第四話 世界覚醒の初日 敵がラスボス級に強そうな件
三章とは、変わり少しキャラの特徴を出してみました。
第一章の浩介が帰るシーンへと繋がります。
世界覚醒当日
テレビから緊急ニュースが流れる。
『政府は本日、全国に冒険者ギルドを設立する方針を固めました。』
『現在、各自治体との連携を進めています。』
『なお、東京都内で災害対策拠点として活動していた「株式会社 天宮ホールディングス 災害対策本部」については、これまでの準備と実績が評価され、政府公認の民間冒険者ギルド第一号として認定されました。』
画面には見慣れた建物が映し出される。
入口に掲げられた看板。
天宮ギルド
玲は静かにテレビを見つめた。
「……始まったな。」
世界中で突然発生した異変を受け、各国政府は急遽、冒険者ギルドの設立を決定していた。
日本政府も例外ではない。
しかし、日本にはすでに一つだけ準備を終えていた組織が存在した。
それが――
天宮ホールディングス災害対策本部。
世界覚醒の二週間前から備えを進めていたその組織は、政府との事前連携も評価され、民間ギルド第一号として正式に認可される。
こうして、天宮ギルドは日本初の政府公認民間冒険者ギルドとなった。
◇◇◇
天宮ギルドの前には、朝早くから長蛇の列ができていた。
「社長、すごい人数ですね……。」
受付を担当しているゆあが、列の最後尾を見て目を丸くする。
「思った以上だな。」
玲が苦笑する。
「最後尾はこちらでーす!」
ゆあは元気よくプラカードを掲げる。
その瞬間。
パキッ。
「あっ。」
持ち手が真っ二つに折れた。
「えぇぇっ!?」
「朝作ったばかりなのに!」
慌ててテープで補修し始めるゆあを見て、豪がため息をつく。
「……相変わらずだな。」
「ち、違います! これは初期不良です!」
「絶対違う。」
思わず玲も笑ってしまう。
「まぁ、朝から笑わせてもらった。」
「社長までぇ……。」
緊張していた空気が少しだけ和らいだ。
◇◇◇
玲は列を眺めながら静かに頷いた。
やはり、人は自分の力を知りたがる。
『鑑定の水晶』には、まだ謎が多い。
だが測定結果を見る限り、能力だけでなく適性や役割まで判定しているようだった。
朝一番で、ゆあたち三人も改めて測定を済ませている。
白雪ゆあ――ランクC
役職:結界士
スキル:回復
一堂みのる――ランクC
役職:商人
金剛豪――ランクB
役職:戦士
スキル:タンク
役職に応じて基礎能力も上昇している。
まだ分からないことだらけだが、この世界には確かな法則が存在していた。
その時だった。
「社長!」
職員が慌ただしく駆け寄ってくる。
「政府公認ギルドになった件と、『勇者』について取材が来ています!」
「分かった。今行く。」
夢のことは伏せておこう。
話せば混乱を招くだけだ。
玲は取材を終えると、ふと周囲へ目を向けた。
高校生くらいの少年少女たちも列へ並んでいる。
「高校生まで覚醒しているのか……」
小さく呟く。
世界規模の異変だ。
年齢も職業も関係ないらしい。
しかし、それより優先すべきことがある。
「今日は東区のダンジョンを確認する。」
「他の職員は明日、西区の調査へ向かってくれ。」
玲は三人へ視線を向けた。
「準備してくれ。」
「了解です。」
◇◇◇
夕方。
玲たちは東区へ現れたダンジョンへ到着していた。
他の職員たちには、明日の朝から西区の方へ向かって欲しいとお願いをしている。
勇者の力によるものなのか、パーティ全員が空を飛ぶことができる。
上空から確認すると、巨大な黒い扉は固く閉ざされたままだった。
「もしダンジョンが開いたら、俺が前に出る。」
「豪、お前は撤退の指揮。」
「みのるは政府との連絡。」
「ゆあは負傷者の保護だ。」
「全員、生きて帰ることだけ考えろ。」
「了解!」
…。ダンジョンのドアは、ピクリとも動かない。
「まだ出現したばかりだからでしょうか。」
みのるが辺りを見回す。
「ダンジョンは閉じたままですね。」
それなのに。
朝からギルドには、各地でモンスターが出現したという報告が相次いでいた。
「ダンジョンが閉じたままなら……奴らは一体どこから現れている?」
玲がそう呟いた、その瞬間だった。
バチッ――。
空気が弾ける音が響く。
玲は反射的に空を見上げた。
「……なんだ?」
空間が歪んでいた。
黒い球体。
直径三十センチほどのそれは、生き物のように脈動しながら、ゆっくりと膨れ上がっていく。
バチッ。
バチバチッ。
空気そのものが悲鳴を上げているようだった。
玲の表情が変わる。
「全員下がれ!」
「警戒態勢!」
数秒後。
黒い球体は、トラックすら飲み込めそうな巨大な穴へ変わっていた。
ズズズズズ……
穴の奥。
そこから、"何か"がこちらを見ていた。
巨大な黄金色の瞳。
「……嘘だろ。」
次の瞬間。
ゴォォォォォッ!!
