第十一話 強さの、その先へ
11話!!!いきましょう!!
しえるは、恐怖のあまりその場で硬直していた。
顔は青ざめ、杖を持つ手が小刻みに震えている。
まずい。このままじゃ、全滅する。
「しえる!! インビジブルだ!!」
俺は喉が裂けそうなほど叫んだ。
「は、はい!」
震える声と同時に、しえるの杖が淡く光る。
「インビジブル!!」
視界が歪む。
次の瞬間、ウルフの真紅の瞳から、俺たちの姿が消えた。
――だが、安心できるスキルじゃない。
インビジブルの効果は十秒。相手の認識から外れるだけで、攻撃そのものを避けられるわけではない。
「透! 俺に身体強化!」
「おう!」
体が青い光を纏う。
ドンッ。
地面がひび割れた。
俺は倒れた透の肩を担ぎ、一気に横へ駆ける。しえるも息を切らしながら後を追った。
背後で、ウルフが地面を薙いだ。
ズドォォンッ!!
さっきまで俺たちがいた場所の地面が砕け散る。
背筋が凍った。
一瞬遅れていたら、死んでいた。
「透! 大丈夫か!」
ポーションを投げ渡す。
透は震える手で栓を抜き、一気に飲み干した。
「な、なんとか……」
ギルドでポーションを買っておいて、本当に良かった。
俺は息を整えながら、必死に頭を回す。
勝てる方法を探せ。
考えろ。
考えろ。
「いけるか?」
「……もちろんだ」
透は口元の血を拭い、立ち上がる。
だが、無理をしているのは明らかだった。
残り時間は――。
「……二、……一」
「効果切れるぞ!!」
姿が戻る。
その瞬間。
ヴォォォォォォォオオオオオッ!!!
鼓膜を殴るような咆哮。
空気が震え、肺が押し潰される。
思わず耳を塞ぐ。
ウルフは、一直線に透へ跳んだ。
速い。
見えた時には、もう目の前だった。
「バリアブルアタック!!」
青い光が盾の形を成す。
ガキィィンッ!!
凄まじい衝撃音。
透の足が地面を削り、数メートル後方へ吹き飛ばされる。
「ぐっ……!」
止めただけだ。
防いだわけじゃない。
ウルフは着地した瞬間、次の動きへ移っていた。
速すぎる。
「まだだ!」
透が地面を蹴る。
盾が剣へと姿を変える。
「おりゃああああっ!!」
渾身の一撃。
ガキンッ。
金属を叩いたような音が響く。
斬れない。
ウルフの黒い体毛には、傷一つついていなかった。
「くっそ……!」
透が後方へ飛び退く。
その隙に俺は叫ぶ。
「しえる! 火球!!」
「ファイアーボール!!」
ゴォォォッ!!
灼熱の炎が一直線に走る。
――シュン。
避けた。
いや、見てから避けたんじゃない。
撃つ前から、そこに来ると分かっていたように。
炎は虚しく岩壁を焼き、爆音が洞窟に響く。
身体強化した透の攻撃が通らない。
しえるの魔法も当たらない。
速度、攻撃力、防御力。
その全てが、俺たちを遥かに上回っていた。
勝てない。
そんな言葉が頭をよぎる。
だが、その瞬間。
ウルフはゆっくりと首を傾げた。
まるで――獲物が諦める瞬間を、楽しんでいるかのように。
背中を、冷たい汗が流れる。
俺たちは今、狩る側じゃない。
狩られる側だ。
そして、理解してしまった。
このままじゃ、全員死ぬ。
どうする。
どうすれば、この化け物に勝てる――。
だめだ.…。落ち着け.…。落ち着くんだ。
透は、ウルフからの攻撃をかろうじて止めている。
考えられるだけ適切な手段を。
最適解を.……。
「しえる!ウルフ後方、ストーンウォール!」
「ストーンウォール!!」
ゴゴゴゴゴッ!!
地面が盛り上がる。
石壁がウルフの背後を塞いだ。
「バリアブルアタック!」
すかさず、剣をハンマーにし、ウルフの頭上から攻撃をする。
ドゴォォォンッ!!
巨体がわずかによろめく。
「止まった……!」
ウルフは、雄叫びあげる。
ウォォォォォォォァ!!!!!!!!
透が吹き飛ぶ。
俺は、全力でダッシュし、受け止めに行く。。
ズザザザザッ.…。
「ぐっ.…。わりぃ.…。」
「大丈夫だ。問題ない。」
またポーションを渡す。
急いでそれを飲み。透は、体勢を立て直す。
「身体強化ぁぁぁあ!!!」
透は、叫ぶ。
鼻血がぽたりと石畳に落ちる。
腕が震える。
それでも透は笑った。
「まだ動ける。」
地面を踏み切り、ウルフへ攻撃をする。
「ウォォォァ!!!!!!!」
ウルフは、回転し、尻尾を使いその攻撃をいなす。
ブォォォォァアン!!!!
透は、耐え抜く。、
「うぉぉぉぉ!!!!!」
ウルフの蓮撃がくる。
ガキンッキンキンキン!!!!
ふらふらになりながらも、ウルフの攻撃をパリィし続ける。
「しえる!間に!ストーンウォール!!!」
「ストーンウォール!!!」
ゴゴゴゴゴ!!!
ボゴォォォォンッ
一発で破壊される。
このままだと勝てないと俺は、悟る。
考えろ………。
どうすれば勝てると.……。
浩介の頭に、ふと一つの考えが浮かぶ。
「……待てよ。」
バリアブルアタック。
"変化する攻撃"。
形だけなのか?
それとも——。
「まさか……」
「透!」
「バリアブルアタックだ!」
「だから効かねぇって!」
「わかってる!でもバリアブルアタックだ!」
「その剣に……シエルの魔法を当てろ!」
透も理解する。
「なるほど……!」
「魔法を……武器に?」
「しえる狙えるか?透の剣を。」
できるか、できないか。
……いや。
やらなければ、俺たちは――。
どうなるかわからないでも……。
「わかりました。」
しえるは、
深呼吸をする。
手が震える。
それでも杖を強く握りしめる。
「ファイアーボール!!」
ゴォォォォッ!!
炎が一直線に走る。
「頼む!!」
軌道がずれる……。
「まずいっ!!」
透は剣をブーメランへ変形させる。
ブォンッ!!
「受け取ったぁぁぁっ!!」
ふらふらになりながらも透は、言う。
炎がブーメランへ触れる。
パァンッ!!
火花が散る。
みんなが同時に叫ぶ。
「「「エンチャントォォォッ!!!」」」
ボォォォォォッ!!
炎が剣へ吸い込まれていく。
炎が剣にまとわりつく。
「……できた。」
透が息を呑む。
そして完成した。
エンチャント・バリアブルアタック
それは、奇跡の炎。
その炎は、ウルフを狙う。
ウルフは、咄嗟に後ろに下がろうとする。
「しえる!かべだ!!!」
「ストーンウォール!!!!!!!」
ウルフは、もう逃げられない。
ゴォォォォォッ!!
炎が洞窟を埋め尽くす。
熱風が頬を叩く。
誰も声を出せない。
焼け焦げた匂いだけが漂う。
やがて炎が晴れていく。
誰も息をしなかった。
そこにいたのは――。
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