと上だ。
いけそうだな…。
しえるがいるなら、いっそのこと新しいダンジョンにいくのもありだな。
さっきギルドでレベル上げにおすすめのダンジョンありますか?と聞いておいて正解だった。
ギルド内にて____
「南区のレッドゲートがおすすめです。
他のダンジョンに比べて道も簡単ですし、
中ボス部屋は、三つに分かれています。」
「戦闘に入る前であれば、ボス部屋の前に
リスポーンできるのでいいですよ。」
「そういえば、銃って効くんですか?」
「スライム程度なら倒せます。」
「Dランク以上になると魔力障壁があるため、ほとんど効果はありません。」
「えぇ……。」
「じゃあ自衛隊とかどうすんだよ。」
「現在は魔法やスキルを持つ探索者との共同作戦が基本となっています。」
___とのことだった。
2週間ほど経過したからか、東西南北のダンジョンは、扉の色ごとに名称が変わったらしい。
掲示板で「経験値効率がいい」「一本道で迷わない」「罠が少ない」ともっぱらの噂である。
俺たちは、南区のダンジョン 通称レッドゲートへ行くことに決めた。
◇◇
「到着ー!!」
透は、いつもと変わらず元気だ。
赤い巨大な扉の前には、東区の時よりもギルド職員が多い。
ダンジョンに入る前に準備しているパーティもちらほらいる。
「あ、どうもどうも。」
「英雄になる透と言います。」
知らない人たちと握手している。
右へ、
「あ…。」
左へ、
「なんだこいつ。」
正面へ
「え!?」
感想は、三者三様である。
「何やってんだよ」
呆れながらしえるへ向き直ると
驚きのあまりしえるは、目を丸くして透を見つめていた。
そしてすぐに
「ふふっ。」
と笑う。
まぁ、いいか。
透がニヤニヤしながら帰ってくる。
先ほどまであったパーティの緊張感が消える。
「さていきますか。」
ギギギギギ……。
重々しい音を響かせながら、真紅の扉がゆっくりと開いていく。
冷たい空気が肌を撫でた。
◇◇
数メートル先。
ボロボロの鎧をまとったボーンが、剣を肩に担いで立っていた。
「ひっ」としえるが悲鳴をあげる。
ボーンは、こちらを攻撃してくる。
ギィンッ!!
剣と剣がぶつかり、火花が散る。
「身体強化!」
ブォンッ!!
透の身体から淡い光が溢れた。
ドンッ!!
地面が砕けるほどの踏み込み。
「おおおぉぉっ!」
ガシャァァァン!!
ボーンは骨を撒き散らし、その場で崩れ落ちた。
なかなか。つよかったな。
奥に見えているパーティもポーンを倒していた。
流石に慣れている。瞬殺である。
このまま進めそうだ。
2週間。
これだけあれば、ボス部屋のルートなんて大抵広まるのだ。
◇◇
ボス部屋の前に到着する。
レッドゲートの中ボスは、
三つ。
力のボーンキング
守りのジャイアントゴーレム
素早さのグレートウルフ
の三体だ。
今回の作戦は、簡単だ。
まずは、ボス部屋に入り敵の情報を探る。
アタックされる前であれば、リスポーンできるので、無理せず帰る。
たったそれだけだ。
扉を開け、中へ入る。
一度扉を閉めたら勝つまで開けることは、許されない。
ガコン。
背後で扉が閉まる。
静寂。
……ボンッ。
奥の壁に一本、蝋燭の火が灯る。
ボボッ。
ボボボボッ。
左右へ、まるで何かを歓迎するように炎が順番に灯っていく。
やがて部屋全体が赤黒い光に包まれた。
その中央。
巨大な玉座に、一体の骸骨が腰掛けている。
ボーンキングのご対面だ。
◇
その中央。
巨大な玉座に、一体の骸骨が腰掛けていた。
巨大な骸骨がゆっくり立ち上がる。
ゴゴ……。
巨大な骨が軋む。
ズシン。
ズシン。
一歩踏み出すたび、大広間が揺れた。
「……」
「……」
「透。」
「なんだ?」
「あれ勝てる?」
「……無料。」
「無料?」
「無料で命捨てられる。」
「「撤退ーーー!!」」
俺たちは、即座にリスポーンで入口へ帰る。
ジャイアントゴーレム
あれは透の攻撃でも通らなさそうだ。
「無理じゃね?」
「うん、無理」
「「撤退!!」」
グレートウルフ
「狼ならいけるんじゃない?」
「サイズはデカいけどな」
扉を開ける。
次の瞬間。
ヒュンッ。
視界から何かが消えた。
「え──」
ドゴォッ!!
「ぐはぁっ!!」
透の身体が吹き飛び、壁へ激突する。
ドガァン!!
石壁が砕け、砂煙が舞った。
一瞬で透が吹き飛んだ.…。
「は?」
気づけば目の前にウルフがいる。
「ぐっ…。浩介!! リスポーン!!」
カチッ。
メニューを開く。
【戦闘中はリスポーンできません】
「……え?」
もう一度押す。
【戦闘中はリスポーンできません】
カツン。
グレートウルフの爪が石畳を鳴らす。
一歩。
また一歩。
真紅の瞳が、俺たちを射抜く。
「……やばい。」
逃げ場は、なかった。
ワクワク11話目




