表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
3/12

第三話 『勇者』天宮 玲が誕生しちゃった件

地球がクエスト化した日いち早くなぜ『勇者』が動けたのか?わかる回です。

真面目回なので少し退屈かもです。

世界が覚醒する一ヶ月前。


「――一ヶ月後、この世界は変わる。」


夢の中だった。


辺りは一面真っ白。


目の前には、深くフードを被った老人が立っている。


その姿は怪しいはずなのに、不思議と恐怖はなかった。


むしろ、どこか懐かしい。


初めて会った気がしない。


「人類は力を手にする。」


「しかし、その力に溺れれば世界は再び滅ぶ。」


「君には人類を導く先導者――『勇者』になってもらいたい。」


「……どうして私なんですか?」


老人は少しだけ笑った。


「君だけが、人を信じられるからだ。」


玲は一つ息を飲む。


「敵は?」


老人はわずかな沈黙のあと、静かに答えた。


「……魔王だ。」


その言葉を最後に、景色が白く溶けていった。


◇◇


「……夢か。」


天宮玲はゆっくりと目を開ける。


妙に現実味のある夢だった。


あの老人の顔は思い出せない。


それなのに、胸の奥だけが妙に温かい。


まるで昔から知っている人のような、不思議な感覚だった。


「……変な夢だな。」


そう呟いた瞬間だった。


自然と口が動く。


「――ステータス、オープン。」


言った本人が一番驚いた。


なぜ、この言葉を知っている?


考えるより先に、目の前へ半透明のウィンドウが現れる。


【ステータス】


体力:999


攻撃:999


防御:999


魔力:999


スキル:勇者 アイテムボックス


「……は?」


思わず声が漏れる。


全部、999。


ゲームならチートだ。


いや、それ以前に――。


「ステータスって何だ?」


夢のことといい、この画面といい、何も理解できない。


だが、一つだけ頭に焼き付いて離れない言葉がある。


「一人では世界は守れない。」


「力を持つ者を集めろ。」


「……仲間を集めろってことか。」


玲は窓の外を見つめ、小さく息を吐いた。


「ギルド……か。」


玲は改めてステータスを開き、表示された『アイテムボックス』という項目に意識を向けた。


「……開け。」


次の瞬間、目の前に小さなウィンドウが現れる。


中には一本の剣と、一つの水晶が収められていた。


水晶には『鑑定の水晶』と表示されている。


どうやら触れた相手の能力を六段階で判定できるらしい。


◇◇


「一ヶ月」


その言葉を思い出しながら、玲はカレンダーへ目を向け、小さく息を吐いた。


もし夢の内容が本当なら、残された時間はあまりにも短い。


スマートフォンを取り出し、信頼できる社員たちへ一斉にメッセージを送る。


『明日、大事な話があります。全員、時間を空けてもらえますか。』


ほどなくして返信が届く。


『なんですか?そんな改まって。』


『了解です。』


『社長がそこまで言うなら行きます。』


◇◇


翌日。


玲の自宅リビングには、白雪ゆあ、一堂みのる、金剛豪の三人が集まっていた。


四人はテーブルを囲み、向かい合って座る。


「今日は、大事な話がある。」


玲は夢で見た老人のこと、一ヶ月後に世界が変わること、自分に与えられた『勇者』という力、そして鑑定の水晶について包み隠さず話した。


話が終わると、部屋は静まり返る。


「……夢の話ですか?」


「社長、熱でもあるんじゃないですか?」


「さすがに信じろと言われても……。」


無理もない反応だった。


玲は静かに息を吸う。


「――ステータス、オープン。」


ピロン。


電子音と共に半透明のウィンドウが現れた。


【ステータス】


体力:999


攻撃:999


防御:999


魔力:999


スキル:勇者 アイテムボックス


「……え?」


ゆあが思わず立ち上がる。


「これ……ホログラムじゃありませんよね?」


豪が恐る恐る手を伸ばす。


「触れない……。」


みのるも目を見開く。


「どうやって浮いてるんですか、この画面……。」


「俺にも見えてる。」


豪の声が震えた。


「じゃあ……夢の話じゃないってことですか。」


玲は静かに頷く。


「俺にも全部は分からない。ただ、一ヶ月後に世界が変わる。それだけは確信している。」


そう言うと、玲はアイテムボックスから鑑定の水晶を取り出した。


「試してみよう。」


最初に豪が水晶へ手を置く。


淡い光が灯る。


【適性:E】


「俺、弱っ。」


思わず豪が苦笑する。


続いてゆあ。


【適性:F】


「最低評価じゃないですか……。」


最後にみのる。


【適性:E】


「普通ですね。」


玲も試してみる。


眩い光とともに文字が浮かぶ。


【勇者】


三人は思わず息を飲んだ。


「……本物なんですね。」


豪は腕を組み、深く考え込む。


「にわかには信じ難いですが……社長がこんな冗談を言う人じゃないのは知っています。」


みのるも頷いた。


「全部を信じるわけじゃありません。でも、本当だったら準備しない方が危険です。」


「問題は、この組織ですね。」


ゆあが手帳を開く。


「何を目指すんですか?」


玲は老人の言葉を思い出す。


『一人では世界は守れない。』


『力を持つ者を集めろ。』


「人を守る拠点を作る。」


「戦うためだけじゃない。」


「情報を集め、物資を管理し、人を助ける。」


「世界が変わった時、人が集まれる場所だ。」


三人は顔を見合わせ、小さく頷いた。


「まずは拠点ですね。」


豪が口を開く。


「使っていないビルがあります。」


「そこを本部にしましょう。」


「食料や医薬品は私が管理します。」


ゆあは素早くメモを書き始める。


「業務用無線も人数分手配します。」


「携帯電話が使えなくなる可能性も考えておきます。」


みのるも静かに口を開く。


「物資の調達と協力会社への交渉は私が担当します。」


玲は三人を見渡した。


「当たれば人が死ぬ。」


「外れれば笑い話だ。」


「だったら俺は、笑い話になる方を選びたい。」


その一言で、三人の表情が変わる。


「……分かりました。」


「社長を信じます。」


「やりましょう。」


玲は静かに笑う。


「ありがとう。」


「この組織の名前は――天宮ギルドにしよう。」


◇◇


二週間後。


空きビルは見違えるほど変わっていた。


入口には新しい看板。


『天宮ギルド』


倉庫には非常食や飲料水、医薬品が並び、廊下には業務用無線が整然と充電されている。


防犯設備も設置され、ゆあは東京全域の地図へ避難経路を書き込んでいた。


豪は建物の最終点検を終え、みのるは最後の物資搬入を確認している。


玲はその様子を眺め、小さく呟いた。


「あと二週間……。」


本当に世界は変わるのか。


その答えは、もうすぐ分かる。


その時、みのるが資料を持ってやって来た。


「社長。」


「もし本当に世界が変わるなら、政府にも連絡だけは入れておきませんか。」


「信じてもらえると思うか?」


「思いません。」


みのるは苦笑する。


「ですが、記録は残せます。」


「世界が変わった後、この拠点を民間ギルドとして認めてもらえるよう、申請だけはしておきましょう。」


玲は静かに頷いた。


「頼む。」


数日後。


『株式会社 天宮ホールディングス 災害対策本部』


その申請書は、政府へ正式に提出された。


この時はまだ誰も知らない。


その一枚の書類が、世界初の政府公認ギルド誕生へ繋がることを。

次回。地球覚醒当日。なぜ『勇者』がインタビューを受けていたのか。勇者目線のドラゴンのお話とギルドがオーク出現をなぜ知っていたのかの話につながります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