巨大な前脚が、穴の外へ踏み出した。
ドンッ――。
その一歩だけで、大地が揺れる。
続いて現れる首。
巨大な翼。
鋼のような尾。
巨体が完全に姿を現した瞬間――
周囲から色が失われたような錯覚を覚えた。
息をすることすら忘れる。
「……ドラゴン。」
誰かが震える声で呟く。
咄嗟に玲が命令を出す。
「結界!」
「む、無理です……。」
震える手を無理やり前へ出す。
「でも……!」
ゆあが大きく手を広げる。
バキィィィン!!
透明な結界に、巨大な爪が触れた。
次の瞬間。
まるでガラスのように砕け散る。
「そんな……。」
ゆあの顔から血の気が引いた。
「私の結界が……一撃で……。」
玲は剣を抜く。
「十分だ!」
豪が前へ出る。
「……まかせろっ!」
「……俺が壁になる。」
だが、ドラゴンは玲たちを見ることなく、大きく翼を広げた。
ゴォォォォッ!!
暴風。
翼が一度羽ばたいただけで、豪とゆあの体が数メートル吹き飛ばされる。
「ぐっ!」
「きゃあっ!」
アスファルトに叩きつけられながらも、豪は歯を食いしばった。
「……なんて化け物だ。」
ゴォォォォォッ!!
轟音と共に、街へ向かって飛び去る。
「追うぞ! 街へ入らせるな!」
数十秒後。
街の上空。
巨大な翼が空を覆い隠す。
漆黒の鱗をまとった超高ランクモンスター。
ドラゴン。
「西側上空! ドラゴン接近!!」
無線から悲鳴のような声が飛ぶ。
玲は誰よりも早く現場へ到着し、剣を抜いた。
無線から声が聞こえる。
「一般人を避難させろ!」
「結界班、展開はまだか!」
「だ、駄目です!」
「まだ一人、避難できていません!」
玲は振り返る。
そこには。
制服姿の高校生がいた。
片手にはコンビニ袋。
スマホを見ながら、何も知らずに歩いている。
ドラゴンに背を向けたまま。
「嘘だろ……気付いてないのか!」
ドラゴンは静かに高度を下げる。
次の瞬間。
視界から消えた。
「速いッ!?」
巨大な爪が、高校生へ伸びる。
「間に合えぇぇぇッ!!」
玲は空間を蹴った。
だが。
遠い。
届かない。
――その瞬間だった。
ドラゴンが動きを止めた。
黄金の瞳が、高校生をじっと見つめる。
「……な、なぜだ。」
怒りではない。
敵意でもない。
その瞳には、どこか懐かしさと、今にも泣き出しそうな悲しみが宿っていた。
数秒後。
ドラゴンは静かに翼を翻し、そのまま夜空へ飛び去っていく。
玲は呆然と立ち尽くした。
「……攻撃を、やめた?」
我に返り、高校生へ視線を向ける。
そこには相変わらず、コンビニ袋をぶら下げ、スマホを眺めながら歩く少年の姿があった。
「……助かった、のか。」
玲は剣を握る手に力を込める。
胸の奥に、言いようのない違和感だけが残っていた。
「ドラゴンは……なぜ、あいつを見逃した?」
その直後――
ガガッ……!
無線が激しく鳴った。
『こちら第一班!』
『東区ダンジョン!』
『オークを確認!』
『繰り返す!』
『オークを確認!!』
玲は静かに目を閉じる。
「……始まったか。」
見てくださりありがとうございます!
これで第一章、二章の謎が少し解けたと思います。
まだまだ、これから物語が変わっていきますのでぜひブックマーク、いいね等お願い致します。




