第三十話 守る力
ぐっ、ここで第三章折り返し…。
のっぺりとした物語が続くなぁ...
四章まで耐えぬくんだ!!!
レッドゲートで人を救った後のこと。
レッドゲート50階層。
人影が動いている。
ヒタ...ヒタ....ヒタ....ヒタ
ゆっくりと歩く。
「.....。」
ブォーン
青い光を纏う。
地面がめり込む。
ズシャッ。
空間が震える。
「.....」
グシャ…。
グシャ....
ザザザザ....
ひきづる音。
引きずられていた巨大な魔物の腕が、
床を削っていた。
ドゴンッ!!
魔物を壁へ叩きつける。
骨が砕けるような音が響いた。
そして、それは跡形もなく砕け散った。
◇◇
話は、浩介がグリーンゲート攻略中に戻る。
「浩介さん...大丈夫かな....」
そんなことを呟きながら、しえるは、本を読んでいる。
ペラッ....ペラッ
「スキル研究大全」
見るからに胡散臭い本である。
「もう、大切な人を失わないように。」
そう願いしえるは、回復魔法を探している。
「ふぁ....」
浩介と連絡は取り合っているものの、
最近は会っていない。
彼は強くなるために鍛錬しているそうだ。
少しだけ外に出よう。
そう思い身支度を済ませる。
肩の下まであった髪は、顎下まで揃えられている。
「魔導書探そうかな。」
そして家を後にした。
◇◇
薄暗い少路地。
人気のない道にひっそりとお店がある。
路地裏の奥に、煤けた看板が揺れていた。
「黒梟書店」
窓には分厚い魔導書が並ぶ。
カラーン
扉を開けると古い紙とインクの匂いが鼻をくすぐる。
棚には埃が積もっているのに、本だけは妙に綺麗だった。
「いらっしゃいませ……」
姿は見えないがどこからか声が聞こえる。
一冊手に取る。
『初級火属性魔導書 580,000円』
「…………」
しえるは静かに本を棚へ戻した。
「ご、五十八万……!?
無理です……」
「高いだろ。」
???
人の姿は、見当たらない。
いるのは、1匹の猫と1羽の梟。
そして口を開ける。
「なかなか手に入りづらくてね。」
「ふ、梟がしゃべったぁぁあ!?」
しえるが驚きのあまり固まる。
「そんなにびっくりしなさんな。」
「え....あ...す、すいません」
平謝りをする。
「そんなに畏まらなくていいんだ。」
「少し待って。」
パチン。
煙が立ち込める。
その中から見えたのは、長身の男性だった。
「あ、え!?えええええ!?」
「あぁごめんごめん。」
「これはね。僕のスキルなんだ。」
「そういえば何か探していたね。」
「魔導書かい?」
「は、はい。そうなんです。」
「何を探してる?」
「ヒールです。」
「どうして?」
「守りたい人がいるんです。」
「そうか。えっーーと。」
その男性は、お店の奥へいった。
「....すこしまってな」
奥から声が聞こえる。
ガサガサ。
「あ、いってぇ。。」
「あぁ!これか!」
「あったよ。」
「ヒール」
あとは、
「これは、スロウか。」
古びた本を両手にこちらを見てくる。
「昔は見向きもされなかったんだけどね。」
店主は肩をすくめた。
「最近ポーションが高くなってから、急に価値が出てきた。」
「そうですね...」
「そうだ!取引なんてどうだい?
いらない魔導書があったら他よりもうちに譲っておくれよ。」
「え?それでいいんですか!?」
「え?いいよ。むしろこちらの方が儲かる。」
「正直、魔導書は仕入れが大変でね。」
「冒険者から買い取る方が早いんだ。」
「そ、それが嬉しいです。」
「お、じゃあ、交渉成立だね」
こんな簡単にもらっていいものなのか。
手が震える。
「え、あ。ほんとに?」
「刺されたりしませんか?...」
「刺さない刺さない。ここで客を刺したら商売あがったりだからね。」
猫を見る。
「……多分。」
「えっ。」
「冗談だ。」
「ほら、受け取りな」
その男は、少し笑いながらいった。
「あ、ありがとうございます。」
店主の表情が変わる。
「最後に一つだけ忠告だ。」
「レッドゲートにはちかづくな。」
「あ、はい」
近づく理由なんてない。
古びた『ヒール』の魔導書。
大切そうに胸へ抱き寄せる。
自然と笑みがこぼれた。
◇
家に帰る。
ようやく手に入れた。
魔導書。
これで、だれも、、、、
絶対に守る。
古びた魔導書をゆっくり開く。
一文字目を目にした瞬間――
ブワッ
淡い緑色の光が本から溢れた。
「えっ……?」
文字が紙から浮かび上がり、光の粒となってしえるの身体へ吸い込まれていく。
頭の中へ、誰かの知識が流れ込んだ。
「っ!」
鋭い痛みが頭を貫いた。
大量の知識が無理やり流れ込んでくる。
息ができない。
胸が苦しい。
「はぁ……はぁ……!」
魔導書が床へ落ちる。
数秒後。
痛みは消えていた。
自然と手が動く。
魔力が集まり、淡い緑色の光が掌に灯る。
「これが……ヒール……」
《スキル【ヒール】を習得しました》
魔力の流し方。
傷口の塞ぎ方。
命を繋ぐ魔法。
自然と右手が持ち上がる。
淡い緑色の光が掌から溢れた。
床に転がっていた本が、
ゆっくりと元へ戻っていく。
これで、これでよくやく.....
しえるは、目の前が暗くなり、ベットへ横たわった。
魔導書を胸に抱いたまま眠りにつくしえる。
◇◇
そして、現在。
レッドゲート50階層。
暗闇の中。
男はゆっくりと目を開いた。
「佐川浩介を殺せ……」
静かな声だけが、
誰もいないダンジョンに響いた。




